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1994年6月17日 『週刊金曜日』
NPT(核拡散防止条約)体制の矛盾と北朝鮮危機
制裁は危険で無意味、NPTは不平等条約だ
吉田康彦
◆制裁は事態を悪化させる
 筆者は「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核は無害である」という説を唱えて物議をかもしているが、この主張を撤回する気はない。ただし、それには「制裁によって北朝鮮を追いつめないこと」という前提条件が存在する。
 筆者は長い国連勤務の体験から、わが国の国連安保理常任理事国入りは絶対に必要であり、自衛隊のPKO(国連平和維持活動)無条件参加は不可欠であると信じているが、北朝鮮に対する制裁に、何のためらいもなく同調しようとしている日本政府の対応には不満を抱かざるを得ない。核疑惑解明を前提条件にせず、日朝国交正常化交渉再開を呼びかけ、外交の自主性を確保、対話と説得の道をさぐるべきだ。疑惑解明は同時進行でよい。
 「北朝鮮が、寧辺地区の五メガワット実験用発電炉の燃料棒交換を強行、IAEA(国際原子力機関)の査察官を受け入れながら査察業務を妨害し、査察の続行を不可能にした以上、何らかの制裁を加えなければ秘密核開発を容認する結果になる。そうなれば早晩、核保有に至る(すでに保有しているかもしれない)。北朝鮮の核保有容認はNPT(核拡散防止条約)体制の崩壊を意味する。来年四月のNPT延長会議を控えて、ここで断固たる態度に出ないと示しがつかないことになる。そうでなくても、北朝鮮の核保有容認は日本の核武装論議を加速することになる」
 以上が、議会と世論の圧力で、国連安保理による経済制裁、(中国の反対で実現しない場合には)日米韓による多国間制裁を主張する米国政府の論理である。日本政府は、場合によっては有事立法、緊急立法によってこれに協力する準備を進めている。
 しかし、制裁は事態を悪化させるだけである。
 
 
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