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第2分科会 虐待防止と保護者とのかかわり
 司会者  片野 太郎 (大田区・女塚保育園副園長)
 提案者  大野 義久 (立川市・たかのみち保育園長)
 助言者  小泉 武宣 (群馬県立小児医療センター医療局長)
 
提案要旨
虐待防止と保護者とのかかわり
大野 義久 (立川市・たかのみち保育園長)
 
 子どもの虐待を園で見つけ、保護者にやめてもらうよう話して終わる、虐待防止はそれほど簡単なものではない。虐待とは何かを知り、虐待が子どもの心にどのような影響を与えるのかを理解することが大切だろう。また、虐待する多くの保護者は、かつて幼児期に自分の親から虐待を受けていたことがあったということも知っていなければならない。そのことを知ったうえでの虐待防止と保護者との関わりでなければいけない、と考えている。
 私は小学校教員として一昨年まで勤務したが、そこで関わった児童虐待事例について触れ、虐待のもつ怖さ、本質について述べ話題提供としたい。
(事例)小学一年・A子。祖母(父の実母)、父、A子の三人家族。母は、A子が誕生40日後に家を出ている。父はA子に、学習などすべてのことに完壁さを求め、それが出来ないと叩く、蹴る等の暴力を振るう。父親も幼児期、父から暴力を振るわれて育ち、18歳の時家出し、父が亡くなった後家に戻り、家業を継いでいる。入学当初A子には何かやろうとする意欲が見られず、動作も落ち着きなかったが、担任、情緒障害学級担任がA子を心から受け入れ、また、祖母、父と話し合い、時には諭していく。次第にA子の表情が和み、個別対応の中で意欲をもった生活が出来るようになる。
 身体的虐待を受けた子は、その傷が癒えても心の中に大きな傷を残すことになる。これが虐待の本質だと思う。また、幼児期親から愛されずに育った人は、心の成熟していない大人になり、親になった時、今度は自分の子を虐待する側に変わることが多いという。
 保護者との関わりは、虐待防止の上で重要なことであるが、大変な仕事である。身体的虐待を受けていると思われる子に、この傷はどうしたのかと尋ねても、子どもは「ころんだの」と答え、家の人に叩かれたと答えるのは少ないだろう。また、保護者にこのことを問い正しても多くは「躾のためにやっている」と答えられ、かみあわないからである。
 虐待が判明した時は、保護者も被害者であるとの気持ちをもち、保護者の心の内をしっかり聞いてあげることが大切である。そのためにも、日頃から保護者との人間関係を築いていないと心を割った話し合いは出来ない。また、場合によっては児童相談所等、他の機関と連携をとっていくことも重要である。但し、子どもを施設に一時的に預け、子どもと保護者を離しただけでは本当の解決にはならないことも心したい。
 子どものSOSをどう察知していくか、保護者(無関心な親・援助を断る親を含め)との対応をどのようにし、虐待をストップさせるか、私たちに課せられた大きな課題である。








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