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「自分に勝つ」
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北海道室蘭市
室蘭琢心館
小学四年生
三上夢梨奈
 
 今日も、三年生以下の後輩達の元立ちになって、基本打ちの練習をさせています。
 私の琢心館では、みんなが揃うまで、早く来た四年生以上が元立ちになって、後輩達の指導にあたります。私が四年生になって、初めて元立ちになった時には、なぜかはずかしくて、後輩達の打ち方も見ないでただ、打たせるだけでした。そんな時先生が、
 「ゆりな、ただ打たせるだけなら、剣道を知らないものでも、元立ちは出来るんだぞ。いままで先輩達に教えてもらったように、後輩の悪い所を直して、正しい基本で打てるように教えてやるのが、先輩なのだぞ。」と言われ、そうだなと思いました。思えば、私が琢心館に入ったころは、先輩におねえさんがたくさんいて、親切に、やさしく教えてくれたことを思い出し、私も先輩のように教えようと思いました。
 私が剣道を始めたのは、ようちえんの、年中の時でした。引きこみじあんの私に、少しでも人前にでて、おしゃべりが出来るようにと、おばあちゃんがすすめたのでした。それからは、おばあちゃんと二人三脚で琢心館に通い、もう六年目になり級も五級になりました。剣道大会にも出られるようになり、二年生の時春少年剣道大会に、初めて出た時、二回戦で六年生の人にまけました。私は、一生けんめい戦ったのにとすごく、くやしかったです。今度こそきっと勝って見せると、きびしいけい古にがんばりました。しかしそれから何回か大会に出たけれど、どうしても三位以上に上がることは出きませんでした。そのうち、仲よしだった彩華ちゃんが、お父さんの転勤で稚内に行ってしまい、そのほかたくさんいた女の子も、家庭の事情でやめてゆき、私のそんけいしていた、歌川先輩も高校生になり、気がついてみたら、小学生の女の子は、私一人になってしまいました。学校の友達は、バレーとかバトミントンとか、女の子らしいスポーツをやっているのに、どうして私だけが男の子の中で、剣道をやらなくてはいけないのだろうと、思うようになり、練習もなんとなくいやになってしまいました。
 そんなある日、おばあちゃんが買ってきてくれた、せき腕剣士の本を読んでハッと自分のなまけ心に気づき、しょうがいのある人でもこんなにがんばって、健常者以上にりっぱな剣士になっていることに、とても感動しました。本を読みながら私は、はずかしくてたまりませんでした。そして、せき腕剣士とまではいかなくても、少しでも近づこうと始めた頃を思い出し、がんばる決心をしました。それには、人と同じことをしていては、だめだと思い、練習は、決して休まない。毎日家ですぶり百本をやろうと決めました。本当に男の子たちの中でのけい古は、つらいけれどせき腕剣士のことを思い、がんばっています。そして、剣道でも、勉強でも、立派だった先輩達にまけない人間になるよう、努力するかくごです。せき腕剣士のちかいの言葉の中に、「自分に勝つとは、三倍努力することなり。」という言葉があります。琢心館のちかいの言葉の中にも、「今のしゅん間を一生けんめいすごします。」という言葉があります。どちらも本当に大事なことだと思います。このちかいを私のちかいとして立派な剣士になるようこれからもずっとずっと剣道をつづけていきたいと思います。








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