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(2)一時保育
 当園が一時保育を始めたきっかけは3年前で、近所に住んでいる若い夫婦が第2子の出産が予定より大分早まったため、1週間ほど1歳半の上の子を見てもらえないかといってきたときです。核家族で親も親戚も近くにいないため、父親が仕事に出かけている間見てほしいというものでした。緊急を要することでしたので、受け入れることにしました。
 初めてのことですし、補助事業も受けてないときでしたのでまったくのボランティアで、必要なものは全て園で準備する状態でした。同じ年齢の1歳児クラスへ入れて、一緒に保育をすることにしました。もちろん慣らし保育などなく最初から通常保育ですので、突然変わった環境の中で子どもも父親も不安と戸惑いはあったようです。ただ受け入れる側としては緊急一時という形は初めてでしたが、途中入所という形で新しい子が入ってくることはありましたので、抵抗なく受け入れることができました。2日もすると子どもは慣れて親を驚かせたくらいです。5日目に祖母が来てくれたため退所することになりましたが、その後も1月ほど毎週2回園に遊びに来るようになりました。その後母親の体調もよくなり園には来なくなりましたが、年が開けた1月には、0歳の下の子も連れて入園の申し込みに来てくれました。その後も色々な理由で一時保育の希望があったことから、補助事業として取り組むことになりました。
 
実施状況について
 最初の一年は自主事業で取り組みました。パートの職員を雇い、図書室を開放し一時保育の部屋に当てましたが、特別広報活動もしていなかったので利用する人数が少なく、一時保育用の部屋を設けたのですが結局既存のクラスに入れて保育するようになりました。2年目には補助がついたため市の広報や福祉課からの紹介があり、利用者も増え人数もある程度一定してきました。また園独自の広報は、電話帳に載せる、入園案内に載せる、入園受付の看板などに実施している事業の名前を載せるようにしています。
 現在の平均利用者数は6名です。ほとんどが週3回の利用で、母親の資格取得の勉強のため、お稽古事、週3回母親の実家の家業を手伝いに行っているが時間も短いので正規の入所基準から外れてしまう、来年保育園、幼稚園に入れたいが今から少しずつ集団保育に慣れさせたい、まだ小さいが近所に同年代の子がいないので、保育園で他の子どもたちと関わらせたいなどです。この他に緊急に今日一日預かってほしいなどの希望も、月に3件ほどはあります。
 子どもたちは一時保育を楽しんでいるようです。最初は時々知らないところへ置いていかれるという不安があったようですが、何回か重ねているうちに他の子と遊ぶ楽しさを知ったようで、一時保育を利用しないときなど、母親と一日いるとあきてきて、保育園で遊ぶと言って聞かないときがあるという声も聞きます。年齢の低い子も最初は泣いてばかりで保育士から離れなかったが、何回か来ているうちに他の子とも関われるようになりました。
 
保育体制
 基本的に別室保育になっていますが、子どもの事情やその日の保育状況を見て一般保育室での保育もします。当日だけとか2、3日一時保育を希望してくる場合もありますので、そのような時などは、年齢が高ければ同年齢クラスに入ったほうがダイナミックな遊びができて子どもは解放されますし、またO歳児などは設備の整った乳児室で保育をしなければなりませんので、園内の施設と人材を時に応じてフルに活用するようにしています。また緊急に人数が増える場合を想定して、正規の担当保育士の他にパートの補助職員を配置しています。はじめはこのような通常の保育とは違う状況にとまどっていましたが、何回か経験することで保育士も子どもたちも状況に慣れて抵抗なく受け入れられるようになりました。
 
受け入れ方
 一般入所と異なる点は、直接園に申し込み入園は園長が許可する形になります。入所の時期はいつからでも入所可能です。ただ、できるだけ利用する数日前に連絡を入れてもらうようにしています。また園の一時保育入園申込書に記入してもらうと同時に、入所の際は親の身分を証明する保険証又は免許証のコピーを取り、連絡の取れる電話番号を2か所記入してもらいます。受け入れる子どもの年齢に関係なく、母子手帳のコピーも取らせてもらいます。保育終了後は、連絡ノートの代わりに「保育状況」の用紙にその日一日の子どもの様子を記入したものに目を通してもらい、確認の印又はサインをしてもらったものをコピーし利用者に渡すようにしています。なぜなら、継続して来ている子どもであれば後で連絡することも可能ですが、その日一日しか保護者との接点がない場合、保育園側も伝達が十分にできているかを確認するとともに、利用者にも知りたい情報をその場で聞いてもらうためです。また後でなにかあった場合、利用者の確認印があることは、利用者、提供者どちらにも早急な解決に有効だと思うからです。
 
その他
 一時保育の課題としては、少ない保育時間の中でどれだけ充実した保育内容が提供できるかということだと思います。週3日でも継続してきているのであれば、それなりに継続性のある保育内容をプログラムしていく必要がありますし、たった1日しか利用しない子にも、充実した保育内容が提供できるようにしていかなければなりません。
 一時保育の利用者は、今後も色々な形で増え続けると思います。どのような形にしろ、保育所を必要としている子どもがいる限り、拒否することなく受け入れられる体制を整えていくと同時に、このような機会を利用して、母親教育のきっかけがつかめていければと思っています。








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