タイム・リミットはあるのか
◆米議会が設定したタイム・リミツト
現在の状況は九四年危機ほど時間的に切迫しているわけではない。当時は、北朝鮮が使用済み核燃料を使用して、寧辺でプルトニウム抽出に着手することが懸念された。しかし、今回は、金昌里での核開発が危険な段階に到達しているわけではない。タイム・リミットは北朝鮮情勢に苛立つ米議会によって設定されたのである。
もちろん、地下施設の査察は必ず実施されなければならない。しかし、議会の同意が得られれば、タイム・リミットには相当の余裕が生まれるはずである。事実、国家安全保障の理由があれば、議会が付した留保を利用して、大統領が予算の執行を命じることも可能である。韓国外務省の外交安保研究院の報告書は、大統領権限による査察期限の延期を提案している。
また、議会対策の意味では、予算案審議の過程で、米議会自身が「北朝鮮政策調整官」を任命して政策の再検討を要求したことが重要である。調整官に任命されたペリー元国防長官が提出する報告書の内容が今後の議会の動向に最も大きな影響を及ぼすだろう。ただし、政策的な手詰まりを容易に解消する妙案があるとも思えない。情勢を慎重に検討すればするほど、極端な政策は排除されざるを得ないのではないか。一部で想定されているように、ペリー報告が当初から「ムチ」(制裁)だけを要求するとは考え難い。そのように牽制しつつも、「アメ」(交渉)を先行させて、査察の実現を目指すことになるだろう。
従って、査察問題がヤマ場を迎えるのは、九三、九四年の核危機の場合と同じく、五月から六月にかけてのこととみられる。九三年の場合、北朝鮮は三月にNPTを脱退し、五月にノドン・ミサイルを試射した。九四年の場合、六月にIAEAを脱退した。また、同じ六月に、米も国連安保理事会に北朝鮮制裁決議案を提出した。カーター元大統領が北朝鮮を訪問して、金日成主席と会談したのも、同じ六月のことである。現在はまだ、査察の実施を高く売り付けるために、北朝鮮が「危機」を演出して「掛け金」を吊り上げている段階である。テポドンの再発射があるとしても、前回と同じく五月ころのことだろう。
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