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Q4. (提案4.)について伺います;
(提案4.)漁業と他の海洋利用との競合問題の調整、ならびに漁業振興、漁業協調を一層図るための合理的な法制度の確立を急ぐべきである。その場合、漁業補償問題についても抜本的な改革を講じることが望ましい。
4−1. わが国の海洋の開発、利用、保全のいずれを考える場合にも漁業権制度が関係してきますが、これについてどうお考えになりますか?
(該当のものに○印、複数可。)
  全体 A B C D E F H
i)漁業権は一定の役割を果たしているから尊重すべきである。 33 12 8 4 5 3 1  
ii)漁業権は必要なものとして認めるが、一定の改革が必要である。 105 24 24 6 12 3 25 11
iii)事故時の被害に対する実害補償を除いて、外国で同様の制度が存在しないように一切廃止すべきである。 17 4 5 3     5  
iv)わからない。 9 2 1 1   3   2
合計(N) 164 42 38 14 17 9 31 13
i)漁業権は一定の役割を果たしているから尊重すべきである。
→どのような役割を果たしているとお考えですか?
  全体 A B C D E F H
イ)乱開発の予防効果があるから。 21(26.9%) 8 7 2 4      
ロ)海洋環境保全のうえで役立っているから。 21(26.9%) 9 4 3 4   1  
ハ)水産食糧の生産を確保する上で必要不可欠なものであるから。 30(38.5%) 9 7 4 6 3 1  
二)ホ)その他 6(7.7%) 2 2 1 1      
合計(N) 78 28 20 10 15 3 2 0
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*設問4-1.i)でニ)ホ)「その他」を選択された場合、どのような役割を果たしているとお考えになるかご記入ください。
グループ
A
・ 世界的に評価される漁業者による水産資源の自主的管理を実現されている。
・ 漁村存立の根拠となっている。
B
・ 漁民の智恵として、一般的には持続可能な利用が行われてきた。
・ 海洋に生活を依存している伝統的な人々を保護しているから。地域の食文化を維持していくためにも必要。
C
・ 数百年の歴史を持つ漁業者の生活上の権利であり、財産権であるので尊重すべきは当然である。
D
・ 漁業は陸上からの余剰物質の回収機構として重要であり、必須。
ii)漁業権は必要なものとして認めるが、一定の改革が必要である。
→どのような改革が必要とお考えですか?
  全体 A B C D E F H
イ)漁業補償額の決定の仕方を改革すべきである。 34(26.2%) 9 5 2 5 2 8 3
ロ)一度消滅した漁業権が再び復活したりすることのないようにすること。 10(7.7%)   2 3 2   2 1
ハ)他産業も含め、誰でもが漁業権を保有できるようにすべきである。 4(3.1%) 1     1   1 1
二)漁業権は、誰にでも譲渡可能な権利とし、市場原理のもとに置くべきである。 5(3.8%) 1     1   1 2
ホ)明治漁業法時代の初めに試みられたように、漁業権に対して、免許料、海面使用許可料制度といったものを導入すべきである。 11(8.5%) 2 5   2   2  
へ)漁業権制度を根本から見直して、全く新しい「海域利用権」制度を導入し、漁業権をそのうちの一種として位置付けるのが良い。 66(50.8%) 14 19 1 8 1 16 7
合計(N) 130 27 31 6 19 3 30 14
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<分析>
1)漁業権制度に関する冒頭の設問での回答母数は164で、ii)「漁業権は必要と認めるが一定の改革が必要」が105(64.0%)で回答数の約2/3を占めた。これに対し、i)「漁業権は一定の役割を果たしているから尊重すべき」は33(20.1%)であった。さらに、iii)「実害補償を除いて一切廃止」が、17(10.4%)あり、漁業権に対する批判的見方は7割を超える。
