1.一時保育
平成3年より長崎市の委託を受け、一時的保育事業を開始し、平成10年4月より自主事業になっています。
実施状況
実施当初より、非定型的一時保育、緊急的一時保育に分かれ、平成10年より私的理由による保育が加わっています。
[1]非定型的一時保育…保護者の短時間・継続的勤務、職業訓練、就学等により、原則として平均週3日程度家庭における育児が困難となり保育が必要となる児童。
[2]緊急的一時保育…保護者の傷病、災害・事故、出産、看護・介護、冠婚葬祭等社会的にやむを得ない理由により緊急・一時的に家庭における育児が困難となり保育が必要となる児童。
[3]私的理由による一時保育…保護者の育児等に伴う心理的・肉体的負担を解消する等の私的理由により一時的に保育が必要となる児童。また、障害児や児童数の減少した地域の児童を体験的に入所させ集団保育をするため等により保育を必要とする児童。
以上のような理由で受け入れています。
〈平成3年度〜平成5年度〉
平成3年当初、受け入れるにあたり
・一時保育専用の保育室を設ける
・担当保育者一人と補助に職員が交代でつく
・保育時間は特別な場合をのぞき午前8:30〜午後5:00までとする
・外遊びなども取り入れ楽しく過ごさせる
など考え始めてみましたが、数か月たった頃、問題点が出てきました。
問題点
・一時保育で来るたび泣き、慣れるのに時間がかかる
・緊急保育で一日だけ預かる子は、給食も食べず、昼寝しない子が多い
・年齢も3歳児以下の子が多い
・一日利用人数が7〜8人になり、担当者と補助の手伝いだけでは目が届かない
何度か話し合いを重ね、
という結論を出しました。しかし、その子に合ったクラスに入れたのはいいが、再度、問題点が出てきました。
再度問題点
・一時保育の子どもに保育者が一人かかってしまう
・年齢が低いクラスでは、他の子もつられて泣いてしまう
・一日に一クラスに3〜4人預かることもあり大変
・計画した保育ができない
この頃の子ども、利用する親の反応
・非定型で預かる子は月をおうたび少しずつ慣れ、笑顔も出て遊び出したりする
・家で食欲が増し、よく食べるようになった
・祖父母は、遠くに住んでいて、そばでだれも助けてくれる人がいないので本当に助かった
・認可された園で慣れた保育者がいるので安心して預けられる
など聞かれるようになりました。しかし、職員の中では、一時保育は大変という思いがほとんどだったように思います。
職員の意識改革
・保育園にとってなぜ一時保育が必要か
・子どもの気持ちはどうなのか
・親の気持ちはどうなのか
職員会議で何度も話し合い、たどりついたのが児童憲章にかかげてある
「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」「児童は、よい環境の中で育てられる」という点でした。また前園長、前主任の熱心な保育観にもうたれ、職員の一時保育に対する考えが前向きに変わりました。
この時期が、子どもたち、職員にとって一番大変だったように思います。
平成6年からは、利用者数も毎年増え、平成8年度から、年間延べ人数で1,000人を越えるようになってきました。非定型保育児が毎月10人前後、ほとんどの子どもが12日間利用し、緊急保育も月5〜6人利用するようになりました。
平成9年度からは、長崎大学へ留学している学生の子どもたちも多く利用がありました。
職員体制
職員の意識も徐々に変わり、一時保育の子どもたちを受け入れ、保育することが自然になり始めました。クラスに一日6〜7人受け入れる時は、隣のクラスの保育者が手伝ったりと、今まで以上に協力体制ができてきました。
保護者
特に非定型利用の保護者から、運動会などの行事も参加したいとの要望もあり、運動会、遠足、誕生会など園の行事へ参加する機会も増やしました。
連絡ノートを作り、その日の様子を綴ったり、クラスだより、献立表を配布したことで、安心し大変喜ばれました。
子どもの様子
緊急保育で1〜2日受け入れた子は泣いて過ごす子がほとんどでしたが、緊急保育でも出産のため12日間続けて来た子は、やはり保育者の意識が変ったからか、楽しく遊ぶ姿も見られるようになりました。
非定型保育で受け入れる子は、運動会へ泣かずに参加したり、午睡も他の子と変らずできるようになってきました。
平成10年度より自主運営となり一時保育料を変更することになりました。
・0歳児、1歳児 2,500円
・2歳児、3歳児 2,000円
・4歳児、5歳児 1,500円
給食代、おやつ代を含んだ金額です。
平成10年4月当初は、一時保育料が上がったことで利用しづらいとの声も聞かれましたが、一時保育の利用が減ることはありませんでした。
利用理由の変化
平成10年度になると一時保育利用理由に変化が出てきました。平成5年から実施してる子育て支援事業の中の出張保育・親子で遊ぼう会へ参加する子どもたちの中に、落ち着きがなかったり、目が合わず一人遊びが多いなど気になる子どもが遊びに来るようになり、保育園の子どもたちと遊びながら集団の中で育てたほうがいいのではないかとの、子育て支援担当者からの相談のもと、親もそうしたいということで、週2〜3回受け入れることも出てきました。
また、転勤し、なかなかなじめず、子育ての仕方がわからない、ノイローゼ気味との相談で、お母さんが通院するため週3回受け入れるケースも出てきました。
どちらの事例も子どもたちが保育園に慣れ、落ち着き、遊べるようになると、お母さんもほっとしたのか、子どもをずっと保育園に通わせ、同じ年齢の子どもたちと遊ばせたいと仕事を探し、週3回就労の理由に変わり一時保育を利用しています。
また、長崎大学の留学生の子どもたちも積極的に受け入れるようになり、保育士も子どもたちが良く使う母国語を習い、中国語・韓国語で話しかけることもあります。
受け入れ理由も変化があるように、一時保育の問い合わせも毎日2〜3件きています。しかし定員の2.5割増で在園児がいる現状では、お断りすることもたびたびです。