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読売新聞朝刊 2001年12月24日
社説 拉致問題 「北」の姿勢には筋も道理もない
 
 日本国民の神経を逆なでする不誠実極まりない態度だ。
 北朝鮮の朝鮮赤十字会が表明した「日本人『行方不明者』の消息調査全面中止」である。
 国際社会の健全な一員たろうとする姿勢が、まったく見えない。
 鹿児島県・奄美大島近海の日本の排他的経済水域内で行動していた不審船は北朝鮮の武装船の疑いが強まっている。そうであれば、なお一層、重大な疑念と不信を抱かざるをえない。
 日本政府の調査では、過去に北朝鮮によって、少なくとも七件十人の日本人が拉致(らち)された疑いが極めて濃厚だ。
 日本の国家主権の重大な侵害である。拉致された人はもとより、家族の心痛を思えば、深刻な人道問題でもある。
 北朝鮮が拉致を認めれば、他国の主権を侵害した無法者国家と、自ら認めることになる。日本側はやむなく、「行方不明者」として調査を求めてきた。
 朝鮮赤十字会は、「拉致は虚構」と強弁し、行方不明者は「北朝鮮内にはいないことが判明した」と言う。
 その上で、拉致問題解決の要求を「謀略的な拉致騒動」と決めつけ、これ以上、調査は出来ないと宣言している。
 筋も道理もない主張である。
 この時期に、こうした挙に出たのは、朝銀信用組合事件をめぐる在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)への強制捜査に対する反発がある、との見方もある。
 犯罪を摘発し、法手続きに従って厳正に処理するのは、法治国家として当然のことだ。それを「拉致」問題と結びつけるとしたら、筋違いもはなはだしい。
 北朝鮮の出方には、拉致問題を駆け引き材料にコメ支援の引き出しを狙った、揺さぶりの可能性もある。
 相手の手の内にはまって、侮られるようなことがあってはならない。
 米同時テロ後、北朝鮮の一時の積極外交は停滞し、米朝、南北の関係も手詰まり状況にある。「テロ支援国家」に指定し、厳しい態度で臨む米国に対する激しい非難にも、国際的な孤立を深めていることへのいらだちがうかがえる。
 九四年の核開発をめぐる朝鮮半島の緊張は、冷戦終結後に孤立感を募らせた北朝鮮の“瀬戸際政策”の結果だった。同じ行動に出ないとは断言できない。
 「よど号ハイジャック事件」の犯人を今もかくまっている北朝鮮は、日本から見ても、明らかにテロ支援国家だ。
 核開発疑惑やミサイルの開発、配備などが、地域の平和と安定を脅かしている状況にも、まったく変化はない。
 日本は、原則的立場を堅持し、毅然(きぜん)とした態度を貫かなければならない。
 
 
 
 
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