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(3)一時保育
 一時保育を始めるきっかけとなったのは、入所できない子ども達を一時保育でお預かりすることから始まりました。入所したいけれど定員いっぱいで入れない子ども達の利用でした。自主事業として平成11年4月から開始しました。
 
経過と現状
[1] 実施状況
 平成11年度から、現在までの実施数を表にしてみました(別添参照)。
 表のとおり、登録人数も利用人数もあまり大きな変化はありません。平成11年度の登録数の半数の子ども達は、何か月かの利用の後、入園してきています。平成12年度は、非定型で利用する子ども達が主になっています。週2回の仕事の時、近所に子どもがいないための利用や、幼稚園の子どもの長期休みの利用などです。当園の一時保育は、誰でも受け入れではなく、市役所や保護者の紹介のあった方のみ利用していただいています。というのも、在園している子ども達を一番大切に考えて、その子ども達と職員に負担がかからないように考えてのことです。しかし、他で困っている人達にも私達の力量に見合う範囲で手を差し伸べてあげられたらとの思いでした。
 
[2] 職員の体制・協力
 一時保育については、各年によって、利用年齢が異なるため、それぞれの年で、担当する保育士と共に話し合い、利用が多いクラスに保育士を配置し、対応しています。フリーでいる保育士が入り、役割に関してはそのクラスの保育士に任せて協力体制を作っています。
 
[3] 保育の実際
 一時保育の受け入れについては、入所している子ども達の中に入れ、一緒に一般保育室で保育するようにしました。年齢も同年齢のクラスに入れ、関わりをもたせるようにしていきました。
 まず、事前に電話で連絡をしていただき、一度来園してもらいます。そして、利用申込書を提出してもらいます(別紙参照)。この時に「ここなら、安心して預けられる」という信頼感を持っていただけるように、お預かりするのに必要な情報をお聞きすることを大切に考えています。お互いに無理のないようにしていきます。
 こんな事例がありました。ある日、2歳のT君がお母さんと来園してきました。とてもアレルギーがひどく、身体じゅう掻き傷だらけです。母親はというと、子どもの食事作りに疲れ、どのようにすればいいのかわからず、パニック状態でした。一時お預かりし、アレルギーの食事作りからしばらく解放してあげるよう心がけました。園では10年以上も前から、アレルギーの対応食は実施していましたので、何の問題もなく受け入れることができました。受け入れ時のT君も不安感が強く、消極的なおとなしい子でした。週2回くらいの利用でしたが、登園する度に母親の大変さに共感し、話を聞くことに専念しました。そうしていく内に母親も落ちつきを取り戻し始め、食事作りにもいらいらすることがなくなってきました。どのようなものを作ればいいかなど、栄養士に聞くようになってきました。T君については、情緒を安定させるために、保育士も1対1で接する時間を多く持ち、信頼関係をとるよう心がけていきました。そうすると、明るい笑顔が出てくるようになり、友達と遊べるようになってきました。母親からは、「あのまま子どもと2人で閉じこもっていたら、どうしていいかわからず、ノイローゼになっていたかもしれない。本当に助かりました」とおっしゃっていただきました。
 この事例のように、子どもと少しの間離れることにより、母親自身が自分を取り戻し、少しでも子育てをがんばれるように手助けをさせていただければとてもうれしく思います。
 
[4] 担当保育士の反応・意見
 初めは、一般入所の子どもと一時保育の子どもを同じ保育室で保育することに戸惑いがありました。しかし、心配したのは保育士だけで、一般入所の子ども達はとても自然に上手に受け入れてくれました。そんな子ども達に教えてもらいながら、信頼関係をつくるのに時間がかかり、難しい面もありますが、保護者の方に安心していただけるようがんばっています。回を重ねるごとに、子ども達にも変化がみられ始め、うれしそうに登園してくるようになってきます。すると、親も安心して確実に利用回数が増えています。一般保育室に入れていますので、一時の子どもが登園する日は、人数により複数担任間やフリー保育士の間で役割分担の話し合いが欠かせない重要な事項になっています。その他のクラスの保育士の協力や連帯もとても大切にしています。
(保育士 森本こずえ)
 
 0歳児の一時保育については、お預かりする時の面接がとても重要になってきます。担当する保育士がしっかりとお話を伺うようにしています。それぞれの生活リズムが早く規則正しいものになるように心がけています。
(保育士 井出裕子)








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