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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


◆金正日論文の異常さ
 それはともかく、右にみた金正日論文を別な角度から検討すると注目すべき側面が浮び上ってくる。
 いまにはじまったことではないのだが、この期に及んでこのような態度をとることは、彼我の力関係をまったく弁えていない行為である。換言すれば、自己の相対化がほとんどなされていない人間(集団)であることがわかる。あるのは、主観的な自己主張だけだ。金正日からみてロシアや中国が「社会主義の背信者」や「修正主義者」集団であろうがなかろうが、この二カ国に穀物や石油、工業施設など依存していることは否定しようがない事実だ。
 ロシア、中国に代わる国として、核兵器をちらつかせ米国を取り込もうとしているのが昨今の北朝鮮の「世界戦略」なのだが、軽水炉支援(核開発の凍結)交渉の経過をみれば明らかのように、米朝ともに問題の先き送りをしているだけで、いつか必ず破綻する。つまり、北朝鮮の思惑通りにはいかなくなる。
 状況がそうであるのに、金日成が死亡してわずか一年半余の間に、ロシア、中国批判というより、中傷(両国からみれば)を二回も行っている。一国の外交としては到底考えることのできない自殺行為といわなければならない。
 話が横道にそれるが、実は、相手を攻撃し、自分の要求を通そうとする方法は、本誌前号で『現代コリア』西岡力編集長が「韓国の反日外交をいかに断ち切るか」のなかで指摘しているように、韓国が日本に使ってきている手法でもある。南北の不幸なことは、民族内部の手法を外国との交渉にそのまま使ってきていることだ。
 こんな手法に対しオロオロしているのは、日本以外にないのだ。必ず孤立する。北朝鮮の悲劇は、国民に食糧も供与できず、外国から援助を受けながら、全世界から見離され、誰も相手にしない「社会主義」がこの世で一番立派なものと思って、それを根拠にロシアや中国への批判を展開していることだ。
 多少なりと自国を客観視する目をもっていたならこんな見当違いの論文を発表することはできないはずだ。
 また、恐るべき夜郎自大(自分の力量を知らないで、仲間の中で幅を利かす者のたとえ)の国家である。そのもっともよい例が金日成に対する修飾語である。
 金日成は「人類が生んだ革命の英才」「わが人民が数千の歴史で初めて迎え、高くいただいた偉大な首領であられる」「人類思想史におけるもっとも高く輝かしい位置を占める永久不滅の主体思想を創始された偉大な思想理論家であられる」「金日成同志の革命思想は、現代と共産主義の未来の全歴史時代を代表する革命の偉大な指導思想、指導理論、指導方法である」「金日成同志は・・・・・・革命の偉大な戦略家であられ、百戦百勝の鋼鉄の霊将であられ、創造と建設の英才であられる」「金日成同志は人類解放の救いの星であられ、世界革命と国際共産主義運動の偉大な指導者であられる」。
 以上は、朝鮮労働党員が絶対に守ることを義務づけられている「党の唯一思想体系確立の十大原則」(一九七四年二月第五期第八回中央委員会総会で採択・金正日が中央委で金日成の後継者と確認された総会でもある)の前文から抜き出したものである。
 これを読んで誰もが抱く素朴な疑問は、そんなに偉大な指導者が、なぜ、五〇年間も「米帝国主義者」を朝鮮半島から追い出せなかったのか。そしてどうして統一ができないのか。たかだか二千万の国民をなぜ、食わせることができないのかということだ。
 この「十大原則」は、金正日の指導で作製されたものだといわれている。北朝鮮には、憲法をはじめとし色々な法律があるが、それは対外的な装飾品にしかすぎない。この「十大原則」こそが北朝鮮を支配している「掟」なのである。
 この金日成に対する修飾語一つをみただけでも「夜郎自大」なる言葉がもっとも北朝鮮の実態を表現しているものであることを理解して頂けると思う。それなら、金日成・金正日以外の人たちはどんな位置づけになっているかといえば、世界で一番偉大な人が金日成であるから、金日成同志から党内序列が何番目である。だから世界で何番目に偉い、という構造になっているのだ。
 事情を知らない人がこれを読むと吹き出すか、そうでなければ筆者がある種の偏見をもって書いていると受け取られる可能性がある。そう思われる方は一度「十大原則」の原文を読むことを是非ともお進めしたい(『現代コリア』一九九一年七月号に全訳収録)。北朝鮮を日本人の常識で測ったらとんでもない間違いを犯すことになるのである。
 
 
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