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事例
長期保育をした子の経過
事例[1] Sちゃん 家族(父・母・本児・弟)

  子どもの様子 保育士の援助 保護者の様子・反応
0歳 おとなしい女の子夕方から寝ていることが多かった。 静かな環境を作り、よく眠れるよう配慮した。 迎えが最後になると泣きながら子どもに対して「ごめんね」と言っていた。
1歳 人見知りが始まり、環境の変化について行けなかった。 延長保育の前から本児に対する時間を持った。 人見知りの激しさを実際に見ていないのであまり気にしていない様子だった。
2歳 急に言葉の数が増えおしゃべりを楽しんでいた。 できる限り、本児のおしゃべりに耳を傾けた。 子どもの成長に大喜びしていた。
3歳 保育者の手伝いを積極的にするようになった。
(例)おやつの準備等
できる範囲の手伝いをしてもらった。 弟が生まれたため、お姉ちゃん扱いしてしまっていた。
4歳 乳児の面倒を見るようになった。
弟のオムツ換えをするようになった。
乳児に対して安全にかかわれるように言葉かけ、援助した。 すべてにおいて自立しているつもりで信頼しすぎてかかわりが少なくなっていしまった。
5歳 大人びた口調で友達に指図するようになった。 目にあまる言動の時には、その都度注意をした。 親子というより同性の友達感覚になってきてしまっていた。

 
事例[2] T君 家族(父・母・兄・姉2人・本児・弟)

  子どもの様子 保育士の援助 保護者の様子・反応
0歳 顔色が悪く、表情が乏しい。
働きかけに無反応。
言葉かけを多くスキンシップをはかった。 4人目の子どもなのであまり細かいことに、こだわっていない。
1歳 人見知りが始まり姉と一緒にいれば泣かずにいられた。 姉と一緒に本児にかかわりを持つようにした。 迎えに来た時は、すぐ抱っこをして言葉かけをしていた。
2歳 TVを見たりして静かに過ごすよりは、体を動かしていることが多かった。 男性のバイト生がいたのでその人に中心になってもらい対応してもらった。 両親の仕事が忙しいのか、兄姉にまかせっきりにしている様子だった。
3歳 男の子同士でキックやパンチをして遊んでいた。
落ち着いた活動ができなかった。
明るいうちは戸外で体を動かし発散させた。 その日の保育者(当番)の先生によって態度を変えるようになった。
4歳 母親が迎えに来ても帰ろうとせず遊びを続けていた。保育者に促され遊びを止めるが母親に対してカバンを投げつけ反抗的な態度をとった。 母親がどのように本児に対応するか見守った。 子どもが望んでいるような声かけや対応をしなかった。
母親は、さっさと車に乗り込んでしまった。
5歳 子どもの人数が少なくなると「今日も最後だ」といじけてしまった。 子ども達がさみしくならないように配慮した。
(例)好きな玩具を出す
   好きなTVをかける
母親から7時5分前に電話が入り、あわてた様子もなく7時過ぎに迎えに来る。

 
20年間実施して特に職員が苦しみ悩んだ事例

0歳児

子どもの様子 保育士の援助
人見知りが激しく担任以外の保育者になかなか慣れず、環境の変化についていけなかった。 本児が泣かないための様々な方法をとった。
(例)抱き方の工夫・戸外へ連れ出す・おもちゃを与える・食べ物を与える。
日中でもタイミングが合わないと、ミルクを気分で飲んだりする。担当保育士が変わると、人見知りも原因して余計に飲みが悪くなる。 ミルクの時間を延長保育の時間にかからないように調整したり、延長保育の時間帯にミルクの時間がかかってしまった時は、子どもの様子に合わせて授乳した。時には、母親にミルクを持ち帰ってもらうこともあった。
延長保育の部屋に移動すると、環境の変化について行けず、泣き出す。保育士と、1対1で遊ぶことが多かった。 抱っこだけでなく玩具を与えたり、戸外へ出て気分転換しながら少しでも遊べるようにした。

