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読売新聞朝刊 2000年10月13日
社説 米朝接近 地域の平和を保障する対話を
 
 米国と北朝鮮が、朝鮮戦争以来の敵対関係から脱皮して新たな関係を樹立しようとうたった共同コミュニケを発表した。コミュニケは、米大統領の訪朝を準備するため、オルブライト米国務長官が近く平壌を訪れると述べている。
 米大統領の訪朝が実現すれば、朝鮮半島にとって、六月の金大中・韓国大統領と金正日・朝鮮労働党総書記による南北首脳会談に続いての画期的な出来事となる。
 コミュニケは、金正日総書記の特使で軍制服組トップの趙明禄・国防委員会第一副委員長の訪米最終日に出された。
 任期切れを前に訪朝を決断したクリントン大統領の政治的思惑はそれとして、共同コミュニケの内容は、朝鮮半島の潮流が、敵対から和解へと大きく変化していることを改めて強く印象づけるものだ。
 朝鮮半島の平和定着につながる重要な動きとして、歓迎したい。今後必要なのは、朝鮮半島の軍事的緊張を緩和させるという具体的行動である。
 コミュニケは、ミサイル問題の解決が米朝関係改善やアジア太平洋地域の平和と安全に重要な寄与をするとした。当然の認識であり、ミサイル交渉の促進を通じて、北朝鮮のミサイル開発や輸出の放棄実現を図るべきだ。
 北朝鮮は、ミサイル協議が続く間、長距離ミサイルの発射はしないと約束したが、日本を射程に収める中距離ミサイル「ノドン」の配備も中止すべきである。
 南北首脳会談の共同宣言には、軍事的緊張緩和の方策は盛り込まれなかった。米朝コミュニケでは、北朝鮮はこの問題に取り組む姿勢を明確にした。米朝間だけでなく南北間でも安保対話を強化させていくことが肝心だ。
 コミュニケは、一九五三年の朝鮮休戦協定に代わる、堅固な平和を保障する新たな枠組みを作って朝鮮戦争を公式に終わらせるため、南北朝鮮と米中による四者協議を例示した。早期実現を求めたい。
 米国はこれまで一貫して、米朝関係の改善と引き換えに北朝鮮の大量破壊兵器やミサイル問題を話し合いで解決することを北朝鮮に求めてきた。
 これに対し北朝鮮は、米側のテロ支援国リストから自国を外すよう強く要求してきた。趙特使の訪米に先だち、米朝が発表したテロに関する共同声明の中で、北朝鮮はテロに全面的に反対する立場を表明し、今回のコミュニケでも再確認した。
 そうであるなら、北朝鮮は一九七〇年の日航機よど号ハイジャック事件の犯人である元赤軍派メンバーを日本に送還し、言葉を行動で裏付けねばならない。
 日本人拉致(らち)疑惑についても、解明を求める我が国に積極的に協力すべきだ。
 日朝国交正常化の第十一回交渉が今月三十日から北京で開かれる。日朝間の懸案の解決なしには交渉の進展は望めない。南北対話や米朝接近の動きに、「バスに乗り遅れるな」という議論もあるが、日本はあくまでも原則的立場を堅持すべきだ。
 
 
 
 
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