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(2)延長保育
 延長保育を始めたきっかけは、平成7年頃からぼつぼつ仕事で遅くなる親が出てくるようになりました。核家族化し、近くに祖父母もいなくて見てくれる人がいない家庭がだんだんと増加してくるようになりました。その上、保護者が遅くなる時にかけてくる電話の申し訳なさそうな声に、安心して仕事ができるように預かってあげようと、平成9年4月より延長保育を7時まで実施するようになりました。
 
経過と現状
[1] 実施状況
 平成9年度より現在までの実施数を表にまとめてみました(別添参照)。
 表のとおり、この5年の間の午後6時30分時点での実施人数(月延人数)です。利用申込の人数はあまり変化がありませんが、利用する時間に変化がみられるようになりました。平成9年頃には、遅くとも7時あるいは7時を少し回る程度でしたが、平成10年には午後7時30分までの利用が多くなり、平成11年には午後8時までになることが多々ありました。そこで延長保育が自主事業になった平成11年から、午後8時まで延長するようになりました。今年度に至っては、午後8時までの登録人数は9人になっています。一般保育児についても、延長保育を申し込んではいませんが、たまに仕事や家庭の事情で遅くなるときは延長保育を受けています。1時間の利用料はかかりますが、利用している保護者には二重預けやお迎えを他人に依頼したりなどの心配がなくなったと喜ばれています。
 午後8時までの利用者の職種は主に美容師、看護婦、大手スーパーに勤務などととなっています。
 
[2] 職員の体制・協力
 延長保育を実施するにあたって、1名は延長専門のパート保育士、他に2名は常勤の保育士がローテーションを組み、保育に当たっています。
 一時・延長保育担当の時は午前10時30分に出勤していたところ、保育士より「10時半に出勤したのでは、午前中の子ども達のクラスの様子がわかりにくいので、9時に出勤させてください。延長保育については、超過勤務手当で対応してください」との申し出がありました。子ども達を一番に考えてくれる保育士達に感謝の気持ちでいっぱいです。
 
[3] 保育の実際
 通常、クラス保育から居残り保育へは午後5時に移行し、1歳児以上は混合保育になります。その後、午後6時にそのままの保育室で延長保育に入ります。0歳児については6時までクラスで保育し、午後6時に大きい子ども達と一緒になります。担当の保育士が人数と連絡事項の確認を行います。その後延長の子ども達と一般保育児の延長利用の子ども達でおやつになります。延長のおやつは夕食の中の一品という考え方のもとに、ほとんどが栄養士の手作りになっています。午後8時まで残る子ども達もいますので、平成9年1月より夕食サービスを始めました。栄養士2名が時差出勤で、夕食の準備をしています。夕食の子どもとおやつの子どもと一緒に仲良くいただいています。
 一般保育児の急な延長利用にも対応できるように配慮しています。みんなで楽しくおやつをいただいた後は、お迎えまで、それぞれ好きな遊びを保育士とします。年齢幅がありますので、それぞれ年齢に応じた遊びだったり、一緒に遊んだりと、その日その日の担当保育士と子ども達とで保育の内容が決まっていくようです。
 この時に、園として留意している点があります。それは、「プロの保育士なら、子ども達にさびしい思いを決してさせないで」ということです。よく「一人になったら子どもがかわいそうだから、お母さん、早く迎えにきてあげて下さいね」という保育士の言葉を耳にしますが、それはおかしいと……。プロであるなら、たとえ子どもが一人になっても、いえ一人になった時こそ、子どもの笑顔を親に見せてあげてほしいと思っています。キャッキャッと楽しそうに笑っていたり、保育士のひざでゆったりと過ごしている我が子を見せてあげてほしいのです。そして、「お母さん、今日はこんなに楽しかったんだよ」と子どもの口からお母さんに告げられるようになり、「お母さん、子どもさんは大丈夫ですよ。こんなに楽しく私達と遊んでいますよ」と親も子もあたたかい心で包み込むような対応がしてあげられるのがプロの保育士だと思っています。いくら子育てが苦手な親でも、仕事の方が好きな親でも、遅くなって、我が子のことが気にならない親はいないと思っています。
 
[4] 担当保育士の反応・意見
 延長保育をするようになって、お母さん方の手間を省くことにより、子ども達への接し方がゆとりのあるものになっていると思っていますが、そのゆとりができた分、子ども達への時間として、有意義に使われていると信じています。また、お迎えを待っている子ども達にさびしい思いを持たせないような遊びや活動を用意し、楽しい時間に変えていってあげたいと思っています。しかし、長時間保育園にいることは事実ですので、子ども達の心身の疲労を忘れてはいけないと思っています。そのためにも、園全体の子ども達を保育士が把握していかなければいけないと思いますし、保育士同士の信頼と連携を常に心にとめ、日頃の保育を行うことが必要だと感じています。
(保育士 渡部幸恵)
 
[5] 実施上の課題
 最近になって延長保育をしている子どもの中に、「先生、今日、ぼく、おやつだよ」ととてもうれしそうに言う子がいます。何か特別なことのように楽しんでいる子どももでてきました。保育園が楽しいところでなくてはいけないけれども、決して、家庭より保育園がいいところになってしまってはいけないと思い、親に対して子どもへの接し方、子育ての楽しみ方などをお話していかなければいけないと思っています。それに、子どもと接する時間が短くなっていくことに対して、接する量より質で勝負していくように親に働きかける必要もあると痛感しています。








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