読売新聞朝刊 1999年2月18日
北朝鮮、軍事路線強める 防衛研が年次報告 「金正日体制は安定」
防衛庁の研究教育機関である防衛研究所は十七日、朝鮮半島や中国など東アジア地域の軍事情勢を分析した年次報告書「東アジア戦略概観一九九八―一九九九」を発表した。昨年八月に弾道ミサイル「テポドン一号」を発射した北朝鮮をめぐる情勢について、強い懸念を表明している。同時に、金正日総書記体制については、軍事路線を強めていると指摘したうえで、「軍人や(朝鮮労働党の)党幹部らの構成は、金日成(主席)の死後もほぼ変化がなく、金正日体制は安定している」との見方を示している。
北朝鮮情勢を懸念する理由として、「ミサイル開発が北東アジアだけでなく、その拡散を通じて、国際社会全体に不安定をもたらす要因になる」と指摘。さらに、テポドン発射の狙いについては、〈1〉金正日体制の威信の誇示〈2〉ミサイル開発能力を誇示し、米国などとの外交交渉力の強化〈3〉ミサイル輸出による外貨の獲得――などを挙げている。
ただ、報告書は、北朝鮮が外交的には成功していないことに加え、北朝鮮に対する米議会や日本政府など外国からの反発を指摘し、今後、「北朝鮮が一層の孤立化を招く公算が高い」と予測している。
一方、金総書記が国家主席に就任しなかったことに関しては、「自らの責任を回避しえる制度をつくり上げた面も否定できない」との見方を示した。
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