2)グループ別に見ると、<E:地方自治体>の回答が3:3と両者同数だったほかは、<A:有識者>ではちょうど2:1、<B:団体役員>では3:1などおおむねこのような傾向であるが、<F:産業界>では25:1、<H:報道・シンクタンク>では11:0の比率で改革を求める声が強い。
3)他方、i)「漁業権は一定の役割を果たしているから尊重すべき」の回答者に漁業権の果たしている役割を問う枝設問では、冒頭設問の当該回答数が33であるにもかかわらず、母数としては78となった。これは前の設問での回答の如何にかかわらず、回答者がいずれかの選択肢へ○を記入する気持ちが働いたものと推察される。
4)その役割評価のうち、ハ)「水産食糧生産の確保上必要不可欠」とするのが30(38.5%)あり、イ)「乱開発の予防効果」とロ)「環境保全上」との応えが各21で同数(26.9%)であった。
5)次いで、どのような漁業権の改革が必要かとの枝設問には、合計130の回答が記入された。もっとも回答が多かったのは、ヘ)「新しい海域利用権制度の導入とその中での漁業権の位置付け」で66(50.8%)の支持を集めた。第2位がイ)「漁業補償額の決定の仕方の改革」で34(26.2%)である。
6)グループ別に見て、ヘ)「新しい海域利用権制度の導入とその中での漁業権の位置付け」の支持率が平均より高いのは、<B:団体役員>19(61.3%)、<F:産業界>16(53.3%)、<A:有識者>14(51.9%)である。
7)第3位にホ)「明治期に試みられたような免許料、海面使用料制度の導入」が11(8.5%)ではあるが入った。これをヘ)「新しい海域利用権制度の導入とその中での漁業権の位置付け」とあわせると77(59.2%)となる。回答者がかなり抜本的な改革を望んでいることを伺わせる。
8)ロ)「消滅した漁業権の復活がないように」との意見も10(7.7%)示されている。
9)ハ)「誰でもが漁業権をもてるようにする」という選択肢は、必ずしも多くの支持を得ていない。これは、産業界の漁業、とりわけ作る漁業等への参入意欲がまだ充分成熟していないこと、あるいは、現行の漁業権制度下での参入は考えにくいことを意味しているとも解釈できよう。また、ニ)「漁業権を市場原理のもとで譲渡可能なものとする」という選択肢は、これまた同様の解釈がなりたつと思われるほか、漁業権を売買するという発想にまだなじみがないがために敬遠されたとも解釈できよう。
*設問4-1.についてのご意見、コメントをご自由にご記入ください。
グループ
A
・ 権利への補償ではなく、実害への補償とすべき。
・ 漁業補償を存続させるとしたらその内容の公開が必要である。開発の抑止力と促進力の双方の面を持っているが、環境保全機能というのであれば、その立証のための理論武装も必要であるはず。漁業の公益性と開発の公益性をもっと公平に議論すべき。漁業の公益性の主張が弱く、金銭的解決に依存してきたのが問題。川辺川ダム問題のように、強権的に強制収用することは民主国家としてすべきではない。
・ 漁業権は一定の役割を果たしているから、尊重すべきであり、役割は、[1]乱開発の予防効果があるから。[2]海洋環境保全の上で役立っているから。[3]水産食糧の生産を確保する上で必要不可欠なものであるから。等である。
・ 漁業権は必要なものとして認めるが、一定の改革が必要であり、漁業権制度を根本から見直して、全く新しい「海域利用権」制度を導入し、漁業権をそのうちの一種として位置付けるのが良い。
・ 補償により漁業権を完全に消滅し、再度漁業としての営業を民法上の処置として行使しないとしたにも関わらず、法的に定められた認可権者が、これを無視して隣接した別の海域に漁業権の設定を行うことがしばしばある。認可権者すなわち県知事等の法制度に対する意識を徹底的に教育する必要がある。
・ これまでの漁業補償交渉は不透明な部分が多く合理的な方式とは認められない。
・ 漁業補償が、漁業者の臨時収入となり、漁協がその配分窓口となるような現行の仕組みは間違っている。漁業者の権利を守るとともに、市民も参加できる(漁業資源も含めた)環境資源の権利の創設が必要である。但し、この議論を進めるためには、当の漁業者と担当官庁の参加が必要である。
