(5)プロジェクト選定の考え方と活用策(案)
本調査において取り扱う「プロジェクト」とは、上記に示した「定義」に沿い、自治体及び事業者から提案されている新線及び複線化以外のプロジェクトを指す。
ここで採りあげた「個々のプロジェクト」は、本調査の事務局において、平成14年5月に実施した利用者からの「意見」募集内容及び、自治体及び事業者アンケート内容並びに平成13年度調査において実施した地区別課題の整理、さらに過去における近畿地方交通審議会答申をベースとして、鉄道サービスの高質化に向けたネットワーク機能向上に資するプロジェクトを中心に検討したものであり、「駅乗り継ぎ改善施策、鉄道路線の利便線向上、鉄道路線間の乗り継ぎ改善施策」別に抽出した。今後、個々の箇所等について、利用者ニーズの把握や物理的な問題等の具体的な検討が必要である。
以下は、個々のプロジェクトにおける考え方である。
a)駅乗り継ぎ改善施策
この項では、各路線における利便性向上を図ることにより、圏域全体のネットワーク機能向上が図られる施策を採り上げた。
【ダイヤ調整】
・ 比較的乗換利用者が多く事業者が異なる路線間において、優等列車を中心とした昼間時間における待ち時間短縮のためのダイヤ調整により、ネットワーク機能強化が進むと思われる路線 |
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【乗り継ぎ連絡通路等設置】
・ 既設駅が近接し乗り継ぎ通路等設置や既設駅移設により、ネットワーク機能強化が進むと思われる駅
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【乗り継ぎ運賃制度拡充】
・ 乗換利用者が多く、乗り継ぎ運賃制度の新たな適用によりネットワーク化が進むと思われる路線
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【エレベータ、エスカレータ設置】
・ 乗換客の多いターミナル駅を中心としたバリアフリー化推進により、ネットワーク機能向上が進むと考えられる路線
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b)鉄道路線の利便性向上
この項では、各路線における利便性向上を図ることにより、圏域全体のネットワーク機能向上が図られる施策を採り上げた。
【急行運転化】
・ 路線延伸などにより運転区間が長くなる路線
・ 複線化により線路容量が大きくなる路線
・ 既設路線との競合性が強く、相互に効率的な運行が可能と思われる路線
・ 新規路線の開業により利便性向上が必要と思われる路線
・ 既設路線の優等列車を活用したネットワーク機能強化の必要性が高く、比較的距離の長い路線
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【優等列車停車】
・ 優等列車を活用した既存路線とのネットワーク化が必要と思われる路線及び相対的に利用者の多い駅を中心としたダイヤ改善が必要と思われる路線
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【貨物線旅客化】
・ 旅客線化により既存旅客路線とのネットワーク機能強化される路線及び輸送サービスの新たな供給となる路線
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【速度向上】
・ 路線延伸による運転区間の長大化や線路増設等による優等列車の運転等に伴うダイヤパターンの変化が予想される路線、また、比較的運行距離が長く、大阪を中心とする放射状の路線
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c)鉄道路線間の乗り継ぎ改善施策
この項では、既存路線における連携強化を図り、圏域全体のネットワーク化を図るための施策を採り上げた。
【既設路線延伸】
・ 比較的近距離に既設駅があるが接続していない路線について、既設路線の延伸によりホームtoホーム、連絡通路設置等により、ネットワーク化が可能と思われる路線
・ なお、既存路線の延伸については、現在路線との延長割合や輸送サービスの連続性等から、既存路線とのネットワーク化により需要効果が図られる可能性のあるものを対象とする。
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【路線の再編】
・ 都心部に位置しながら相対的に輸送需要の少なく、また、今後、隣接する路線の整備により需要転換等の影響発生が予想される路線及び軌間等仕様が同一である路線におけるネットワーク機能強化が可能と思われる路線
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【相互直通運転化】
・ 相互直通運転化により、ターミナル乗換混雑の緩和及び都心と郊外エリア間の所要時間が短縮される路線
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(6)既存ストック活用策実施のための課題
上記(5)に掲げる各施策の実施に当たっては、特にダイヤ調整、乗り継ぎ運賃、相互直通運転化等については、これまでの各事業者間の競争から協調・連携への転換を図ることが必要である。そのためには、各事業者がかかる既存ストック活用策の実施のための協調・連携を図ることがメリットになることを認識することが必要である。さらに、新線整備に対する公的助成制度だけでなく、重要度を増している既存ストック活用方策に対する公的助成制度の検討も必要である。このように、既存ストック活用策の実施を円滑に行う環境整備のためには、行政及び事業者双方における従来の発想の転換が必要である。
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図 5−1−2 |
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アンケート等で提案された既存ストック活用策 |
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