読売新聞朝刊 2000年9月25日
日韓首脳会談 北朝鮮支援思惑に相違 金大統領が経済協力要請
◆「国交が先決」冷めた目/日本 「日本取り込み」不可欠/韓国
二十四日の日韓首脳会談で、韓国の金大中大統領が北朝鮮への大型の経済支援について日本の協力を要請したのは、朝鮮半島の平和と安定のためには北朝鮮の経済回復が必要で、そのためには日本はじめ国際社会の協力が欠かせないという大統領の基本認識を反映したものだ。大統領が就任以来進めてきた、北朝鮮に対する「太陽政策」に日本側も関与させたいとの狙いがある。(本文記事1面)
大統領は、三月にベルリンで、北朝鮮に対して交通・電力などの社会資本(インフラ)整備など大型の経済支援を表明した。これが六月の南北首脳会談の実現に結びつき、南北共同宣言で「南北の経済協力を通じて、民族経済を均衡発展させる」とうたった。
韓国側関係者は、「日本の協力を求める大統領の発言は、こうした基本方針を首脳レベルでも対外的にはっきりと宣言したものだ」と説明したが、同時に「首脳会談でここまで北朝鮮のインフラ整備を率直に求めるとはやや意外」と驚きも隠さなかった。
一方の日本政府は、経済協力は日朝間の国交が正常化しなければできないとしている。「韓国の言う経済支援とはまさに北朝鮮の『国造り』。日本ではコメ支援を十万トン増やすだけでも反発が強い。支援といってもレベルが違い容易ではない」(外務省幹部)というわけだ。森首相が、国交正常化の大きな障害である北朝鮮の軍事力の脅威にも触れて、大統領に理解を求めたのは、日本側の世論の厳しさを伝えたかったためだ。
日本政府は、今回の会談も踏まえ、十月中旬に予定している日朝国交正常化交渉への準備を急ぐ。同交渉では、経済協力問題が焦点となるが、朝鮮半島側の熱気とは裏腹に日本側には冷たい空気が漂っているのが現状だ。
写真=熱海梅園を散策しながら談笑する森首相(右)と金大中韓国大統領(24日午前)=代表撮影
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