・ 漁業権は利権の温床化しており、抜本的再検討が必要と考える。海洋資源の所有・配分の観点から再検討が必要。
B
・ 沿岸水域では広大な面積の干潟や藻場や砂浜域が開発によって失われ、生物の再生産力が重大なダメージを受けており、漁業権が一定の役割を果たしたものの、資源や環境を守り得なかった事は明白である。「開発」と「環境保全」が対置され、現実的な妥協点を模索されている現在、「開発」と「漁業権や漁業補償」を対置されている点は改めるべきである。
・ 「複数可」でないため、ii)ホ)に○をつけたが、多くの改革が必要と思われるため、仮に「複数可」であれば○印を付ける項目(イ)、へ))に口印をつけておいた。
・ 20世紀どれだけ海洋を傷めてきたかの反省が全く見られない設問こは疑問を感じる。(瀬戸内海では既に日本の鉄鋼業の半分、化学工業の4割、パルプ工業の3割を生産基地としている。まだ、開発すると言うのか。)(瀬戸内海では、21世紀の重要なテーマは痛めつけられた海洋の回復であると考える。)
・ わが国の沿岸水域の変遷を見ると、広大な面積の干潟や藻場や砂浜域など(これらは海洋生物のゆりかごである)が開発等によって失われており、生物の再生産力が重大なダメージを受けている。この事実を直視すれば、漁業権が開発から資源や環境を守る防波堤になりえなかったのは明白である。にもかかわらず、このようなアンケートの内容となった理由は何故だろうか?戦後、様々な公害や環境汚染が社会問題として取り上げられた。このような中で、開発と環境保全が対置され、摩擦を生じ、現実的な妥協点が模索され続けた。海洋に関しても、漁業権や漁業補償が開発にそもそも対置されていたわけではないのである。海洋環境に対する危惧が、国民の認識或いは国際的な認識として拡大してきたにもかかわらず、沿岸域の環境悪化や汚染が進んだからこそ、一部には、漁業権や漁業補償があたかも経営権の枠を超えているかのごとく議論されたのではなかろうか。従って、漁業権という一種の経営権を完全に無視できたとしても、開発と沿海生活地域・水域などの環境保全の問題は本質的にはいささかも変わらない。漁業権に関する意見は、開発と何が対置されているかと言う本質的な分析を棚上げにした、少々稚拙な社会認識を含んでいるように思われる。海に関わる関係者が、開発と環境保全と漁業との関係について様々な意見を有してはいるが、このアンケートに繰り返し言及されているように、21世紀の海洋政策が環境の保全と持続的利用のしっかりした理念の上に構築されるべきとの認識に関しては共通しており、国民的コンセンサスといえる。従って、今日的課題は(漁業権云々ではなく)海洋環境の保全と資源の持続的利用の観点から、海洋(or沿岸域)の開発等に関し、より有効で厳格な管理システムを構築することが求められているのである。このようなシステム構築の過程においてのみ、漁業と他の海洋利用との競合問題の調整も進展するものと考えられる。
・ 漁業権を持つものは、それに見合う義務、例えば海洋管理に対する役割等を分担させるべきである。
・ 現在の「漁業権」が全くの私有財産的な感覚で主張されており、沿岸国が国民の共有する財産であるとの基本的な考え方が欠けていることが最大の欠点である。「海は全ての国民のもの」との基本コンセプトの上に、「通航路確保・利用」の方法が考えられるべきである。一例として、船舶輻輳海域における操業が船舶通航の妨げとなっており、これにより漁船および通航する船舶ともに危険な状態に置かれるだけでなく、一度事故が発生すれば付近への環境影響や船舶交通流の乱れから我が国経済活動のロスが予想される。
漁業補償とは直接リンクしないかもしれないが、原因者不明の漁業油濁に関しては、当協会も拠出団体として漁場油濁被害救済基金に対して応分の負担をしている。
・ 漁業権は地域経済に根ざした歴史ある権利であり、水産資源の生産やそのための海洋環境保全などに重要な役割を果たしており、尊重すべきものである。しかし、一般市民の海洋利用に対する認識、要求は明治時代などより多様化し、強いものになっている。それが無秩序な海洋利用の原因になっていることも推測され、事実、最近漁業者とダイバー、釣り客などとのトラブルも増えている。これを機会に漁業権も含めた海洋利用の権利を整理し相互の利害調整をはかり、無秩序な海洋利用を抑制する方策を検討すべきと考える。