1歳児

多動で時々奇声を発していた。気に入らないことがあると友達に噛みついたり、自分の髪を両手で引っ張ったりしていた。 夕方は、アルバイト生が手伝いに来てくれていたため、1対1の対応を心がけた。
延長保育の部屋に移動すると、お迎えだと思い、カバンを持って玄関先で大きな声で泣いている。 延長保育の部屋に移動してからも、担任と関わり、延長保育の雰囲気に慣れるように働きかけた。(2週間で慣れた)
母親の病気のため、入所と同時に延長保育に入った。なかなか環境にも慣れず、お迎えも遅いため、いつも寂しそうにしていた。 担任と連携を取りながら本児が楽しめるような遊びを見い出し、常に保育者と一緒に遊ぶようにした。

2歳児

表情が乏しい。大人の目を異常に気にして陰で友達に危害を与える。
(例)友達をつねる・暴言をはく
保育者から言葉かけをして信頼関係が築けるように働きかけた。
何事に対しても無気力。
(例)おやつも喜ばない・玩具にも興味を示さない・迎えに来ても喜ばない・TVの前に静かに座っている
本児からは語りかけて来ないので、保育者側から語りかけたり、膝の上に抱っこをし、TVを見たり、本を読んだりした。表情が出てくるようになった。
アトピーを持っている為、食べ物に制限があった。本児がそれを理解していない為、他の子が食べている物を欲しがった。牛乳が飲めない為、豆乳(園で用意)を与えるが嫌がって飲まなかった。 他の子と違う場所でおやつを食べさせた。本児が食べられるおやつを選んで食べさせた。別の部屋では、豆乳も飲むことができた。(「おいしいね、大きくなれるよ」等と言葉かけをした)

3歳児

他の父兄が迎えに来ると、本児も出て行き、暴言を吐く。「あんた誰?」「バカ」。3歳まで紙パンツ使用。排泄・排便の自立が出来ていなかった。 常に保育者が本児の行動を見守るようにした。時間を見計らってトイレに誘う。
遊びに夢中になり、尿意を感じても自分からトイレに行こうとしない。間に合わず、トイレの前で失敗してしまう。失敗するとヘソを曲げ次の活動に入らない。 タイミングを計ってトイレへ促すがなかなか行かない。本児が納得するように働きかけをした。
(例)遊んでいる玩具を預ける・お友達と一緒にトイレに誘う。

4歳児

ひとりで遊ぶことが多く、ブロックを自分の周りに集め、ひとり占めして遊ぶ。迎えが来てもあまり嬉しそうな表情はない。 激しい雨の中、傘もささずに兄(小1)が迎えにきた。心配なので車まで送っていった。
母親が迎えを託児所に依頼したため、知らない人が迎えに来たので帰らないと、大泣きをした。 本児が納得するように話をし、泣き止ませ落ち着かせた。「今日は、お母さんが来られない」「保育園も誰もいない」等

5歳児

2歳の時、母親が病気で倒れ親戚に養育される。5歳の時に園に再入園する。母親の愛情に欠けていたためか情緒不安定気味で多動であった。友達の中に入れなかった。 個々とのかかわりを多く持ち、本児に満足感を与えるようにした。保育者が母親のように接した。
(抱っこ・おんぶ等)
マイペースでおやつを食べ、他の子が食べ終わっても気にせず何時までも食べている。 最後になったことに気付かせ少しずつ早く食べられるように促した。「今日は、早かったね」「皆で一緒に遊ぼう」
夕方、暗くなると1人でトイレに行けなくなり我慢してしまう。母親曰く、生真面目で融通がきかない。 夕方は、保育者が一緒にトイレについて行き、少しずつ不安を取り除いた。トイレについて行く距離を少しずつ離し、できた時は誉めてあげ自信を持たせた。

考察
家庭の環境と子どもの心を理解できるよう、保育士として努力することが望ましいと思います。
日中の保育と違った、よりよい環境を作り出すことは、保育士の援助の仕方によって実現できると思います。








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