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6 延長保育・一時保育も私の花園
神奈川県厚木市・みどり保育園
園長 山崎 田鶴子
みどり保育園の沿革
 30年前は桑畑や麦畑、空にはひばりのさえずりが聞こえる田園風な静かな、ここ厚木市戸室は、神奈川県の中央に位置し、小田急線厚木駅からバスで10分位のところです。
 当時、この近くに県営団地ができました。幼稚園はあっても保育園がなく、住民の人たちが厚木市に陳情をしていました。市でも必要性は十分考えており、保育園を運営できる人を求めていました。友人を通して紹介され、市の要請を受けて保育園を設立することになりました。なかなか適当な土地がなく、1年以上、市が団地に近い土地を探してくれていました。市の方々の熱意の結果、団地から徒歩15分位のところに、初めに記した田園風な麦畑を保育園のために借地として約300坪を貸して下さる方との交渉が実りました。住宅は殆どなく、桑の木や麦畑や芝畑が広々したところです。
 緑あふれる当時のこの環境、団地の住所は厚木市緑ヶ丘、麦畑に建てた保育園の住所は厚木市戸室でしたが、私は緑あふれるこの地の保育園の名は、迷わず社会福祉法人みどり会・みどり保育園として認可の手続きをとりました。保育園の建物ができるのを、近くの人たちは心から待ち望んでいたとのこと。
 定員は90名、3歳未満児が18名、3歳以上児72名でした。職員は、3歳未満児は6人に1人、3歳児20名に1人、4・5歳児は30名に1人。調理員は2名と園長1人のスタッフで出発。4月には90名定員いっぱいで入園できないお子さんもでてしまいました。当時の母親は、小学校の教員、市の職員、工場地帯も近くにあり、そこに勤務しているパートのお母さま方も多く、また、駅の近くの商店街で働いている方もいました。朝は8時前後から、夕方は遅くても5時から6時までには殆どの人がお迎えに見えました。
 しかし保育はきびしく、例えば園長も保育にたずさわるのは当り前でした。1人休めば、当然クラスに入ります。3歳未満児のクラスに0歳、1歳児も4、5名いましたので、1室の3分の1位に畳を敷き、柵をつくって2つに分け、何とか18人を3人で保育をした時代です。
 また、当時の3歳児は元気があって、追いかけ保育のようで保母は常に目がはなせませんでした。特に1人多動の児童もいたため、園長も保育室にいるのが殆どでした。
 3歳未満児の希望が次第に多くなり、一室での保育では対応できない状態になりました。そのため、昭和51年、隣接している栗林の地主さんと交渉して約100坪を借金して求めることにし、3歳未満児(30名)のクラスを2階建てで建築、3歳以上児は90名にし、120名定員に変更しました。その後平成元年には耐震検査の結果、最初の建物は全部建て替えることになりました。ホールと多目的室を加えて広々した廊下と床は、全部コルクばりで肌触りは快適です。転んでも殆ど危険はありません。
 それから25年、東京、横浜の通勤には交通に便利なためもあって、厚木市の人口は当時の3倍の21万人位になりました。
 全国的に入園希望の待機児が増え、特に多いのは、県内でも横浜、川崎、相模原、大和、厚木ということです。当保育園も交通の便利さもあり、待機児が特に多い状況です。常に50名以上は待っていますので、「狭き門」などといわれていたところ、少子化対策のための補助がでるので、増築して30名増員してほしいと、市からの強い要望がありました。そして平成13年7月から150名定員となり、更に10名多い160名が在籍しています。
 現在、卒園した方たちが親になり、そのお子さんを6、7名お預かりしています。今は祖母になった方々が時々送り迎えをするのでその時には昔話に花が咲くこともあり、楽しい一時でもあります。
 今0歳児のお子さんをお預かりしている母親B子さんも、ここの卒園生です。年長組であったある雨の日に、テラスで走りまわって遊んでいる最中にころんでタオル掛けの金具にぶつけてしまい、目の下を3cm位切るケガをしてしまったのです。直ぐ医者に行って手当をしましたが、顔に傷跡が残ってしまい申し訳ない気持でいっぱいでした。そのB子さんが、今年の4月に赤ちゃんを入園させました。思わず当時のことを思い出し、傷の跡を見ました。殆どわからなくなってはいましたが、いつまでも忘れられないことなのです。彼女は「あの時は、私がいけないことをしたから」と……。まさか彼女のお子さんを保育するとは、不思議な素敵な縁です。やはり嬉しいことだと、心から思わずにはいられません。
 本当に保育中の事故は何より心配です。安全保育につとめているつもりでも、一年の中では、どうしても多少なりともケガはあるのです。幸い、経験豊富な看護婦と保育士の両方の資格を持つ職員が乳児クラスの主任をしていますので、体調のおかしい時や、ケガをした時は、直ぐみてもらえるのでこの点は安心できます。
 さて、最近保育園の事情が、少なくとも6、7年前からみて大分変ったと思われます。標題にもあるように、延長保育、一時保育、そして子育てサークル等の実施です。
 児童福祉法に定められている8時間を超える長時間保育は大分以前から行っていたと思いますが、延長保育としては朝は7時から、また、夕方も7時までの12時間の保育が実施されるようになりました。その理由は、男女雇用機会均等法により、女性の勤務時間が男性並みに長くなったためです。
 また、一時保育では、専業主婦でも急な用事等で、一時的に乳幼児を保育園で預かることが必要になってきました。今、子育てに悩んでいる人が増えています。そんな母親達の子どもを預かったり、また、いろいろ話を聞いてあげること等も、保育園に求められていると思われます。
 当園では、母と子の子育てサークルを週1回実施しています。口コミでしょうか、現在60人以上の人が登録されているため、参加を待って頂いている方もいます。親子で友達になってゲーム遊び、おしゃべり、また幼稚園の元園長だった方が、相談員として個人的に相談を受けてくれるのが心強いようです。
 それでは、現在当園における延長保育と一時保育の状況を紹介させて頂きます。








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