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産経新聞朝刊 2002年12月1日
主張 対「北」食糧支援 外務省の対応含め究明を
 
 外務省の外郭団体「日本外交協会」がコメなどの食糧を北朝鮮に送っていたことが明らかになった。拉致事件などで北朝鮮への厳しい対応を迫られている時期に、公的機関によるこのような支援は国益にも国民感情にも反し、信じがたい行為である。
 この事実は、東京都の石原慎太郎知事の定例会見で明るみに出た。北朝鮮に送られたのは、東京都など全国の自治体から同協会に寄付された非常用備蓄食糧のコメ(加工米)と乾パン計約四十万食で、協会によると、埼玉県の熊谷遊技業協同組合から「北朝鮮への食糧援助に協力してほしい」と頼まれ、北朝鮮と日本を結ぶ不定期貨客船「万景峰」号に積み込んだという。
 現在、拉致被害者五人の帰国は実現したものの、北朝鮮に残された子供たちの帰国については北朝鮮がかたくなに拒んでいる。国民の北朝鮮に対する怒りは増し、日本政府は拉致事件の解決なくして国交正常化も食糧支援もしないという強い姿勢で臨んでいる。そのようなときに、北朝鮮に食糧を送るとは、何を考えているのか。あまりにも無神経である。
 協会の担当者は「この件は外務省にも報告した」といっている。外務省が知っていながら許可したとしたら、政府の方針にも反する大問題である。小泉純一郎首相も「その協会はおかしい。事実だったらよく調査する」といっている。外務省の対応も含め、国会でも徹底究明する必要があろう。
 ここ数年、北朝鮮の食糧事情が逼迫(ひっぱく)していることは周知の事実である。日本は平成七年以降、人道支援の目的で計百十八万トンのコメ支援を行った。しかし、拉致事件の解決に役立たないどころか、それが北朝鮮で飢えに苦しむ末端の人々に届いたという保証はない。「軍に優先的に回されているのではないか」という疑惑も指摘される。
 しかも、拉致事件に加え、北朝鮮が国際公約に違反して核開発を行っていた事実が明らかになった。米国は北朝鮮への十二月からの重油供給をストップし、日本も軽水炉建設のためのKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)事業の見直しを検討している。独裁国家の暴走を阻止するため、国際的な対「北」包囲網が必要なときに、安易な“人道支援”は慎むべきである。
 
 
 
 
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