日本財団 図書館


e)需要の質的変化への対応:誰もが利用しやすい利便性の高い鉄道サービスの提供
 過去の都市交通における高速鉄道は、経済高度成長を背景とした都市人口の増大や大規模開発プロジェクトの進展に伴う新たな流動の発生、局地的な交通需要への対応等を目的とし、高速鉄道が有する特性(大量輸送、速達性、定時性、安全性、低公害性)を最大限に活かした新線整備によるアクセス性及びネットワーク性の向上、複線・複々線化による運行本数の増加等輸送力増強を行うものであった。
 鉄道は、これまで答申第10号や各府県における近畿地方交通審議会答申により新線や複線化等の整備が進められ、混雑緩和等利用者利便の確保が図られてきた。しかしながら、少子高齢化、経済低迷、自家用自動車保有増大、フィーダーとしての乗合バスサービス機能の低下等により、鉄道利用者は減少傾向を示している。特に、定期利用者については、経済の停滞や沿線企業における雇用情勢の変化等を受け、大きな減少となっている。
 
図 4−2−4   鉄道定期需要と自家用車需要の推移(京阪神交通圏)
資料:都市交通年報
 
 一方、将来における人口構造は、少子高齢化がさらに進展し、就業人口や就学人口の減少が予測される。特に、就学人口は少子化の進展に伴い、20年後の平成32年頃には、現在より約25%の大幅な減少となるが予測される。
 このような人口構造を背景とした将来における交通需要構造は、通勤、通学需要が減少する中において、高齢化の進展や女性の社会進出等に伴う買い物や通院等の自由目的需要の増加が見込まれる。今後における社会環境等の変化を踏まえ、鉄道を中心とする公共交通は、高齢者、女性が安全かつ安心して利用できるような環境を確保し、誰でも利用しやすい利便性の高い輸送サービスを提供できる交通機関として整備する必要がある。
 
図 4−2−5   将来における就業・就学人口(近畿圏)
資料:国勢調査を基に事務局推計
 
(拡大画面:89KB)
 
 
○過去の鉄道整備(輸送サービスの量的供給)
(拡大画面:57KB)
 
 
○今後の鉄道整備(輸送サービスの質的向上)
(拡大画面:84KB)
 
 
【参考】鉄道整備と輸送需要の変化
(拡大画面:53KB)
図 4−2−6   鉄道整備量の変化と輸送量の変化((上)京阪神交通圏、(下)首都交通圏)
資料:都市交通年報
注)路線整備量とは、前年度からの営業キロの変化を示す。
 
 京阪神交通圏及び首都交通圏においては運輸政策審議会答申第10号及び第7号、18号により路線整備が行われてきたが、路線整備量と需要量の変化を相関的にみると、平成元年から平成6年頃における路線整備量の減少とともに需要の増加量も減少傾向が伺え、また、平成7年からの路線整備量の増加に伴い輸送需要の減少幅が小さくなっている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION