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当園の延長保育の内容
《利用者の事情》
 勤務終了時間や勤務先より園に来る時間、また、残業等で6時までに迎えに来られない家庭が利用しています。延長保育利用者のほとんどが核家族で、毎日利用している家庭は少ない。それは、両親で調整したり、祖父母に協力を得ているからです。
《延長保育利用者の職業など》
[1]教員 [2]自営業 [3]美容院 [4]セールス
[5]銀行員 [6]公務員 [7]会社員 [8]デパート
[9]病院 [10]福祉施設 [11]父子・母子家庭
《子どもの反応》
[1]縦割保育のため、小さい子への思いやりやいたわり、また、保育士のお手伝い等を家庭的な雰囲気の中で生活ができます。
[2]昼間できなかった活動ができるため、落ち着いた雰囲気で遊ぶことができます。
[3]お迎えを楽しみに待っている子や、お迎えが来ても遊んで帰らない子もいます。
[4]当番者と一緒に遊ぶことを喜んでいます。
[5]積極的に自分のしたいことを発言できるようになってきます。
[6]人見知りの時期で当番者を手こずらせる子もいます。
《職員体制・協力》
 全職員ローテーションで当番に当たります。
 職員、保育専門学校の生徒、子育て経験者のおばさんの組み合わせ、計3名で対応しています。午後6時より延長保育時間。延長保育の部屋へ集合し、おやつを食べ、活動に入ります。信頼関係のもと、楽しく家庭的な雰囲気の中で、きめ細かい個別の配慮をし、動的な活動から静的な活動に入り、お迎えが待てるよう保育を進めています。
 朝夕の保育は混合保育で活動し、担任以外の子ども達と関わりを持つようにしています。当番者は、日中の子どもの連絡事項を伝言ノートで引き継ぎ、迎えの時に保護者と関わるようにしています。
 迎えが7時を過ぎてしまうこともあるが、職員の態度が子どもへ不安感を与えてしまうことがないよう配慮しています。
《職員の反省点》
[1]保育士の人数が少ないので、怪我のないようにと思うとつい注意する回数が増えてしまいます。
[2]遊びが単調化してしまいます。
[3]年齢差(0〜6歳)があるので全員の要求に応じてあげられないことがあり、つい大きい子に我慢してもらってしまいます。
[4]時間差出勤・退勤なので連絡事項の引き継ぎが不十分なことがあります。
[5]担任以外の父兄から普段の様子を聞かれると、その子のいつもの全体の様子を知っていないで困ることがあります。
《やっていて大変だったこと》
[1]乳児で人見知りの時期
[2]乳児で授乳時間が重なる時
[3]お迎えが重なってしまうと対応が中途半端になってしまうこと
[4]延長保育児以外の子が午後6時まで残っている時
 
延長保育の問題点
[1]延長保育は午後7時までとなっているがそれを守れず平気で遅れて来ることがあります(交通状況や仕事等の場合は仕方ないと思うが…)。遅れてきて、子どもには「ごめんね、ごめんね」と何度も謝るが保育士には、何も言わず平然としている人もいます。
[2]午後5時30分から6時までは、サービス時間となっているが、延長保育児より6時まで保育を必要としている子どもがはるかに多いのが大変な現状です。
[3]子どものことを考えると、延長保育で毎日遅くまでいて大丈夫なのかなと感じるが、仕事のため、子どもが色々な所に預けられたり、放っておかれたりすることを考えるならば、子どものためにも延長保育は必要であると思います。
 
園よリ保護者への要望
[1]仕事が休みの日も普段と変わらず同じような時間にお迎えに来る人や、仕事が早めに終わってもまっ直ぐお迎えに来ない人もいます。時には、早めにお迎えに来てあげると、喜ぶのでそういう時に日頃できないようなスキンシップをとってもらいたいと思います。
[2]遅くまで仕事のある親にとっては、延長保育という制度は必要不可欠なものであると思えるが、子ども達の犠牲の上に成り立っていないだろうかと考えることがあります。
[3]日中の保育時間から延長保育時間の時間帯は、園の責任として保育をすることができるが、家庭での保育の対応もしっかり受け持ってほしいと思います。
[4]送迎では、園との約束時間を守るようにしていただきたい。どうしても守れない時は、必ず連絡をいれてほしいと思います。
 
