◆「独裁」を利する北への援助
政府与党は、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に出資するのに、日朝の関係正常化が必要だと言うが、そもそもKEDOへの出資とはなんなのか。一千億円以上の出資が取り沙汰されているが、これはどういう性格のカネなのか。外務省アジア局長もKEDO担当大使も、「わが国の安全保障費だ」といっている。だが、米朝合意がスムーズに進行しても二〇〇万キロワットの軽水炉を使って電力が生産されるのは十年先の話だ。北朝鮮にとって現実に役立つのは、年間五〇万トンの原油だけだ。政府与党の主張を論理的に詰めていくと、KEDOが毎年五〇万トンの重油を北朝鮮に援助すると、北朝鮮は核開発を放棄するということになる。そうならなければ、一千億円以上の大金は安全保障費とは言えない。なぜ年間五〇万トンの重油で核開発を放棄するといえるのか、是非ともその根拠をきかせて欲しい。
改めていうまでもないことであるが、北朝鮮の核問題は、わが国の安全保障にとって重大問題である。北朝鮮の核に対し、わが国はどう対処するのか、その肝心な論議がないままに、わが国の安全をカネで買う(KEDOへの出資)という話が、政府高官から公然となされている。一体誰がどこでこんな決定をしたのだろう。実に不可解千万な話ではないか。
わが国の政府は、北朝鮮が韓国型軽水炉を拒否したら、また、特別査察を拒否したらどうするつもりなのだろう。再言するが、軽水炉の中心部分が北朝鮮に搬入される直前までは何年たっても特別査察は実施されないのである。その間北朝鮮の核開発とミサイル開発を外部から抑止することはできない。それなのに軽水炉や重油を援助するというのだ。
韓国型軽水炉をめぐって、これからまた延々と非生産的な交渉が続くだろう。その間に北朝鮮が、核ミサイルを手にしたならわが国の全土は四六時中、北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に置かれることになる。そんな心配はないという人がいるのなら、その根拠を示してほしい。
いま一般には、北朝鮮が保有しているプルトニウムの量は、長崎型原爆の一、二個分といわれているが、これには何の根拠もない。茨城県東海村に、北朝鮮で稼働している五〇〇〇キロワットの黒鉛炉とおなじものがある。米CIA(中央情報局)の説明によると、北朝鮮は一九八九年同炉を約百日間停止し、使用済み核燃料棒の交換を行った。そこから採取されたプルトニウムの量が原爆一、二個分に当たるという説明だ。
東海村の専門家の話によると、核燃料棒の交換に原子炉を停止させる必要はなく、プルトニウム採取にもっとも適当な時期に、順次核燃料棒を交換することが可能だという。北朝鮮の姜成山首相の娘婿康明道氏の「北朝鮮は原爆を五個所有している」という発言を一笑に付すことはできないのである。
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