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産経新聞朝刊 2002年10月18日
主張 米朝核合意破棄 「北」のかけ引きに乗るな
 
 今月上旬に平壌で行った米朝高官協議の際、北朝鮮が核兵器開発を秘密裏に進めていることを認めたことを米政府が明らかにした。北朝鮮は拉致被害者を帰国させる日本向けの柔軟外交の仮面の下で、米国に対しては、相変わらず暴発カードを振り回す危険なかけ引きを展開していたことになる。
 北朝鮮はこれまでも、日本や韓国に対して敵対行為を不意に仕掛け、まもなく、事件の影響を緩和するためにほほえみ外交に転じることを繰り返してきた。結果的に、敵対行為の自制と引き換えに、相手国からコメ支援などの「見返り」を引き出すことに成功している。
 従って、今回の拉致事件で柔軟姿勢を示したことをもって、金正日総書記が突然、「友好的な紳士」になったと考えるのは間違っている。北朝鮮は打ち続く飢饉(ききん)から食糧が底をつき、金正日体制の生き残りのために日本を相手に「抜き打ちの妥協」を策したと考えるのが妥当だ。
 こうした巧みな外交戦術は九月の日朝首脳会談でも見られた。金正日総書記は、ミサイルの発射実験については無期限に凍結する立場を表明していた。しかし肝心の核開発問題については、両首脳が調印した日朝平壌宣言で、北朝鮮が「国際的合意を順守」しつつ、「関係国との対話を促進する」と誓約するにとどまっていた。
 北朝鮮は危険な核開発問題を手元に残し、米国を対話へ誘導する重要なカードとしていたことになる。
 北朝鮮は日米韓の三カ国連携を見据え、日本と韓国に対しては関係改善を進める姿勢を見せる一方で、強硬姿勢を崩さない米国に対してはあえて危機的な状況をつくり出して連携の分断を図ったとみることができる。
 北朝鮮はイラクのフセイン政権の打倒を視野に入れるブッシュ政権を相手に、米朝枠組み合意の無効を宣言して極めて危険なゲームに打って出たといえる。
 こうした米朝関係が緊迫する中で、日本は二十九日からクアラルンプールで北朝鮮との国交正常化交渉に入る。日本は拉致事件の徹底解明を求めつつも、米韓と連携しながら核開発凍結なしに経済援助はありえないことを主張すべきである。
 
 
 
 
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