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(2)需要予測によるネットワーク整備効果の検証
a)需要予測の前提条件
 将来(2020年)の需要動向と鉄道整備効果を定量的に把握するための仮定として、提案路線が段階的に整備されたケースを想定し、需要予測を行う。その結果としての各地域における交通量や分担率の変化、路線整備による鉄道利用交通量の増分などについて考察を行う。
 予測ケースは以下の通りとする。
 
表 7-3-5 ケース設定内容
ケース番号 ケース内容 予測年次
現況 2000年時点における開業路線 2000
(1) 現時点で事業中もしくは事業化が決定している路線 2020
(2) (1)+ネットワーク分類A整備  
(3) (1)+ネットワーク分類A+B整備  
(4) (1)+ネットワーク分類A+B+C整備  
(5) (1)+ネットワーク分類A+B+C+D整備  
 
 なお、このケース設定はあくまで鉄道整備効果をマクロ的に確認するための作業上の理由により設定するものであって、各分類による路線の序列や整備順位を示すものでは全くない。
 
 また、提案路線として挙げられた線増路線は、ネットワーク分類Aが整備される時に同時に整備されるものとして予測する。
 
b)需要予測結果
予測結果は次の通りである。
■ 近畿圏全体での鉄道利用量を現況からの増加率で比較すると、事業中路線のみ整備した場合(路線長で約75km)は現況比93.9%(6.1%減)、提案路線を全て整備した場合(路線長で約359km)は現況比96.7%(3.3%減)となる。
■ 手段分担率を見ると、事業中路線のみでは、自動車分担率が2000年の35.3%から36.6%まで上昇し、鉄道分担率は2000年の18.3%から17.9%と減少する。しかし提案路線が全て整備されることで、鉄道分担率が18.5%まで上昇し、自動車分担率が36.4%に押さえられる。
■ ケース(1)の事業中のみ整備と比較すると、提案路線を全て整備した場合(路線長で約284km)の鉄道利用者数はケース(1)に対して103.0%と3.0%の増加が見込まれる。
 
表 7-3-6 近畿圏における将来手段別需要量の動向(代表交通手段による集計)
    現況
(2000年)
(1)
事業中のみ
(2)
A
(3)
A+B
(4)
A+B+C
(5)
A+B+C+D
交通量千人/日 鉄道 8089 7596 7680 7750 7792 7824
バス 1256 1057 1024 1000 995 984
自動車 15624 15486 15459 15439 15418 15407
徒歩等 19340 18212 18188 18161 18145 18136
手段計 44309 42351 42351 42351 42351 42351
分担率     鉄道 18.3% 17.9% 18.1% 18.3% 18.4% 18.5%
バス 2.8% 2.5% 2.4% 2.4% 2.3% 2.3%
自動車 35.3% 36.6% 36.5% 36.5% 36.4% 36.4%
徒歩等 43.6% 43.0% 42.9% 42.9% 42.8% 42.8%
手段計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
交通量現況比     鉄道   93.9% 94.9% 95.8% 96.3% 96.7%
バス   84.2% 81.6% 79.6% 79.2% 78.3%
自動車   99.1% 98.9% 98.8% 98.7% 98.6%
徒歩等   94.2% 94.0% 93.9% 93.8% 93.8%
手段計   95.6% 95.6% 95.6% 95.6% 95.6%
交通量(1)との比     鉄道     101.1% 102.0% 102.6% 103.0%
バス     96.9% 94.6% 94.1% 93.1%
自動車     99.8% 99.7% 99.6% 99.5%
徒歩等     99.9% 99.7% 99.6% 99.6%
手段計     100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
路線長(km)     2227 2302 2330 2390 2527 2586
現況からの増   75 103 163 300 359
(1)からの増     29 88 226 284
 
■ バスについては、代表交通手段としての利用はケース(1)で現況と比べて約16%の減少であるが、鉄道の端末としての利用を含めると、ケース(1)で現況比10%の減となり、減少幅は小さくなる。
 
表 7-3-7 端末バスを含めたバス交通の需要動向(参考)
    現況
(2000年)
(1)
事業中のみ
(2)
A
(3)
A+B
(4)
A+B+C
(5)
A+B+C+D
バス千人/日 代表手段 1256 1057 1024 1000 995 984
端末 1565 1461 1464 1461 1433 1424
2821 2518 2488 2461 2428 2408
現況との比 代表手段   84.2% 81.5% 79.6% 79.2% 78.3%
端末   93.4% 93.5% 93.4% 91.6% 91.0%
  89.3% 88.2% 87.2% 86.1% 85.4%
※端末バスは需要予測上の定義による参考値
(本需要予測では、鉄道端末交通の手段分担率は明示的に予測していないため、参考値として提示)
 
c)事業中路線開業による地域別鉄道分担率の変化
 地域ブロック別(PT大ゾーンレベル)で鉄道整備による交通手段分担率(発生・集中交通量ベース)を見ると、以下の通りである。
 鉄道整備が進む大阪市、京都市などを始めとして、整備により鉄道分担率が最大1%程度上昇する結果となった。
 
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図 7−3−6   鉄道整備ケースによる鉄道分担率の変化(発生・集中交通量)(1)
 
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図 7−3−7   鉄道整備ケースによる鉄道分担率の変化(発生・集中交通量)(2)







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