日本財団 図書館


3 保育の基本
 
1)愛されているという実感をもてること
 乳児期の発達課題にはアタッチメントを形成すること、つまり特定の少数の人との間に愛情と信頼の絆を結ぶことがあります。アタッチメントは、通常、母親との間に形成されますが、アタッチメントの対象は母親だけに限られるわけではありませんし、アタッチメントの重要さは乳児期に限られているわけでもありません。保育においては、保育者との関係も重要であり、子どもが保育者との間に「安心できる」「安全であると感じられる」「大丈夫と思える」ような感覚をもてるようにすることが基本となります。
 
2)子どもの育つ力を信頼すること
 子どもは周囲からの働きかけに反応するだけでなく、自ら周囲に働きかける自発的、積極的な存在といえます。つまり、子どもは、ほめられるから、あるいは叱られるから、何かしたり、するのをやめるのではありません。賞罰が与えられるから行動するのではなく、もっと自発的、積極的な存在であるのです。それは遊んでいる子どもをみれば分かるでしょう。よい環境を提供すれば、子どもは自ら活動し、自らの育つ力を発揮するものです。保育者は、子どもを発達させようとするのではなく、何よりも子ども自身の育つ力を見守ることが大事です。一人遊びでも大切な体験といえます。
 
3)保育の重要さを理解すること
 子ども自身の育つ力を信頼することが大切ですが、子どもへの適切な応答も重要です。例えば、子どもが何かに感動して、それを伝えようと振り向いたときに、保育者がそのことに気づき、うなずきながら「すごいね」などとことばを返せるかどうかはたいへん重要なことといえます。
 子どものしていることを妨げることはよくないですが、保育者は子どものそばにいて、必要なときに、適切なタイミングで応答することは大事です。
 子どもの気持ちを保育者が受けとめ、両者が一つの体験と感情を共有したとき、子どもにとっても保育者にとっても、大きな意味が生ずるのです。
 
4)個人差に配慮すること
 子どもがある行動を達成する時期(例えば、歩き始めの時期)には大きな個人差が認められます。これを発達の個人差といいます。
 個人差は、発達面だけでなく、行動の仕方(活発さや敏感さ、社交性や内気さ)、生活リズム(睡眠、排泄、食事のリズム)、発育パターン(発育の速さや体格)や体質などにも認められます。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION