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読売新聞朝刊 2001年12月24日
不審船「北朝鮮」濃厚 対外強硬姿勢を反映? 「テロ支援国家」視に反発
 
 ◆対話門戸閉ざす
 【ソウル23日=河田卓司】東シナ海で沈没した不審船は二十三日、北朝鮮船である可能性が強まり、北朝鮮の「意図」が再びクローズアップされる事態となった。北朝鮮は九月の米同時テロ以降、対米・対南・対日批判を強めて自ら対話の門戸を閉ざし、先月末には南北非武装地帯(DMZ)で韓国側歩哨所に銃撃を加える事件も起こした。一連の動きは北朝鮮が当面は米韓日に強硬に対処していく方針に立ったことを示唆しており、朝鮮半島情勢は不透明感が強くなってきた。〈本文記事1面〉
 北朝鮮はブッシュ政権の登場後、対米関係が悪化。特に米テロ事件後は自国が「テロ支援国家」に指定されていることに強く反発し、「反テロ戦争拡大を追求する米国は不当な口実を突き付け、わが方に挑発を仕掛けている」などと非難を強めている。
 北朝鮮は韓国との関係では、韓国が米テロ後に警戒態勢を強化したのを「我々に対する挑発だ」と反発。十月に予定された南北離散家族の相互訪問を一方的に延期したほか、十一月の第六回南北閣僚級会談も事実上決裂し、南北対話の再開の見通しは見えない。
 日本との関係でも、自衛隊艦船のインド洋派遣を「アジア侵略戦争の銃を撃ちながら、犯罪的な過去を再現しようとしている」と非難。在日朝鮮人系金融機関の横領事件に対しても「在日朝鮮人への弾圧・迫害」などと反発している。
 北朝鮮は昨年六月の南北首脳会談後は欧州諸国とも次々に修好し、米国との関係改善を目指し融和路線を進めていた。しかし、ブッシュ米政権が朝鮮半島政策を見直して強い立場に立ったのを受け、対外政策の調整に入り、特に米テロ事件以降は米韓日を挑発しながら揺さぶる従来の強硬路線に戻った可能性が強い。
 北朝鮮はさらに今月八日には「米国の専横に対抗していた大国が、米国の指揮棒に従って右往左往している」と中国、ロシア批判とも受け取れる論説も出した。北朝鮮は来年二月には金正日総書記の六十歳記念、四月には故金日成主席の生誕九十年という重要行事が予定され、準備に入っている。ソウルの消息筋は「北朝鮮は国際的な逆風の中、当面は内部結束と重要行事の遂行を優先し、対外的には強硬な対応を続けていくだろう」と見ている。
 
 
 
 
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