・ 漁業側に資源の「持続可能な利用」を促進させる義務を持たせた上での補償であろう。
・ ii)ヘ)の考え方のもとに期間を限った利用権を付与し(更新可)、その対価として利用料を徴収する制度としてはどうか。
・ 漁業権が一定の役割を果たしているとは考えるが、漁業補償という観念があまりにも大きく現れている。交渉というよりは、Sustainableな環境生産維持の観念が大きく取り上げられないものか。
・ 漁業権だけでは、海洋環境の保全はできない。
・ 非常に難しいと思うが、改革が必要であると思う。
・ 漁業権はこれまで乱開発の予防、海洋環境の保全、乱獲の防止といった面で一定の役割を果たしてきたが、安価な輸入魚の増加などによって、経済競争力が低下し、漁業従事者の減少、高齢化が顕著となってきている。食料安全保障の面からも漁業権を含めて漁業のあり方を根本的に考える必要がある。
・ 漁業権は必要なものとして認めるが、ハ)とロ)のような一定の改革が必要だと考える。
C
・ 漁業権は必要なものとして認めるが、一定の改革が必要であり、漁業補償額の決定の仕方の改革、明治漁業法時代の初めに試みられていたように、漁業権に対して、免許料、海面使用許可料制度といったものを導入すべきである。
・ 一定の権利として確立している漁業権を一切否定する論拠は特段持ち得ないものの、少なくとも港湾工事等に伴う補償により、いったん消滅させた漁業権が復活し、その後も改めて補償対象になるという事態はあまりにも不合理であり改善を要すると考える。
・ 現状の漁業権は権利として強力すぎるように思われる。権利自体の性格か運用の問題かは不明であるが、少なくとも現行のような莫大な補償額の設定は不合理ではないか。
・ 漁業権は必要なものとして認めるが、一定の改革が必要であり、明治漁業法時代の初めに試みられたように、漁業権に対して、免許料、海面使用許可料制度といったものを導入すべきである。
・ 漁業法本来の漁業権の範囲を超えた運用がなされていると思う。
・ 漁業権に限定せず、許可漁業、自由漁業、遊漁まで含めて資源利用料(税)制度を創設し、資源管理経費に充当すべき。漁業権制度は、日本の支配下にあった韓国、台湾のほか、類似の慣行は南方地域にもあり、自主的資源管理手法として近年欧米諸国から注目されている。
D
・ 漁業権制度と組合員資格との関連を整理し、補償法を改善すべき。組合員資格取得方法が問題、職業的選択性上の問題もある。
漁業権は一定の役割を果たしているから尊重すべきであり、その役割としては乱開発の予防効果があり、水産食糧の生産を確保する上で必要不可欠なものであるから。
・ i)、iii)、vi)この種の問題が広く公開で議論されることが望ましい。
E
・ 漁業権或いは許可漁業等の許可に当たっては、その他の海洋利用者と調整を十分に図ってからなされるべきであると考える。
F
・ 海難救助への支援、流出油対策等の活動など漁協があることでの災害対策・環境保全でも言及して欲しい。
・ 海を生業の場とする漁民が一定の漁業権を主張する背景は理解できるが、実情は海を私物化する風潮が蔓延しているように思う。ごね得で、結果的には社会常識からかけ離れた法外な漁業補償額となっているのが実態である(海域利用当事者側の責任も無しとはしないが)。
4−2の改革が必要であり、漁業との共生という本来の姿に戻す必要がある。
・ 漁業権については、単に今の漁民に対する対応策として考えるのではなく、海洋性食糧供給政策を基本的な考え方とし、漁民対策はその経過措置として伴走するなど、漁業権の根本的な見直しを早急に始めるべきである。
・ 漁業を滅ぼさない漁業権の設定が必要。
・ 提案の内容に賛同する。海洋は皆のものであり、優先権や既得権は存在しないものと考える。現在まで、既得権の形で、余りにも漁業従事者の一方的な主張を容認しているような気がする。
・ 漁業権は土地の売買に似た価値観のもとに行使されたり、資源乱獲や自然破壊の原因となっている実態がある。海洋における権利を認めるにしても、多数ある他の権利の一部として限定的に扱うべきものである。
H
