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船と魚 〜漁法のいろいろ〜
日本列島は海岸線が長く、暖流と寒流がぶつかり合う位置にあるため、捕れる水産物の種類が豊富です。昔から日本人の食生活は、魚介類(ぎょかいるい)に大きく依存してきました。諸外国に比べて日本人の水産物の利用度は極めて高く、魚類だけで約500種が市場に出回っています。魚類に加えて貝類やエビ・カニなどの甲殻類(こうかくるい)、イカやタコ、ウニやホヤなどの他にも、ノリ、ワカメ、コンブなどの海藻類(かいそうるい)など様々な水産物を利用しています。
漁をする技術には、古来、銛(もり)で突いたり、釣り針で捕るほか、浅瀬に仕掛け(しかけ)を作って追い込んだり・竹篭(かご)などの容器へ魚やタコなどを誘い込んだり(さそいこんだり)という方法がありました。そして時代が移るにつれ、少しずつ漁具と漁法が改良されていったのです。今日の商業的漁業で用いられる漁具は、(1)網、(2)釣針、(3)篭や壷(つぼ)など、(4)銛(もり)、(5)貝や海藻(かいそう)などを捕るための道具などがあります。また、漁業の時に使う魚がどこにいるかを調べるための魚群探知機(たんちき)や、魚の光に集まる習性(しゅうせい)を利用するための集魚灯(しゅうぎょとう)などは、副漁具といわれています。
1. 卜ロール漁業
トロール漁業は、袋状に広げた網を曳き(ひき)ながら、海底及び中層の生物を捕る方法です。曳網(えいもう)中の網口(あみくち)を上下方向に広げるための浮き(うき)(浮子(あば))を連ねたヘッドロープと、おもり(沈子(ちんし))として鉄球やチェーンを連ねたグランドロープが取り付けられ、網口を左右に広げるために、オッターボード(網口を左右に広げるためのもの)が取り付けられています。この漁法で、鱈(たら)、鰈(かれい)、鯛(たい)などの他、烏賊(いか)類や鯵(あじ)、鯖(さば)などが捕られています。
この漁法はヨーロッパ諸国で発達し、明治の末頃日本にも導入されました。初期のトロール漁船では、舷側(げんそく)で網を操作していたので、船が網の上に乗らないように常に風上側で網の揚げ降ろしをしなければならず、荒天時に起こる船体の揺れが大きな支障となりました。そこで考案されたのが、船尾で網の揚げ降ろしをするスターントロールです。船尾にスリップウェイ(斜路)やウィンチを設けています。この方式は、作業員数が少なくてすみ、遮浪甲板(しゃろうこうはん)(波が入りにくい造りの甲板)で捕った魚などの処理や製品化ができるので、乗組員の安全性が確保されます。
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スターントロールのようす
2. 鮪延縄(まぐろはえなわ)漁業
鮪は大洋を大回遊する魚で、鮪漁場は赤道を中心に南北太平洋全域に広がっています。鮪を捕るために行われているのが、延縄漁業です。延縄は、幹縄(みきなわ)、枝縄(えだなわ)、浮縄(うきなわ)、の釣り針、浮きから構成される漁具です。幹縄を海中に延ばし、40〜50メートル間隔で枝縄をつけて、枝縄の先端の釣針と餌で捕ります。餌は冷凍の秋刀魚(さんま)や鯵(あじ)などが使われ、釣り針は鮪が泳ぐ深さに配置されるように調整をします。
遠洋でする鮪漁船は、200〜500トンの船で出漁し、途中で外国の港へ寄港して乗組員の休養と、燃料や食糧の補給を行いながら、一航海で1年程度操業します。
漁具を海に入れることを投縄(とうなわ)、引き揚げることを揚縄(あげなわ)と言います。投縄は夜明け前に行われることが多く、このときに海に入れられる幹縄の全長は100〜180キロメートルにも及びます。投縄終了後に少し待ち時間を取った後、揚縄を開始します。揚縄は、船を進めながら船首甲板(こうはん)に置いた機械を使って幹縄を巻き上げます。捕った鮪は、魚肉の赤い鮮やかな色を保つために、船上で新鮮(しんせん)なうちに鰓(えら)と内臓を取り除き、−60度という超低温で急速凍結(とうけつ)して冷凍庫に保管します。近年は超低温急速凍結という方法によって、生食用鮪を鮮度の良い状態で長期間保管することが可能になりました。鮪は遠洋で捕獲られるもののほかに、東北沖や南九州沿岸、薩南海域で捕獲されるものもあり、年間を通じて私達の食卓(しょくたく)に供給(きょうきゅう)されています。
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延縄のしくみ
3. 鰹(かつお)一本釣り漁業
鰹は暖海性(だんかいせい)の回遊魚(かいゆうぎょ)で、黒潮の北上と共に来遊し、秋の親潮の発達と共に南下します。初夏に捕れるものは初鰹(はつがつお)、秋に捕れるものは戻鰹(もどりかつお)と呼ばれ、昔から日本人が好きな魚の一つです。この漁法の特徴は、活きた(いきた)鰯(いわし)を撒き餌(まきえ)として使うことです。そのため漁船は活魚艙(かつぎょそう)を備え、鰯を漁場まで運べるようになっています。鰹一本釣り用の鰯は沿岸域で漁獲し、生簀(いけす)内で狭い環境に慣らしたものです。また、この鰯の種類は片口(かたくち)鰯が良いとされています。なぜなら、片口鰯は通常海中に撒かれた後、表層付近を泳ぐので、鰹を自船(じせん)周辺に引き留めておく効果があると考えられているからです。
鰹の魚群が表層付近で活発に動く日の出前後は群れを見つけやすく、餌(えさ)への喰いつき(くいつき)もいいので操業は明るい間に行います。魚群を発見すると、船を群れに近づけ鰯を撒き、それと共に舷側(げんそく)から散水を行って、鰯が大量に群れているように見せます。この間、舷側(げんそく)に並んだ釣り手が、返しのない擬餌針(ぎじばり)を使って竿(さお)で鰹を釣り上げ、甲板上の空中で釣り針からはずすように竿を操作します。船首と船尾の釣り台には熟練した釣り手が配置され魚群を散らさないように竿を使い、中央部の釣り台には体力に優れた者がつきます。鰹の食いつきがいい状態が1時間以上続くことは稀(まれ)で、好・不漁は短時間で決します。
漁場の選定にあたっては、自船の過去の航海の漁況(ぎょきょう)、他船の操業状況、水産試験場や漁業情報サービスセンター等の資料を参考にします。魚群の発見には海鳥を目視やレーダーで見つけ、その動静を観察することによって聞接的に魚群の所在を知る方法、流木などの漂流物や鯨(くじら)、鮫(さめ)、小魚の群れ等を探し、それらを追いかけて泳ぐ鰹の群れを見つける方法があります。
船の特徴としては、魚群を癸見するための見張り台を持ったマスト、船首から船の周囲を取り囲んだ釣り台、散水装置、鰯の活魚艙などです。また、船の大きさの割に乗組員の数が多いことも特徴といえます。
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