◆予想される「九月攻勢」
今回の政策変更でいま一つ重要なのは、タイミングの問題である。
北朝鮮の決定が従来の硬直した政策の拘束からできるだけ早く解放され、より自由な立場から今後の外交交渉や南北対話に取り組みたいという意思を反映するのであれば、それはより大きな政策変更の一部であるかもしれない。北朝鮮政府は日朝交渉の現状、米朝関係の将来、南北対話の展望などを視野に入れ、それぞれを慎重に計算しつつ、タイミングを選んで、今回の態度表明に踏み切ったに違いないからである。
その意味で注目されるのは、今後のスケジュールからみて、国連総会やIAEA理事会など、北朝鮮外交の焦点が九月に絞られている点である。それが偶然のことでなければ、今後に予想されるのは、恐らく北朝鮮外交の「九月攻勢」であるだろう。現在、北朝鮮指導部の関心はそれまでの二、三ヵ月という「時間」をいかに有効に使用するかに集中しているに違いない。
とりわけ重要であるのは、「九月攻勢」を前にして、中断された南北首相会談をいつ再開するかという問題である。北朝鮮としては、九月までの間に、再び金丸、田辺両氏や日朝議員連盟訪朝団を通じて、対日「早期国交樹立」のための条件整備に努めるに違いない。仮に南北首相会談が七月中に再開され、九月に向けて順調に進展すれば、それは日朝交渉の再開と進展のための強い圧力にならざるを得ないだろう。
このような推測が正しければ、数力月後に日朝交渉が再開された時、第三回会談での日本側の要求がほとんど満たされており、北朝鮮側が主張しているように、日本側も「早期国交樹立」に応じざるを得ないような状況が用意されていないともかぎらない。それとは逆に、そのような形で日朝交渉が再開されれば、韓国としても、南北対話をさらに進展させないわけにはいかなくなるだろう。
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