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○鉄道利用OD交通量の推移
 大阪市・神戸市・京都市を中心とした放射状方向、ならびに3大都市相互間での鉄道利用が多い。既存の鉄道路線にほぼ添う形での利用が多いと言える。分布パターンは、姫路地域〜阪神間の流動が増加していることを除き、過去10年で大きくは変化していない。
 
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図 2−2−70   常鉄道利用OD交通量((上)平成2年(下)平成12年)
資料:第3回、第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査
 
○自動車OD交通量の推移
 主に比較的短距離である隣接地域間の交通量により全体が構成されており、都市圏外縁部において大きな増加がみられる。
 過去10年間では、滋賀県南部、奈良県、兵庫県播磨及び大阪府南部地域等の中核都市クラスの市街地において著しい増加がみられる。
 
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図 2−2−71   自動車利用OD交通量((上)平成2年(下)平成12年)
資料:第3回、第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査
 
○鉄道・自動車OD交通量の増減
 (鉄道)京阪神圏の流動の大部分を占める大阪市関連の流動は、依然量的には多いが、過去10年間では減少傾向にある。一方、京都市関連や阪神地域においては増加がみられる。
 (自動車)相対的に短トリップである隣接地域間の流動が著しい増加となっており、特に都市圏外縁部の増加が顕著である。
 
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図 2−2−72   鉄道・自動車利用OD交通量の増減((上)鉄道(下)自動車)
資料:第3回、第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査
 
○平均トリップ長の推移(鉄道・自動車)
 トリップ長毎の鉄道・自動車利用交通量(京阪神計)の変化をみると、鉄道は20km以内の利用者の減少が顕著であるが、それ以上の距離帯では若干であるが増加している。
 自動車については、全ての距離帯で大幅な増加となっているが、特に5km未満の短トリップの増加が著しいものとなっており、徒歩・二輪から相当数の転移が考えられる。
 交通状況の変化要因として、短トリップについては、目的地の変更や免許保有率上昇などによる自動車への転移、また、長トリップについては、人口の外延化に伴う長距離トリップの増加などが考えられる。
 
H2→H12の差
  H2鉄道 H2自動車 H12鉄道 H12自動車 鉄道 自動車
0〜5Km 1,719,392 6,493,913 1,496,771 8,959,982 -222,621 2,466,069
5〜10Km 2,030,919 2,296,503 1,913,054 2,938,658 -117,865 642,155
10〜15Km 1,488,375 1,024,595 1,402,099 1,225,377 -86,276 200,782
15〜20Km 1,124,628 556,507 1,074,666 698,303 -49,962 141,796
20〜25Km 729,335 315,384 737,695 397,855 8,360 82,471
25〜30Km 504,591 170,608 500,722 222,050 -3,869 51,442
30〜35Km 317,300 104,503 358,802 151,947 41,502 47,444
35〜40Km 224,744 64,521 243,598 97,513 18,854 32,992
40〜50Km 259,026 66,814 306,235 109,431 47,209 42,617
50〜60Km 93,214 24,892 137,117 48,903 43,903 24,011
60〜70Km 49,831 16,471 70,886 27,124 21,055 10,653
70〜80Km 17,000 7,584 30,027 13,831 13,027 6,247
80〜90Km 6,785 3,589 13,448 10,066 6,663 6,477
90〜100Km 2,538 1,621 6,267 5,009 3,729 3,388
100〜999Km 1,257 587 3,355 4,470 2,098 3,883
合計 8,568,935 11,148,092 8,294,742 14,910,519 -274,193 3,762,427
 
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図 2−2−73   トリップ長階層別鉄道・自動車交通量(人/日)
資料:第3回、第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査
(4)まとめ
 京阪神圏における「社会経済情勢、交通手段、土地利用」の変化による鉄道需要への影響要因としては、以下のことが考えられる。
1. 社会経済情勢の変化
○就業人口は平成7年頃をピークに減少傾向を示している。
→通勤需要は、大阪市関連の流動量は依然多いが、従業人口の減少などの影響により大阪市関連の流動量が減少している。
○常住人口の外延化・都心回帰、従業人口の外延化が続いている。
→都市圏周辺部における人口増加、都心部における従業人口が減少している。
→都心部における人口の増加傾向が続いている。
○大都市周辺部における高齢化が進展している。
→既成市街地において、若年層を中心とする人口の流出などが見られる。
○経済情勢と鉄道需要は、相関性が高い。
→経済情勢の低迷により、鉄道需要も伸び悩みをみせている。
 
2. 交通手段の使われ方の変化
○免許取得率及び自動車保有率が同時に増加している。
→特に大都市近郊及び郊外部において著しい増加がみられる。
○都心部を中心とする鉄道整備、郊外部を中心とする道路整備が進展した。
→都心部における鉄道分担率の増加、郊外を中心とする地域における自動車分担率の増加がみられる。
 
3. 土地利用の変化
○草津市等の滋賀県南部、学研都市、三田市等の北摂地域における開発が進展している。
→JR駅前開発と鉄道の高速化等による長距離出勤トリップが増加している。
○工業・流通系施設や大規模商業施設等の郊外地域への立地が進展している。
→日常の買物における自動車利用によるトリップが増加している。
→鉄道駅密度の比較的低い郊外において、職住近接型の土地利用が進み、自動車利用が進んでいる。
→大阪市を中心とした放射状の流動は、依然大きなウエイトを占めるものの、近年では減少傾向がみられる。
 
 以上のように、鉄道を取り巻く種々の外的要因が過去10年において大きく変化したことから、交通機関に対する利用者の顕在的ニーズも変化した。
 特に土地利用の変化に対して柔軟な対応が可能な自動車交通が著しく増大したことを受け、主に大阪市域等を中心とする放射状のネットワーク機能を有する鉄道は、人口等の外延化が進んだこと等から、近年、通勤定期需要を中心に減少幅が大きくなっている。







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