日本財団 図書館


さらなる子育て支援をめざして
 先に交付された少子化対策特別交付金の一部を当てて、栃尾市では、平成12年度に、「子育てに関する公開井戸端会議」と銘打って、シンポジウムを開きました。幼児にかかわりのある人、小学校の教師、父親、母親がシンポジストになり、フロアとも充分な交流を図りましたので、とても中身の濃い井戸端会議ができました。今どきの父母や、祖父母の考えていることが、お互いに少しわかったような気持ちになりました。少なくとも、このシンポジウムに参加した人たちは、前向きに子育てに取り組んでいる人たちだと思いました。核家族の人たちは、地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちから「パワー」をもらって、若い両親は楽しい子育てをいたしましょう。祖父母も孫と接するときは、ひと呼吸おいてから接すると良い関係築けますよ……等、とても良い言葉が出てまいりました。そして、子育てという共通のことを話し合える仲間に出会った、そのことが大きな財産になったと、喜びを確認しあっていました。その一方、13年度から始まった苦情解決の問題などに敏感に反応する人たちでもあります。
 前にも記しましたが、人口26,000人の栃尾市の子育て事情も、変化しながら経緯しております。シンポジストの1人が、我が子の保育園時代の延長保育のことに関して話をされたのが印象的でした。「共働きで、核家族の自分たちが3人の子どもたちを育ててこれたのは、[1]夫の協力、[2]保育園の延長保育(芳香稚草園のこと)、[3]親戚(親、兄弟)の3点を示し、延長保育(早朝保育)を受けることは、子どもが一番我慢していると思うが、親としては、淋しい思いをさせているとばかりは思いませんでした。子どもは上記の3点から、多くのものを学んだと思っています。今は中学1年生、小学校4年生、1年生になり大きく成長した3人の子どもたちを見て充実感すら感じております。子どもは育てるものだとしみじみ思いました」この母親の話を聞いたとき、私も大きくうなずいたのでした。
 延長保育や一時保育を実施することは、そこに勤務する職員の体制がきちんとスムーズにいかないとできません。幸いにも、当保育園は50年〜60年間も延長保育を実施してまいりました。職員はいつも前向きの気持ちを持って、体制を整えて実施に移しております。そのために大変スムーズに動いておりますことはありがたいことです。昨日も保護者の1人から「この保育園の保育士さんは、よく身体を動かしていますねー、活気があって、保育園の中がリズムにのって動いているような感じですね」という言葉を頂きました。こんなうれしいことはありません。この言葉を大切に頂戴して、保育士たちも励みにして、更にキメ細かな、活気のある保育ができるように努力してもらいたいと思います。
 これからの保育園運営は、今までと違うスピードで動いていくことは必至です。苦情解決や第三者評価、更には民間企業の参入などの問題で、随分変わってまいりましたが、保育の原点は、やはり子どもたちの健全な育ちに親と共にかかわっていくこと(家庭保育の補完)であると思います。
 一時保育で、当保育園で4〜5回保育を受けたことのあるMちゃん(1歳7か月)が、園児として入園したいという連絡が入りました。この例のように、お互いの信頼関係ができて、受け入れができるのはうれしいことであります。
 当保育園では、保育目標をわかりやすい言葉にいたしました。
     「もっと素直になれたらいいな」
     「もっと感謝ができたらいいな」です。
この目標を職員と共にていねいに読みかえし、また子どもたちとも、描かれている童画と一緒に繰り返し見ています。
 ある父親がしみじみと言いました。「子どもは二人で精一杯です」と……。0歳児と3歳児をトマトクラブに預けている父親です。夫婦で地場産業の織物会社(当市で最大手)に勤めています。会社は二交替制ですので、夫婦で勤務をずらせたり、組み合わせたりしながら二人で子育てをしております。勿論トマトクラブと早朝保育も上手に組み込んであり、微笑ましい子育てだと私はいつもエールを送っています。
 今、大変な経済不況で、繊維業界は息の根がとまりそうです。この会社も給料がカットされ、夏のボーナスは0.5か月分だったそうで、子育ての厳しさを経済面から訴えておられました。
 私は、延長保育は大切な保育の一部門だと思っています。当保育園では、トマトクラブという愛称が物語る通り、暖かな、ぬくもりのある保育を展開したいと考えております。現在トマトを利用している子どもたちが、楽しい思い出を沢山つくり、いつまでも輝いた人生を歩めることを願っています。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION