延長保育
今から26年前の昭和51年4月当園は、午前7時30分〜午後6時15分の時間帯で開園しました。同法人にある、みつばさ愛育園は早い時期から長時間保育を行っていました。保護者の中には、教師やサービス業に従事する人が多く、また都内に通勤している家庭も多かったため、必要とする人が多く、保護者の要望に応えるため自然な形で長時間保育を行ってきました。
冬の寒い朝、玄関の前で赤ちゃんを抱えドアが開くのを待っている母親の姿や、夕方、息せききって走り込んでくる父親の姿に「一緒に頑張ろうね」とエールを送りながら少しずつ開所時間を延ばし、昭和63年から午前7時00分〜午後7時00分、平成7年から午前7時00分〜午後7時30分、平成12年から午前7時00分〜午後8時00分(土曜日は、午後7時00分まで)と時間延長してきました。
特別なPRをすることもなく、口コミで広がり、入園希望の理由の中にも「通常勤務以外の他に仕事上のアクシデントがあった場合でも安心していられる」「土曜日、半日保育が多い中、通常保育と変わらない時間帯で保育してもらえるので助かる」等の声も聞かれ、制度のあるなしではなく、必要としている人がいるという状況の中で私たちにできることはなにか……を常に考え、職員間で話し合いながら今に至っています。
年々、延長保育利用の子どもたちの低年齢化が目立つようになり、乳児の対応に苦慮することもあります。当園では、時間外保育士を置かず、常勤保育士のローテーションにより対応し、時間差での勤務になるため、必ずしもクラスの担任が午後6時以降の延長保育時間に残るとは限らず、職員間の連絡や伝達等を徹底し、保護者への連絡もれがないようにと心掛けています。特に、乳児の場合は授乳時間、体調、お迎えの時間やお迎えの人等、引き継ぎや確認と共にメモや連絡ノートの活用、必要に応じて担任が時間外勤務で対応する等で対処しています。
乳児の場合は、人見知りや抱かれごこちの違いから泣かれてしまうことも多々あり、当番職員としては切なさで胸の痛む思いです。そんな時に活躍してくれるのが、子どもたち。「わたしたちにおまかせ!」とばかりにあやしてくれたり、共に遊んでくれたり……。毎日、同じ時間を共有しているため、なんとも心強い存在です。兄弟の子どもたちも家ではけんかが絶えなくても、お迎えを待つ間は、お互いを頼りにして仲良く遊んだり、互いにかばいあったりして過ごすほほえましいようすに、お迎えの保護者も安心しておられるようです。延長保育の時間帯は、縦割保育で過ごしているので、保育士たちも子どもたちに助けられ、教えられながらの「共育ち」の場でもあるようです。
みつばさの保育は、クラスにとらわれず、職員みんなで保育していくという方針に基づいているため、子どもたちの問題は、クラスの問題ではなく、園全体の問題としてとらえ、職員間の共通認識により対応しているため、保護者からも「担任外の先生が子どもの名前を覚え、みんなが気軽に声を掛けてくれる」との声が聞かれます。担任しているクラス以外の保護者とのコミュニケーションもとりやすく、子どもたちや保護者への目配り、気配り等への配慮も意識づけられていくようです。
現在、延長保育の利用は、月契約(延長料金1か月4,000円、対象となる時間帯、平日午後6時00分〜7時00分、それ以降は時間単位で計算)の登録が17人。随時の子どもたちを含め、9月の平均状況、6時以降67名、6時30分以降46名、7時以降15名、7時30分以降7名の子どもたちが利用しています。保護者の勤務状況によっては、ファミリーサポートの方にお迎えを依頼している家庭もあり、さまざまな事故やトラブルを防ぐためにも全園児が連絡ノートを利用しており、毎日必ず、健康状態や家庭でのようすの他にお迎えの時間とお迎えの人の名前を記入していただくようにお願いしています。また、急な残業や交通事情によって、お迎え時間等に変更が生じる場合は、必ず電話連絡を入れていただくようにもしています。
延長保育を行うにあたり、補食の問題もクローズアップされてきます。当園でも8時までの延長保育に移行する際に栄養士・調理師・職員等で話し合いを重ね、方向性を検討したのですが、実際にどの位の利用があるのか把握できなかったため、しばらくの間、牛乳と果物やお菓子等でようすを見ながら状況に応じて対応していこうということになりました。しかし、保護者の中から「朝はあわただしく過ごし、日中も共にいられないのでせめて、夕食の時間は一緒にすごしたいので、夕方のおやつは控えてほしい」という要望がありました。そこで、3時のおやつにボリュームを持たせ、夕方は牛乳や軽いお菓子等で対応しています。
保護者の中には、通勤に時間がかかるので早朝保育、延長保育共に利用する家庭も多くなりました。そんな中、子どもたちへの影響が気になるところですが、ひとり、ふたりとお迎えがくると気になり、ドアが開くたびにそちらを見て、親の姿を待ちわびたり、口数も少なくなり、保育士のそばから離れようとしなかったり、お迎えが来ると飛びついて行ったり、逆にはにかんでみせたり、一人ひとりの応じ方は違うのものの、お迎えを待つ気持ちや保護者のせつない思いは、皆おなじでしょう。保育士は、そんな子どもたちや保護者の不安を減少させ、子どもや保育士の笑顔で一日の疲れが飛んでいくようなお迎えの一時を演出していけたらいいなと思います。延長保育の時間帯は、ゆっくりとくつろげる雰囲気を大切にし、お絵かきやあやとりをしたり、保育士のひざにのって絵本を読んでもらったり、一人ひとりがお気に入りの時間を過ごせるようにと心掛けています。