毎日新聞朝刊 1997年12月10日
社説 軽水炉費用 南北朝鮮と米国に求める
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に軽水炉原発を建設する朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の大使級会議が8日、ニューヨークで開かれた。今回の会議からは、軽水炉建設費用の各国の分担問題について話し合う。
軽水炉原発の経費の見積もりは、先月25日に行われたKEDOの大使級会議で、総額51億7850万ドル(約6732億円)で確定した。だが、この見積もりは当初の予想をはるかに超えるものになってしまった。
北朝鮮への軽水炉原発建設は、1994年10月の米朝基本合意で決まった。北朝鮮が、核施設を凍結・廃棄する代わりに、100万キロワットの原子力発電所2基を建設することになった。
また、発電所が完成するまで代替エネルギーとして、北朝鮮へ毎年50万トンの重油を供給する約束も、実施に移されている。
米朝基本合意に関連して、日本と韓国が軽水炉原発の建設費用を拠出し、米国は重油の代金を負担することになった。これは、米議会が軽水炉資金拠出を認めないことから、原発本体の建設については日本と韓国が負担に応じたわけだ。
軽水炉の建設費用の分担などでは、これまで各国ともに具体的な約束を避けてきた。その代わり、韓国が「中心的な役割」を明言し、日本は「意味のある役割」を約束し、米国は「象徴的役割」を果たすという抽象的な表現にとどめてきた。
各国がこうした約束を表明した時点では、建設費の総額は40億ドル程度だろうと、推測されていた。このため、韓国が30億ドル負担し、日本が10億ドルを拠出するなどの期待が、語られていた。
ところが、確定した見積もりは予想をはるかにオーバーしてしまったのである。そのうえ、韓国は金融危機に陥り、ウォンの為替レートが急落した。この結果、韓国の負担が大きくなってしまった。
これについて、韓国政府は「金融危機と軽水炉原発支援は関係ない」との立場を表明し、約束通りの負担を改めて確認している。関係国の間では、韓国が資金の約70%を負担し、日本はおよそ20%、米国と欧州諸国が10%を負担するという構想も出ている。
しかし、パーセンテージで負担が決まると、経費が見積もりをさらにオーバーした場合には、自動的に負担が増えることになる。日本としては、できればこうした事態は避けたいところだ。
日本が、国際的な約束を履行するのは、当然である。また、隣国の非核化を進めるためにも、積極的に貢献すべきであろう。だが、そのためには南北の当事者が、米朝合意で約束された朝鮮半島の非核化を実現し、南北対話を具体的に進展させてくれなくては困る。
日米両政府は、南北の当事者にこの点を繰り返し要求すべきである。また、朝鮮半島の非核化などに合意した南北朝鮮の「合意書」の活性化も強く求めてほしい。
同時に、米国には軽水炉原発建設の資金分担にも応じるよう促したい。軽水炉原発建設は、米国が推進する核拡散防止条約(NPT)体制維持にとって、きわめて大きな意味がある。そうである以上、米国としても負担の増加に応じるのは当然であろう。
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