I.子どもの発達と保育
青山学院大学
教授 庄司 順一
1 子どもの心の発達
子どものもっとも大きな特徴は「発達すること」といえるでしょう。
子どもの心が健康に発達していくためには、次の2点が不可欠の条件と考えられます。
1)安心感が与えられること
後述するボウルビィのアタッチメント理論によれば、アタッチメントの機能は子どもに「安全である」「安心できる」という感覚をもたらすこととされます。表現を変えれば、「自分は保護されている」という感覚といってよいでしょう。これは、親のはたすべき基本的な役割といえます。親といて「安心できる」「保護されている」という感覚をもつことは、他者への信頼感をもたらします。
安心感が与えられないと、子どもの心身にどのような影響があらわれるかは、虐待を受けた子どもにみることができます。精神発達(知能発達)の遅れ、感情の抑制、恐れやおびえ、身体発育の遅れなど広汎な面に影響が現れます。
2)自己肯定感をもてること
もう一つ重要なことは自己肯定感をもつことです。自己肯定感とは、自分を肯定的に認めることができることです。自己評価を高くもつことであり、自己への信頼感(自信)ともいえます。
社会的に不適応な子どもでは、低い自己評価しかもてないことが少なくないのです。
自己肯定感は、いろいろな特徴をもつ「自分」をそのまま受け入れられる経験をとおして育つと考えられます。