読売新聞夕刊 1998年9月1日
北朝鮮ミサイル「テポドン1号」日本本土越え 米軍事衛星がキャッチ
◆発射撮影・弾道計算 着弾点割り出す
日本列島の上空を越えて太平洋に着弾したとされる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイルについて、米軍がミサイルの発射時から数十秒間にわたって軍事偵察衛星で撮影することに成功、その画像などを基にミサイルの弾道を解析していたことが一日までに、日米軍事関係筋の情報で明らかになった。解析によって青森県沖の着弾地点などをはじき出し、この情報が日本や韓国などにもたらされたとみられる。(関連記事2面)
着弾地点に関する計算値では「青森県・三沢基地の北東五百八十キロ」「北緯40度11分、東経147度50分」とみられるが、防衛庁では誤差もあるとみて艦船、航空機を出して着弾地点の特定を急いでいる。
関係筋によると、在日および在韓米軍は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する可能性があるとの情報を得た八月中旬以降、電子偵察機RC135などを朝鮮半島周辺に飛ばすなど、北朝鮮軍部の行動監視を強めていた。
この結果、朝鮮半島周辺を監視する米軍の軍事偵察衛星が、ミサイル発射直後から数十秒間にわたって北朝鮮東部沿岸でのミサイルの発射時の模様を捕らえた。新型ミサイルの基地は「大浦洞(テポドン)」とされるが、今回発射されたのは北朝鮮東海岸に置かれた可動式の発射台とみられ、米軍で、撮影した画像からミサイルの発射速度や推進力などの数値を分析、すでに蓄積している様々なミサイルの弾道データなどとの照合を進め、着弾地点を割り出していた。
防衛庁側は実際の着弾場所は確認していないため「三陸東方数百キロの海域」としか発表していないが、同じ情報を受け取った韓国側では、弾道計算に基づき、「三沢基地の北東約五百八十キロの太平洋上」との見方を明らかにしていた。
関係筋によると、今回発射された弾道ミサイルには、ミサイルの速度や上昇角度、航跡などの飛行状況を、北朝鮮の発射基地に伝えるための計器(テレメーター)が弾頭に積載されていた。
テレメーターは発射後、数分間にわたって電波信号を送り続けるため、警戒飛行中の米軍機などがこの電波を傍受することにも成功していた。
テレメーターは、弾道ミサイルを飛ばした時に、飛行状況に関する基礎的なデータを地上で収集するために必要な計器。ミサイルの発射実験などで弾頭に搭載されることが多く、防衛庁では、「今回のミサイル発射が、実験または試射であることを裏付けている」とみている。
図=北朝鮮ミサイルの射程と日本
写真=ミサイルが着弾した現場海域を捜索する巡視船「だいおう」(午前10時24分、三陸沖約500キロで=本社機から横山聡撮影)
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