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毎日新聞朝刊 1998年10月27日
社説 朝鮮半島 4者会談の常設化を図れ
 
 朝鮮半島の恒久的な平和体制作りを目指す朝鮮問題4者会談が、ようやく前進した。ジュネーブで24日まで行われた会談で、二つの分科会の設置が決まった。4カ国による初の合意である。
 4者会談の本会談は、今回で3回目である。これまで議題や分科会問題で対立が続いた。今回は「平和体制構築」と「緊張緩和」の二つの分科会の設置で合意した。議題については、合意に達しなかった。
 4者会談に対する当事国の思惑は、同床異夢の状態にある。会談は、1996年に米韓首脳によって共同提案された。
 当時の韓国は、韓国を置き去りにしたまま、米国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の関係が一挙に進むことを心配した。韓国の意向を無視して、米国が米朝平和協定や関係改善を進めると懸念したのだった。そのため、韓国は米国の行き過ぎを抑える場として4者会談を利用しようとした。
 一方、米国は北朝鮮との対話の窓口を維持し、核開発の凍結を継続させ、やがて中断させるために意味があると考えた。また、韓国の反発を和らげ、中国との外交協力の実績を作ることができると計算した。
 中国は、朝鮮問題に本格的にかかわれる当事者としての立場を国際的に認められたことに満足した。朝鮮問題への発言権が増すからだ。
 北朝鮮は、米国との二国間交渉が最終的な目的であり、米朝平和協定を締結し、米朝正常化を図りたいと考えている。その環境作りと、米国からの食糧支援獲得のためには、4者会談参加が必要だといわれ応じたのである。
 つまり、北朝鮮の目的は米朝平和協定の締結であり、他の当事国は4者会談が開催され、北朝鮮が参加していることに意義があると考えているわけだ。
 二つの分科会設置の合意は、大きな成果である。平和協定締結実現のための問題を整理し、道筋を確認できるからだ。「緊張緩和」分科会で、信頼醸成のための具体的な措置が生み出されることを期待したい。
 4者会談の議題に、在韓米軍撤退を取り上げるよう、北朝鮮はなお主張している。米韓両国は、全般的な意見交換には応じても交渉の議題にはしたくない立場といわれる。それだけに、前途はまだまだ多難だ。
 しかし、朝鮮半島をいつまでも「休戦体制」や「冷戦継続」状態に放置してはならない。ポスト冷戦時代に対応し、恒久的な平和をもたらす体制に早く切り替えるべきだ。
 北朝鮮とクリントン政権は、必ずしも多くの時間が残されていない現実を理解すべきである。米議会は、北朝鮮に譲歩を続ける米国務省に厳しい態度を示し、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)による重油供給にも多くの条件を付けた。
 再来年の米大統領選の結果しだいでは、米朝関係はさらに厳しくなるかもしれない。危機的な状況を回避するためには、米朝基本合意の誠実な履行が必要だ。不必要な不信の念を米国に抱かせてはならない。
 さらに、4者会談をはじめとする対話を時間を置かずに継続することが大切である。来年1月の再開では遅すぎる。もっと頻繁な会談が求められる。毎月の開催を目指すなど4者会談の常設化を図るべきだ。
 
 
 
 
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