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毎日新聞朝刊 1988年1月16日
北朝鮮への制裁検討
五輪成功に最大限協力
 
 政府は十五日、韓国政府が大韓航空機墜落事件を朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)工作員の犯行と断定したことを重視し、場合によっては第三国における北朝鮮外交官との接触禁止や、渡航の制限などを含む“制裁措置”をとることも検討することにしている。また中ソ両国など社会主義諸国がソウル・オリンピックヘの参加を決めたことに関連して外務省筋は「オリンピックを成功させること自体、朝鮮半島の緊張をこれ以上激化させないための抑止力になる」と述べ、オリンピックの成功に向け日本としても最大限の努力を続ける一方、テロの再発防止へ向けて、日韓両国の実務者による「日韓共同委貝会」を設置する意向を明らかにした。
 同筋はさらに「蜂谷真由美」と名乗る女性が北朝鮮国籍と判明し、人物も特定されたことから、今後は旅券法違反など、日本の国内法に触れる問題について、韓国捜査当局の協力を得たいとしている。
 日本政府はラングーン・テロ事件(一九八三年十月)でも、ビルマ政府が「北朝鮮の指示による犯行」と断定したことを受け、北朝鮮に対して(1)外交官同士の接触禁止(2)国家公務員の渡航停止(3)北朝鮮公務員の入国停止(4)民間人の入国審査の厳格化――の四項目の制裁措置を約一年間にわたりとっている。
 最終的には竹下首相の帰国を待ち、米国などの動向もみながら判断することにしているが、これが実施された場合には「第18富士山丸」船長らの帰国をめぐって、非公式とはいえ日朝間で続けられてきた外交官同士による交渉にも影響が出ることは避けられないとみられる。
 外務省筋によれば、今回の捜査結果は、公表される前に、外交ルートを通じて日本に伝えられた。問題は北朝鮮の対応だが、北朝鮮が沈黙を守っていることから、日本としても当面は北朝鮮の出方を見守りたいとしている。
 しかし、テロ防止のための国際協力を強める方針だ。
 とくに、ソウル・オリンピックの場合、日本を経由して韓国入りする航空ルートが多いことから、既に政府部内では捜査当局、外務、運輸など関係省庁による協議が非公式に始まっているといわれる。
 
 
 
 
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