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毎日新聞夕刊 1990年9月25日
金丸氏、北朝鮮に直接謝罪 自社代表団歓迎レセプション
 
 ◇「耐え難い苦痛と障害もたらし心より反省」
 【平壌二十四日井上義久、与良正男特派員】初の直行便で二十四日午後、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪れた自民党の金丸元副総理と社会党の田辺副委員長を団長とする「自民、社会両党合同代表団」に対する朝鮮労働党主催の歓迎レセプションが同日夜、平壌市内の玉流館で開かれた。金丸氏はあいさつの中で「今世紀の一時期、わが国の行為により貴国の方々に耐え難い苦痛と障害をもたらしたことに対して心より反省し謝罪する」と述べ、過去の植民地支配に対する謝罪の意を表明。金丸氏のあいさつの前に歓迎のあいさつに立った朝鮮労働党の金容淳書記(国際部長)は日朝関係改善に向けた両党代表団の意義を高く評価する一方、「二つの朝鮮の存在を国際的に合法化し、朝鮮の分断を固定化することは決して許されない」と述べ、近く予想される韓国とソ連の国交正常化や南北クロス承認の動きを強く批判した。(2面に関連記事)
 朝鮮半島への謝罪に関しては昨年三月三十日の衆院予算委で竹下首相(当時)が、過去のわが国の行為がとりわけ朝鮮半島のすべての人々に苦痛と損害を与えたとして「深い反省と遺憾の意」を表明。今年五月来日した盧泰愚(ノ・テウ)韓国大統領に対し海部首相が「過去の一時期、朝鮮半島の方々がわが国の行為により耐え難い苦しみと悲しみを体験されたことについて謙虚に反省し、率直におわびの気持ちを申し述べたい」と謝罪している。今回の金丸氏の謝罪は、これまでと基本的には同じ内容だが「貴国の方々に対して」と、より直接的な表現となった。
 あいさつの中で金書記は今回の両党代表団を「朝日関係改善に新たな出発点になる」と評価、日朝両国が自主、平等、互恵の原則に立ち、善隣関係を発展させるよう期待を表明した。
 また南北統一問題について「二つの朝鮮」への動きを厳しく批判したうえ「分裂した人民が統一するのは、一つの時代的すう勢だ」と述べ、北朝鮮の掲げる自主、平和統一、民族大団結の三大原則による南北統一の実現を強調した。
 続いて金丸氏は今回の訪朝の目的について「隣国同士が新しい出発点に立ち窓を開け、笑顔で話し合い、友好的に関係改善を図ることだ」と強調。双方が意思疎通を進めることで「暗く長い夜の後、日朝関係の新しい朝を迎えることができると確信している」と表明した。
 また金丸氏は「朝鮮労働党と社会党が両国の友好関係発展のために努力し、その成果の積み上げが今日ある」として、今回の訪朝にあたっての社会党の努力をたたえた。最後は「日朝両国間の友好関係の前進と誠信の交わり。この第一歩を願って」との乾杯の音頭で締めくくった。
 この後、あいさつに立った田辺氏は日朝関係が断絶していた四十五年間を「歴史の空白」と指摘したうえで、今回の訪朝で「三党が両国民の和解への大義に立って誠実、真しな努力を積み上げるなら、その空白を埋めることは十分に可能だ」と強調した。
 
 
 
 
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