・ 現行制度が、現状においては、日本の漁業そのものの産業競争力を一段と低下させ、21世紀の食糧問題の遠因にもなっていることに、一日も早く気付くべきである。
・ 漁業権ほど奇怪な権利はないのでは。手離し、失ったはずの権利がいつの間にか「免許制度」で復活し、無いはずの権利が再び「カネ」を生む現場を何度も見ている。いっさい廃止すべきと考えるが、存在させるにしても、「海は国民のもの、市民のもの」の観点から、それら市民の海域利用権の下部に置くのがベターと考える。
・ 漁業権について改革が必要であると認識している。権利としての性質を、法律的側面、経済的側面、社会的側面等から検討すべきであると考えるが、現時点で一定の方向性はわからない。漁業権関係者との調整を念頭においた上で、改革方法を探るべきである。
・ 理想論にすぎないかもしれないが、基本的な部分から見直す姿勢が必要だと思う。
4-2. 漁業補償についてはどのようにお考えになりますか?また、これに関する理由、ご意見等を自由にお示しください。 (該当のものに○印、複数可。)
  全体 A B C D E F H
i)漁業補償は、合理的な基準が設定されれば、容認できるものである。 54 10 13 8 6 3 10 4
ii)漁業補償は、漁業操業の機会を奪うことに対する補償であるから、そもそも漁業振興に全額用いられるべきであり、そのように制度改革をすべきである。 33 10 6 2 5 1 7 2
iii)漁業補償は、実際に漁業に対して被害が発生した場合に、その被害を与えた当事者が実害補償として支払うメカニズムであるべきで、それ以外の補償は不要である。 25 11 3 1 1   7 2
iv)漁業補償は、漁業者と海域利用の当事者のみの二者による交渉、額の決定ではなく、有識者等で構成する第三者機関による裁定、仲介、助言により決定する方式を採用すべきである。 81 22 19 7 9 2 16 6
v)何とも言えない。 18 4 3 1 3 3 1 3
合計(N) 211 57 44 19 24 9 41 17
<分析>
1)漁業補償については、前問でイ)「漁業補償額の決定の仕方の改革」が必要とする回答が34(26.2%)あったものの、それとは無関係に回答を記入していただいたであろうこと、また、複数回答方式であったことも手伝って、計211の回答が寄せられている。回答者一人当たり1.2件に○印を付したことになり、この問題に対する関心の高さを示している。
2)漁業補償についてどう考えるかの設問に対して、iv)「第三者機関の裁定等による決定方式の採用」が81(38.4%)で第1位、i)「合理的基準ならば容認できる」が54(25.6%)で第2位である。なお、<C:中央官庁>、<E:地方自治体>ではわずかではあるが、逆にi)「合理的基準ならば容認できる」が、iv)「第三者機関の裁定等による決定方式の採用」を上回っている。
3)ii)「漁業振興に全額用いられるよう制度改革すべき」が33(15.6%)で第3位である。iii)「実害補償以外は不要」は設問4-1.では17/164であったが、ここでは25/211である。前者の割合が10.4%、後者では11.8%であるので、おおむね1割程度がこの意見となっているとみなしてよいであろう。
*設問4-2.についてのご意見、コメントをご自由にご記入ください。
グループ
A
・ 海は誰のものであるかという原点に立ち帰り、海の利用者が相互に理解し協力し合い、共生できるような海の利用、開発が公正に決定できる法制化を含めた新たな調整システムの構築を急ぐしかない。
・ 権利への補償ではなく、実害への補償とすべき。
・ 漁業補償の決定過程が不透明である。漁協内部の力関係に左右されやすく、本来的な漁業を行いたい漁業者はマイノリティなので、その意思が通っていない。
・ 現在の漁業補償は過度であり、実績に基づくようにすべきである。
・ [1]お金で漁業者の同意を得ようとする現在の漁業補修は改善すべきである。漁業補償は本来漁業振興に繋がらなければならないが、その役割を果たしているケースはほとんどない。[2]漁業補償によって、漁民間あるいは漁民と環境団体との信頼関係をめちゃくちゃにし、漁民を「もの言えぬ人々」としてしまった。これは本末転倒である。
