日本財団 図書館


6−7 交通機関選択モデル・鉄道経路選択モデル
(1)モデルの全体構造
 交通機関選択モデルと経路選択モデルとの全体構造を以下に示す。交通機関選択モデルは以下に示すようなネスティッドロジットモデル(Nested Logit Model, 以下NLモデル)を用いるが、その中で、鉄道の効用値については経路選択モデル(マルチロジットモデル)による経路の合成効用(ログサム)を用いるものとする。推定の手順としては、下位モデルである鉄道経路選択モデル(レベル1)のパラメータ推定を経た後、交通機関選択モデルで鉄道・バス、ならびに公共交通機関・自動車の段階選択モデル(レベル2)の推定を行うこととする。
 
(拡大画面:20KB)
図 6−7−1   交通機関選択モデルと鉄道経路選択モデルの全体構造
 
○交通機関選択をネスト化(=段階化)する必要性
 鉄道・バス・自動車の3交通機関の同時選択では、例えば、新線開業が行われた(鉄道の効用値が上昇した)場合に、同じ公共交通であるバスからの転換が自動車からの転換より多いことが考えられる。しかしながら、3肢を並列に見た場合、IIA特性(選択肢の独立性=自動車・バス・鉄道の効用はそれぞれ独立しているという仮定)により、自動車とバスのそれぞれからの転換構造が同じになる。すなわち、鉄道の利便性向上による自動車から鉄道への転換が過大となるおそれがある。
 
<参考>
 鉄道がない地域でのバスと自動車の交通機関選択で、バスと同じ効用値(サービスレベル)の新線鉄道が開通した場合を考える。
 同時選択(マルチロジットモデル〜従来モデル)では、鉄道開通後にバス・自動車の分担率が同程度減少となる。実際の交通行動を考えると、鉄道が新設されたとき、同じ公共交通であるバスからの転換が、自動車の転換より多くなると考えられるが、同時選択(マルチロジット)で同程度の転換となってしまうのは、鉄道・バス・自動車の各選択肢がそれぞれ独立で、その分散も等しいと仮定しているためである。ここで、効用の分散の大小を表現する係数λを導入したNLモデルでは、バスの選択確率の減少度が自動車のそれより大きく、より現実に即した予測となりうることが分かる。
 このときのλは一般的に0と1の間をとり、λ=1であれば3手段が独立した形、すなわち同時選択モデルとまったく同一となる。また、λ=0であれば、自動車=マストラの選択と、マストラのうちバス=鉄道の選択は全く独立した要因で行われることを意味する。
 
○交通機関選択モデルと鉄道経路選択モデルの関係について
 交通機関選択モデルにおいて、各交通機関の効用値の計算は、従来では鉄道にあっては鉄道経路選択モデルにおける最も効用の高い経路を代表値としていた。このことは、例えば鉄道新線が開業するなど鉄道サービスが向上した場合においても、その経路が選択肢のうちで最大効用となるODペアでしか、機関選択に影響を及ぼさないこととなり、鉄道サービス向上による影響が十分に考慮されない一面があった。
 今回予測で用いる方法では、鉄道経路選択はあくまで交通機関選択の選択肢ツリーの1部分として扱うこととなり、鉄道サービスの向上が交通機関選択に与える影響をより適切に考慮することができると考えられる。
(2)徒歩二輪交通量の予測
 徒歩二輪交通量については、OD間距離と密接な関係があることが一般的に知られているまた、その分布は目的別にみて、時間的にも安定している。
 
(拡大画面:48KB)
図 6−7−2   PT調査における目的別徒歩二輪分担率(トリップ長5kmごとに集約)
 
 将来においてもOD間距離の変化は少ないことから、ODペアごとに現況における徒歩・二輪分担率で推移するものと仮定する。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION