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産経新聞朝刊 1998年9月6日
主張 金正日国防委員長 厳しい監視と注文が必要
 
 北朝鮮の金正日総書記が国家主席に代わる最高ポスト「国防委員長」に就任した。金正日氏は父・金日成主席の死後、絶対権力は維持しながらも国家の最高ポスト就任は延ばしてきた。これで名実ともに朝鮮民主主義人民共和国−北朝鮮の最高権力者になった。公式に国家としての「顔」が整ったことで、国家運営が正常化に向けて踏み出すことを期待したい。
 北朝鮮の最大の問題点は、すべてに不透明ということに尽きる。「弾道ミサイルか人工衛星打ち上げか」で国際社会を騒がせている今回の一件もすべてが秘密裏に行われ、「人工衛星」の発表も四日後である。しかも「人工衛星」を誇示する一方で、国際社会には飢餓を宣伝し食糧援助を物乞いしている。「人工衛星の国でなぜ飢餓か」−われわれは北朝鮮という国のあり方に首を傾げざるをえない。
 この背景には外部世界を信じず自らを隠すという、共産主義国家の閉鎖的革命体質がある。絶えず敵から包囲されているとして内部緊張を高め、国民に耐乏と忠誠を強いながら権力体制を維持するという北朝鮮特有の「パルチザン(ゲリラ)国家」体質ということもできる。北朝鮮が対外関係を一切断ち、完全な鎖国国家としてアジアの片隅で静かに暮らすのならそれでもいいだろう。
 しかし現実には韓国に対しては過去、戦争を仕掛け、潜水艇や武装工作員を侵入させるなど挑発を繰り返し、海外では大韓航空機爆破事件をはじめ各種のテロを展開してきた。今回も、日本上空に事前通報もなく弾道ミサイルを発射している。
 また「自主」を看板に「われわれ式社会主義」の優位性を宣伝しながらも外には食糧支援を訴え、羅津・先鋒地域には経済特区を設けて諸外国の投資を期待している。これでは国際社会としてはやはり、北朝鮮に透明性を要求しないわけにはいかない。
 北朝鮮は弾道ミサイル発射に対する日本など国際社会の非難に対して「国家主権」を主張し、居直っている。その一方では日本人拉致疑惑や工作員侵入、旅券偽造、偽ドル事件など他国の主権侵害には知らん顔である。国家としての正常化とは国際的な常識を守ることでもある。
 北朝鮮のミサイル開発には、日本からの先端部品や資材が使われていることは今や公然の秘密だ。日本から北朝鮮への資金や物資の流れもこの際、改めてチェックする必要がある。北朝鮮を国際社会に引き出すために必要なのは援助ではなく、より厳しい監視と注文、要求である。
 
 
 
 
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