・ 上記ii)とiii)は大切な事である。基本的には個人に補償が及んでいないのでは?漁業補償は本来は操業機会を失うことに対する振興策が大切なことである「「金」で片付ける」のは本筋ではない。まじめな漁業者ほど、金で涙を飲んでいる。
・ 1.漁業は改良につぐ改良で、新たな振興事業はあまり価値はない。2.関西空港第一期の漁業補償で大阪府知事は漁業振興資金として100億を超える斡旋をしているが、この結果は如何なるものか。3.漁業補償は、電源開発によるものと、公共事業によるものと、ダブルスタンダードがあり、殆ど前者に依存せざるを得ない結果となっている。4.環境影響評価法、各種事業法、行政手続法などの新しい法制度により、透明性のある機関に決定権を持たせるべきである。
・ 「漁業権」は、歴史的な点を勘案して、残しても問題がない。しかし、海岸線から一律にある範囲(1000m程度)を漁業権水域とする現行制度ではなく、必要な範囲だけに狭めるべきである。これによって、漁業権以外の海域利用の可能性(利用機会の均等化)を拡大できる。また、その海域で排他的に漁業を営む権利だけではなく、漁業者には水質の改善・維持などを含む環境保全・管理を義務付けたものとすべきであろう。その場合、リクリエーションなどの他の利用と競合しないように、漁業権海域自体を聖域化することも必要となろう。
「漁業補償」は、開発等によって損なわれた漁獲(金額)を補うためのものと考える。従って、生活補償と考えるべきで、金銭による補償以外は今のところ現実的解決方策は見当らない。現在の漁業補償で最も大きな問題は、事前一括補償方式(開発等を行う前に損害を想定する補償)である。これを、事後逐次補償方式(毎年損益分だけを補償)にすれば、開発費に補償費を上乗せして膨大な初期投資が必要になるといった問題、また、一時的に大金が入ることによって漁業者の生活が乱れるなどの問題は少なくなると思われる。
・ 海洋構造物の漁礁としての機能を評価するシステムが確立し、漁業と他産業の共存をはかることが大切である。
・ 漁業権の制限削減等に伴っての漁業補償に支払われる金額については、それだけの漁場価値があるので正当である。しかしながら、漁業補償がそのまま漁業者に分配される制度は欠点があると思う。漁場価値の所有者は、国などの公機関が持っていると思われる。現行の漁業制度は漁業権の価値を全面的に漁民が保有しているが、これがおかしい。
・ 従来行われてきた「漁業振興」がインフラ整備などがほとんどで、持続的水産業を行うための配慮に欠けていた。振興したために漁場の悪化を招いたなどの例もある。漁業振興とは何かの議論が不可欠である。
・ 平素漁業が今まで通り、安全に生業として経済活動が出来ることが望ましいことであるが、漁業者の生活権、経済活動がおびやかされる場合には、それに対する補償は当然であろう。しかし古来漁業が海、特に沿岸域においても海域の環境を維持してきた実績、現実は正当に評価されるべきで、われわれの食糧資源の確保の上からも沿岸漁業の振興、食糧の安全供給の問題は重要である。今度の水産基本法にも、このことが述べられていると思う。しかしもう一つ漁業振興が海の環境保全にかくことができないこと。またもう一つ今回のアンケートには、世界的な視野で海洋をどうすべきかの問題が提起されないのが残念である。少なくとも世界の海洋生物資源の確保、有効利用に平素の持つ役割は大きいし、そういう施策から世界に寄与することを考えるべきであると思う。
B
・ 漁業補償については、最近の実状を承知していないので、設問に対するする答えは差し控えたい。
・ ここで何故漁業補償を問題にするのか。漁業権についての議論が整理されるならば、補償の問題は自ら決まる。ここで議論すべきでない。
・ 漁業権に対して、免許料、海面使用許可料制度といったものが、導入されれば、漁業を営む者のみが、漁業権を持ち、その他の者は漁業権を放棄するようになるものと思われる。
・ 本来、漁業補償などで解決すべき問題ではないと考える。多くの場合、やむ負えず補償を受けているのが実態ではないか。そう理解すべきである。