15年前の延長保育(昭和60年頃)
○午前7時30分〜午後5時30分まで平常保育時間。
○子どもが少なく(10名前後)家庭的な雰囲気でした。
○延長保育になると保育士1人アルバイト生2人だけになり、6時以降におやつを与えるため、お迎えが来るとバタバタと落ち着かないことがありました。
○父兄が保育士に対して、とても感謝して下さった(お迎えに来る時はいつも小走りで、まず保育士に対して「いつも遅くまでありがとうございます」「すみません」と声をかけてくれていました)。
 
5年前の延長保育(平成7年頃)
○対象児12名〜15名
○午前7時〜午後6時まで平常保育時間となり、延長保育児以外の子どもが午後6時までとなって大勢残っているので大変な時間帯となっています。
○延長保育児以外の子どもが、おやつを食べているのを見てほしがり、対応に困りました。時には、そういう子にもおやつをあげたりしました。
 
現在(平成13年)
○対象児19名〜23名
○10年前と比べ、利用者は徐々に増加しています。
○子どもの年齢は0歳児が増えています。
○延長保育時間が午後6時30分より午後7時までと線が引かれ苦慮しています。
 午後6時以降を延長保育として保育を切り替えてやっと対応しているのに、制度的な制約については理解できません。
 
今後の方針
 延長保育(午後7時)も公私立61か所の園の中で57か所が実施し、午後8時までは2か所の園が実施しており、それぞれの実態に多少の違いはありますが一般化されてきておりますので、さらに保育内容の充実を図りながら、子どもとその置かれている状況を大切にして実施することが望ましいと考えています。
 
配慮すべき事項
[1] 明るく優しく愛情をもって接すること
 子どもは、長時間園に滞在するのですから、保育者は愛情をもって見守ってあげることが大切。一人ひとりの保育士の心・保育の姿勢・家庭のあり方・親の考え方をきちんと整理して話し合い、納得しながら保育を進めなくてはなりません。
[2] お迎えにきた時、喜んで帰れるような保育
 時には早く帰って、特別な楽しい家庭のくつろぎのある生活を心がけてほしいと思います。ぎりぎりの生活ではどうしても子どもに負担をかけることになるからです。
 
制度の見直し
 日中の保育の中では、受持人数0・1歳児3:1、2歳児6:1、3歳児20:1、4・5歳児30:1というきざみのクラス単位になっているのに、延長保育は、子ども何人に保育士何人となっています。せめて、3歳未満児と以上児の受持人員きざみを配慮してほしいと希望します。
〈労働時間の考え方〉
[1]産休明けから少なくとも2年間、労働時間の短縮ができるように、制度を整えてほしい。
[2]母親の残業は、なるべくさけることができるように。
[3]子どもが病気になった時は、申し出により早帰りができるように。
   そして、一方では、どうしても延長保育を必要とする子どもがいたら、万全の構えで保育をしてあげられる環境を作ることも必要ではないでしょうか。
 
男女共同参画型社会の構築のために
 働かなくてはならない母親が安心して預けられる施設のあることは、当然社会のしくみの中にできていなければ、完全な男女平等は成り立たないと思います。また、あるから利用するのでなく、どのように利用できるかを考え、不足しているところはどのように埋めるか、社会が家庭がそれぞれ真剣に考えて、一人ひとりの子育てをよりしやすくするための制度として見直さなくてはいけないと思います。親の手元を離れ、一生懸命生きている子どもを見る時、よりよく育つ環境を作ってあげるのは人間として成さねばならぬことではないかと最近深く考えています。








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