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中学生の部
最優秀賞 関東地区代表
「努力は人を裏切らない」
茨城県多賀郡・十王町武道振興会
大友将之(おおとも・まさゆき)・中学3年生
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 剣道、それは僕に、自信・勇気、そして、たくさんの仲間達を与えてくれた、かけがえのない武道です。小学生の頃の僕は運動が苦手で運動オンチというコンプレックスを持っていました。そのコンプレックスを克服するため、小学6年生から剣道を始め、今年で4年が経ちました。この4年間の剣道生活の中で得たものが、三つあります。
 まず一つ目に得たものは、礼儀作法です。これは剣道の場でも日常生活の場でも、とても大切なものです。僕は、自分に自信がなく、挨拶もやっとで、しかも小さな声でしか出来ませんでした。しかし、道場のけい古で、大きな声を出すようになったことで、大きな声ではっきり挨拶できるようになりました。
 二つ目に得たものは、丈夫な体と、自分に対する自信です。剣道を始める前は、風邪をひき、学校を休んでしまうことがよくありました。しかし、剣道を始めてから学校を休むことは、ほとんどなくなりました。引っ込みじあんだった僕も、体が丈夫になれば行動も活発になり、気持ちも積極的に、そして前向きに変わって来ました。中学生になり、学級委員としてクラスをまとめたり、みんなのリーダーとして行動する機会が多くなり、自分自身に自信が持てるようになりました。
 そして三つ目に得た最も大切なもの、それは共に剣道を学ぶ仲間達です。同じ道場の仲間達はもちろんのこと、他の道場や他の中学校にも、多くの仲間を得る事が出来ました。大きな大会で仲間と試合で戦う時、仲間だからと手を抜くのではなく、仲間だからこそ、全力を出し合って最高の試合をしようと精一杯、戦います。そしてお互いを高めあうのです。
 剣道は、一対一の戦いでありながら、チームプレーでもあります。共に戦う仲間が気持ちを一つにして相手に挑んで行きます。僕たちは連帯感を学び、勝敗いかんによっては、仲間を思いやる気持ちも学んで行くのです。
 仲間と共に笑い、共に泣き、共に語り合った時間や思い出は、僕にとって一生の宝物です。仲間の気持ちを理解しようとする心、僕の気持ちを理解してくれているという実感を得られる事は、最高の喜びです。
 最近、日本では少年による犯罪が増え続けています。また、精神的に心を病んでいる人が引き起こす事件も、大きな問題になっています。それらの人に共通することは、人との関わりがうまく出来ない人、自己中心的な考え方を持ち、自分だけよければと他人の気持ちや人格を認められない人だということではないかと僕は思います。僕たち剣道を学ぶ人間として、このような人間に対して、強い怒りを感じます。そして、このような人間が増えたら? と思うと、これからの日本は、どうなって行くのか不安でたまりません。
 僕は、中学3年生となり、自分の将来に向けて、進路決定の時期となりました。僕は、中学校の教師となり、子供達に剣道を教えたい! そして剣道を通じて、自分自身に厳しく、そして他人に対して思いやりをもてる人間、人の傷みのわかる人間を育てたい! と、強く心に決めました。僕が剣道を学んで得た感動を、一人でも多くの子供達に伝えたい!と、思っています。
 僕は小学校6年の終わりの頃から試合に出してもらえるようになりました。基本的な動作しか出来ない僕は、試合に負け続けたのです。その時、道場の先生がこう、おっしゃいました。
 「大友、どんなに試合で負けて悲しくとも、くよくよしてはいけない!その悔しさをバネに、一生懸命けい古することが大事なんだ! 努力は人を裏切らないぞ!」と。
 努力は人を裏切らない、たった十文字の言葉ですが、この言葉は、僕に新たな生き方を教えてくれました。今まで剣道を通してたくさんのことを得てきました。そして、これからも剣道生活を続けていく上で、もっともっと大切なものを得ることになると思います。剣道で得たすべてのものを、僕の人生に、そして将来に生かして立派な社会人になりたいと思います。
 悩み、苦しみ、そして悲しみなど、どんなに辛くても、僕は、絶対にあきらめません。「努力は人を裏切らない」という言葉を信じて。
 僕は、これからも努力し続けることを誓います。








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