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一時保育
 神奈川県は、「かながわ子ども支援計画」とし、「子どもが健やかに生まれ育つための家庭環境づくり」の一つとして一時保育事業をすることになりました。当厚木市は、それに先がけて「育児支援センター事業」として、地域交流、育児相談、育児情報提供等は、民間保育園が補助事業として実施してきましたが、その中に一時保育事業は入っていませんでした。平成7年エンゼルプラン(子育て支援のための総合計画)が打ち出され、国、県の事業に移行されました。そして一時保育事業が加えられたのです。
 当園は平成8年に早速実施しようと、案内のちらしを作成しました。そして、保健所、県立厚木病院、その他、民生委員、地域の自治会と、当園の親達にも配りました。そんなある日、県立厚木病院の看護婦さんを通じて電話がありました。上の子を週1回通院させるのに、2歳の子を連れていくのが大変なので一時保育を利用したい、ということでした。看護婦さんが当園のちらしを読み、その母親にそのことを話したのでした。当園も勿論初めてで、どのようにするかは、深く考えておらず、とりあえず2歳児のクラスの中に慣らし保育のお子さんを初めて預かる時のように、8時半から12時近くまでを預かることにしました。このケースが一時保育の第一号でした。多少不安はありましたが、できるだけ一人の保育士が、その子につくようにしました。母親は勿論、病院の看護婦さんも大変喜んでくれたことを昨日のように嬉しく思い出します。当時県立病院の看護婦で、5年前から当園に勤務している看護婦も、みどり保育園のそのちらしを見て当時のことを覚えてくれていました。その後ちらしを見たり、口コミで少しずつ増えてくるようになり、各クラスでの受け入れでは限度もあり、申し込んで頂いても、お断りすることになってきました。一時保育の児童も、落ち着いて保育でき、クラスが安定するためにも、一時保育の専用室の必要性が生じてきました。今までは、多目的室として週一度の親子サークル、また図書室、クラスでの特別活動、その他、自治会や、音楽教室等に使用していた一室を一時保育室に利用することを思い立ち、平成9年4月頃からここを専用の部屋としてクラス名も「たんぽぽ組」とし、その日の人数により、一人または二人の専任の保育士が受け持つことになりました。現在は、二人の保育士を専任にしています。なお現在の一時保育「たんぽぽ組」は平成11年から多目的室より少し小さい部屋に移り、落ち着いた家庭的な雰囲気になりました。一日の受け入れ人数は12名、週三日を限度にお預かりしています。預ける理由としては、冠婚葬祭、出産、親の通院、兄姉の通院や施設通所、学校行事、週三日までの就労、育児疲れによるリフレッシュ等、事情は様々です。子どもたちの反応は、初めは泣いてしまう子も、子どもたちに仲間入りしているうちに安定して一緒に遊んだり、名前を覚えよびあっているうちに落ち着いてきます。週何回か来ている子がリーダーになって、一緒に手つなぎをして遊具での遊びもできてきます。時には散歩や、園庭でボール遊び、砂遊びにも興味をもつようになってきます。
 給食も食べられるようになり、午睡や時には他のクラスと合同で、外遊びもできるようにもなりました。不定期に登園するため、せっかく慣れて遊んでいたとしても、次に来た時は泣いてしまうこともあります。しかし、時間がたてば落ち着いて友達と遊ぶこともできるようになります。
 保護者の方にとって一時保育の制度はとても心強く安心のようで、大変喜ばれています。また、一時保育のクラスとして独立し、二人の専任の保育士がいることも、親は勿論子どもにとっても大変安定してきていると思います。予約制で一人週3日までとし、緊急とみなす場合のみ延長や特別保育もしています。
 「たんぽぽ組」専任の職員がクラスに入れないときは、他の職員が代理で入りますが、いろいろな職員が地域育児に触れることができるので、それも今後、保育園が子育て支援をしていくうえで、有意義なことと思われます。
 また、逆に子どもが少ない時には一般のクラスに入りますが、皆と遊びながら一緒に過ごすことも、子どもにとって良いのではないかと思われます。
 今年度、定員増に伴うクラス編成で、保育室の数が足りなくなってしまったため、「たんぽぽ組」は2歳児の一部と同居するようになりました。保育内容も違いますが、皆で仲良くやっています。
 しかし一時保育制度にも問題点があります。最近は希望者が増えてきて、予約開始日は列ができるほどです。ですから予約を取るためには何か月も前から申し込まなくてはなりません。が、本当に必要な人や緊急なケースは、保育が必要になる事由が直前に生じることが多いのです。緊急事態というのは、何か月も前にわかることはあまりありません。つまり、本当に必要としている人が予約することは大変困難な状況になってしまいました。改善策を模索している状態です。
 このように検討が必要な事項もありますが、いろいろな点でこれからも一時保育を大切にしていきたいと思っています。








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