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「剣道を通して学んだ事」
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愛知県日進市
愛知県少年剣友会
中学二年生
中山進一朗
 
 道場いっぱいに響く竹刀や気迫の大声…。ぼくは、東海中学校に入学して、剣道部に入部した。放課後毎日部活に行く。高校生の先輩達の練習は、迫力があり、竹刀を合わせながら、自然と気がひきしまる。このごろ、気力をこめて声を出すことができるようになってきた。大きな声は、相手への威圧でもあり自分の精神への鼓舞でもある。練習は厳しくつらい時もある。重い防具を持って帰ってくるとそのままダウンしてしまうこともある。しかし、ぼくはなによりも剣道が好きだし、剣道というものがなくてはならないものになってきている。
 剣道との出会いは小学二年生の時だった。母につれられて、弟と妹と愛知署の道場へ行ったのがはじめてだった。ぼくが所属する道場は愛知少年剣友会だ。体が大きく強そうな先輩がたくさんいて、剣道着姿が、かっこいいと思った。最初は、手拭や防具のつけ方構え等覚えることがたくさんあった。剣道に自らすすんで取り組んでいたわけではなかったが、姿勢を正し正座して「先生に礼、神前に礼」という声を聞く時の、ピーンとはりつめた道場の空気にひかれていたように思う。剣道は「礼に始まり礼におわる。」という言葉をよく聞いた。礼はただ型どおりの礼ではなく、相手を心から尊重する態度の表意である。そして、斗争形態をとりながら、礼をつくすが故に、剣道が神聖なスポーツだということが、大きくなるにつれて理解できるようになってきた。
 練習しても練習しても、試合に勝てなかったり、自分はちっとも強くはなっていないようなジレンマに落ちいることがある。負ければくやしい思いをする。そんな時、藤島先生の言葉を思い出す。「剣道は、試合に勝つことを第一に考えてはならない。試合には自分の人間性が出せればよい。」と先生は言われた。剣道は一対一の勝負の世界だが、一回の試合で相手を負かすことを考える前に、相手の前に立つ自己を鍛えることが必要なのだ。最近になってようやく先生の言われたことがわかるようになってきた。この前の試合で負けた相手の前に立つ時、今度は負けない自分でありたいと思う。こんなにがんばって練習してきたんだといえる自分でありたいと思う。日々の練習の中で、あきらめたり、くじけそうになる自分に勝つことが必要だ。肉体的にも精神的にも真剣に修業してこそ、納得ができる試合ができると思う。目指すところはまだまだ遠い。
 日常生活でも、他人ときちんと向かい合って勝負したりする機会はめったにない。剣道は、人に対する姿勢を教えてくれる。ぼくは他のスポーツにない、静から動への瞬間、その緊張感が好きだ。ふっと気を抜くと相手の竹刀がようしゃなくさきに入る。先生は「集中力」の大切さをよく言われる。剣道で養われる集中力が、勉強や、人生の大切な時に生かすことができるといいなぁと思う。
 どんなスポーツにも才能や能力が必要だ。能力の限界を感じれば進歩はなくなるのだろうか。北村先生は、「剣道を続けていれば、いつか強くなる。それは今日かもしれないし十年後かもしれない。」と言われた。最初は、なぐさめの言葉かと思ったが、どんなに強い先生方でさえ、さらに上をめざして努力されている姿を見て、剣道の奥深さを感じる。今日、明日、一年、二年で結果を出そうと思わず根気よく練習に励み、長い修業の先にある将来の自分を夢みていきたい。
 尊敬できる先生方、先輩方、他の道場や他校の友人、剣道を通じていろいろな人に出会うことができたことを、ぼくは今何よりも幸せに思っている。こうした出会いを大切にしていきたい。道場には小さな後輩達もたくさんいる。健康で長く剣道を続け、自己鍛錬をすることが恩返しになると信じ、社会に有用な人材になるべく、これからもがんばっていきたい。








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