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読売新聞朝刊 2002年2月25日
社説 ブッシュ米大統領歴訪 日中韓との反テロ協力が課題だ
 
 ブッシュ米大統領が、十七日から、日本、韓国、中国を訪れる。米国は、昨年九月の同時テロ後、同盟関係にある日韓からはもちろん、中国からも反テロ戦争での協力をとりつけた。
 大統領が、就任後初の東アジア歴訪で取り組むのは、この協力関係を、どう発展させていくかという課題である。
 ブッシュ大統領は、先月の一般教書演説で、反テロ戦争の目標として、テロ組織の根絶とともに、大量破壊・殺傷兵器と弾道ミサイルの拡散阻止を掲げた。米大統領が、日中韓首脳との会談で、その拡散防止について具体化をどう進めるのか、注目したい。
 重要なのは、米国がイラク、イランと並ぶ「悪の枢軸」に位置づけた北朝鮮への対応だ。日中韓の、北朝鮮との関係には濃淡がある。北朝鮮の大量破壊兵器・弾道ミサイル問題の解決を図る上で、米国を軸とした政策調整が不可欠だ。
 日米韓は、九八年の北朝鮮によるテポドン・ミサイル発射後、北朝鮮の脅威除去を目指す政策調整協議を開始した。しかし、十分な効果は上がっていない。その強化を図る必要がある。
 米韓間には、別の問題もある。ブッシュ大統領は、「国民を飢えさせる指導者は信用できない」と、北朝鮮の金正日総書記への不信感を隠さない。南北首脳会談を実現し、太陽政策を基本とする金大中・韓国大統領の立場と齟齬(そご)がある。
 この違いが、足並みの乱れにつながってはなるまい。
 中国の協力も重要だ。北朝鮮の核開発疑惑の解消に不可欠な、国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れに、中国の役割は小さくない。
 対北朝鮮政策での調整作業を通じ、米国と日中韓が建設的な関係を深め、朝鮮半島の緊張緩和に努めるべきだ。
 同時テロ後、米国は四年ごとの国防計画見直し(QDR)の中で、アジア地域の米軍の前方展開強化の必要性を打ち出した。朝鮮半島情勢や、中国の軍事力増強など、今後の動向が不透明な要素が多いことがその根底にある。
 そのアジア重視戦略の要となるのが、日米同盟だ。東京での初の日米首脳会談は、同盟を一層強固にする機会だ。
 ブッシュ政権は、アジア地域の戦略的安定のためにも重要だとして、日本経済再生への強い期待感を表明している。日本の強い経済力が、アフガン復興支援を支え、アジア太平洋地域の安定に寄与しているとの判断があるからだろう。
 小泉首相がデフレ対策を早期に実行に移し、米国との信頼関係を深めることは日米安保の発展の上からも大切だ。
 
 
 
 
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