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産経新聞朝刊 2000年11月10日
社説検証 拉致問題と日朝関係 疑惑解明か交渉進展か
 
 十月末、北京で第十一回日朝国交正常化交渉が行われたが、拉致(らち)疑惑を含め目立った進展はなかった。交渉の直前、森喜朗首相の「第三国発見」発言が明るみに出たこともあって、各紙の矛先は首相にも向けられた。そこで、拉致疑惑と日朝関係について、緊急社説検証を試みた。これまでの社説検証は、朝日、毎日、読売、産経の一般全国紙四紙を対象としてきたが、今回は経済紙の日経と、海外の米ニューヨーク・タイムズ、韓国・朝鮮日報を加えた。(各紙社説は抜粋)【論説委員室】
 ◆「謎のアベック失跡」が発端 国際社会の理解深まる
 昭和五十二(一九七七)年十一月、新潟市の海岸付近で、中学一年生の横田めぐみさん=当時(一三)=が行方不明となった事件をはじめ、五十二年から五十五年にかけて起きた七件十人の行方不明事件について、日本政府は北朝鮮工作員によって拉致された疑いがあると認定している。政府はこのほか、五十三年八月に富山県高岡市の海岸でアベックが四人組の男性に襲われた拉致未遂事件についても、北朝鮮の関与を認定している。
 産経新聞は昭和五十年代から、一連の事件を「謎のアベック失跡」として発掘取材し、日本の主権が侵害された重大問題として追及してきた。
 平成九年、自民・社民・さきがけの与党代表団が訪朝し、北朝鮮側との会談でこの問題を取り上げた。十年、北京での北朝鮮側との非公式協議では、日本側が「行方不明者」として取り上げた結果、北朝鮮は「十人は捜し出せなかった」と回答してきた。今年四月、七年半ぶりに再開された日朝国交正常化交渉では、日本は拉致問題について直接的に言及した。これに対し、北朝鮮は「拉致は絶対にあり得ない。拉致という表現は、根底に敵視政策があるから使われている」と反発し、今日までその姿勢を変えていない。
 日本では、横田めぐみさんの両親らが「拉致被害者家族連絡会」を結成し、署名運動や集会を通じて拉致疑惑解明を訴え続けている。平成九年三月、超党派の国会議員による「北朝鮮拉致疑惑日本人救援議員連盟(拉致議連)」が結成されたが、事実上“休眠状態”になっている。今年一月、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための地方議員の会」が発足し、現在はこの地方議員の会が被害者家族の運動を支えている。
 米国では昨年五月、クリントン大統領が故小渕恵三首相との日米首脳会談で、初めて拉致問題に言及し、「日本の立場を強く支持する」と表明した。先月下旬、平壌で行われたオルブライト米国務長官と金正日総書記との会談でも、オルブライト長官は拉致疑惑の問題を提起し、国際社会の理解は深まりつつある。
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 ■拉致疑惑と日朝関係をめぐる今年の動き
1月23日 「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための地方議員の会」発足
3月 7日 日本政府、北朝鮮へのコメ10万トン支援を決定
4月5〜7日 平壌で第9回日朝国交正常化交渉
6月13〜15日 平壌で韓国と北朝鮮との初の南北首脳会談
7月26日 バンコクで初の日朝外相会談
8月22〜24日 東京と千葉県木更津市で第10回日朝国交正常化交渉
9月 2日 韓国、日本人拉致犯の辛光洙・元服役囚ら北朝鮮の非転向長期囚6
      3人を北朝鮮へ送還
10月 6日 日本政府、北朝鮮へのコメ50万トンの追加支援を決定
10月20日 森喜朗首相、英国のブレア首相との会談で、3年前に与党訪朝団
       が第三国で発見させる方式を北朝鮮に提案したことを話し、この
       内容が発表される
10月23〜24日 オルブライト米国務長官が訪朝、金正日総書記と会談
10月30〜31日 北京で第11回日朝国交正常化交渉
【写真説明】
森喜朗首相に拉致疑惑への取り組みを求めるため、首相官邸に入る横田めぐみさんの両親=9月12日
第11回国交正常化交渉に臨む日本側(右)と北朝鮮の代表団=10月30日、北京の日本大使館(共同)
 
 
 
 
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