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今後の展望
 人間が良き社会人になるための教育は、確かに小学校から大学まででしょう。しかし、誕生したその日から6歳までの乳幼児期は、人間が教育される原点の時期なのです。ある園長が「私は、中学、小学校の教員をしましたが、保育が何より大切と思って保育園を始めました」。その言葉通り、0歳から育っていく子どもたち、特に6歳までは脳も身体も人間成長の中での、スピードの早さは凄まじいもので、一生の発達のうちの80%ともいわれています。延長保育を考えると、長い子は一日24時間の中で保育園で預かる時間は約半分、12時間前後も園で生活していることになります。寝る時間を差し引くと、遥かに家庭での生活時間より長くなります。しかし、それでも子どもにとって親子の関係は絶対大切なのです。親も我が子は、かけがえのない存在なのです。保育園もよりよい保育を充分にすると同時に、親も、子育てには家庭生活が如何に大切かを認識し、その短い親子のふれあいのなかで、充分に愛情を注ぐとともに、正しい生活習慣は勿論、善悪の判断力や、感謝する心、人に対しての思いやり等の気持ちを家庭でも十分に身につけてほしいと思います。
 それと同時に、働く母親の育児休業の取得や労働時間の短縮等は、厚生労働省や企業でもっと考えて頂きたい。子どもが健やかに育っていくための施策、そして子どもを産み育てる楽しさのある社会を…。孤立して子どもをかかえ、悩む環境であってはいけないのです。
 最後に、母親が子どもを迎えに来た時の、美しい花がパッと開いた姿で結びたいと思います。
 「ただいま」。お母さんのお迎えです。子どもは楽しい遊びをしている時でも、また、大好きな保育士に抱かれていても、この母親の「ただいま」の一声、そしてお子さんをお渡しする瞬間の母と子の何ともいえない嬉しそうな笑顔や姿。この世で何より美しい、満足に満ちた温かさいっぱいの肌のふれあう喜びの姿だ、としみじみ思います。素晴らしい花園なのです。どんなに一生懸命保育をしてなついていても「親にはかなわないわね」と、やっぱり親子の絆の強さにはちょっぴりねたみさえ感じる保育士もいます。しかし、この姿、これでよい、これが保育の最良のつとめなのだと思う時、あらためて、こんな素晴らしい仕事を与えられていることに、誇りと感謝の心でいっぱいになります。








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