・ 過去、日本の産業の発展は臨海工場地帯の設置や石油基地の設置など第2次産業を優先してきた。このため、沿岸域の藻場・干潟が3〜5割程度も減少し、水産資源も近年では1980年代の半分近く落ちている。伝統的に沿岸資源を守ってきた漁業者は、わずか28万人しか人口がなく、まさしく沿岸漁業のみならず、沿岸環境の監視人である。これは、わが国民にとって金銭では替えがたい重要な存在だと思う。
・ 漁業によって生活している者の補償は必要である。また、埋立て利用等による失われた海面の金額は過小評価しすぎる。今後は長期の水産利用への損失、その場のもつ浄化能力(人工物で浄化させる場合)までを含めて評価対象とすべきである。
・ 漁業補償の中には、漁業に影響するというだけで補償が必要とされるケースもあるようだが、のようなケースは漁業権を独占的な海域利用権かの如くに考える見方があるのではないか。そもそも海域利用権は全ての国民が有するものであって、地元漁民だけのものではない筈である。
・ iv)が合理的に見えるが、果たして上手く機能するかどうか。
・ 海は漁業者だけのものではない。補償交渉に一般も参加できるようにすべきであろう。
・ 海上工事における漁業補償については、国民の全てが納得できるものであるのか疑問を感じる。漁業権、漁業補償のあり方ついて抜本的な見直しが必要と考える。
C
・ 前設問に対するコメント(現状の漁業権は権利として強力すぎるように思われる。権利自体の性格が運用の問題かは不明であるが、少なくとも現行のような莫大な補償額の設定は不合理ではないか。)と同じ。
・ 漁業に限らず、海洋利用に伴う影響を受ける事業に対し、合理的な補償をするのは当然のことであろう。補償を早く決着させ、開発行事を進めたいために、所謂「つかみ金」的な補償がなされていること、不透明さが最大の問題であると思う。
・ 漁業者の損失に対する補償であるから金銭補償が原則となるのは当然。合意があれば別だが、間接的な漁業振興策で全て代替できる筈がない。
D
・ 回答はii)であるが、一部は所得補償として支払える必要もある。
・ 漁業としての産業形態を抜本的に考えるべきである。産業としての漁業と補償との関係を明確にする。
・ 産業(工業)サイドは、埋め立て等で多くの浅海域を消滅させてきた。このことは、単にその場所の漁業をなくすことに止まらず、沖合いで生活する多くの魚種の幼期の成育場をなくし、水質の汚染をもたらし、環境の浄化機能を失わせた。海洋は単に企業活動の都合で利用されるべきものではなく、国民全体の視点に立った持続的利用が確保されるべきと考える。
・ 漁業を営む権利については習慣的に定められている。つまり、漁業は現在漁業を営んでいる者のみの補償で終わることはできない。地域的、歴史的生存形態を考えるべき。現世の生活権の補償のみでは漁業を営む潜在的権利(次世代利用権)の補償とはならない。
・ 漁業には色々な種類があり、必ずしも漁業振興策のみで、代償措置とはならない。
E
・ 第三者機関等の中立場の者による、公開の場においての決定が望ましく、また第三者の理解も得やすい。
F
・ ケースバイケースで異なると考える。
・ 国としての海洋施策推進の基、公平な制度が必要と考える。
・ 現在漁業補償は当事者間で交渉され決まっているので、漁業者の一方的な主張に振り回される可能性が高く、世間的にも納得できない例が多い。是非とも早急に是正すべきである。
・ ii)の漁業操業の機会を奪うことに対する補償という点において、収入の機会を奪う。漁業振興といってもそこから直ちに収入を得られないこと。「振興」された漁業につけないこともあり得る。この設問はおかしい。
・ 漁業補償を見直す場合、海域利用に関する抜本的な考え方を検討する必要がある。漁業権は、水産食糧資源の確保の観点より必要であるが、市場原理と漁業育成等を考えた形で水産業を一定ルールに従い実施できるものであれば譲渡も可能であると考えます。
・ 漁業権は、水産食糧資源の確保の観点より必要であるが、市場原理と漁業育成等を考えた形で水産業を一定ルールに従い実施できるものであれば譲渡も可能であると考えます。
・ 1.専業漁業者に対しては損失の実体が明白であると想定される場合等は合理的な補償基準に基づき補償するべきである。2.しかし、単に組合員であることのみで多額の補償金の分け前に預かるようなことは改革すべきである。3.また、本当の意味での漁業振興が必要ならば別途の施策で実施すべきであり、開発者(利用者)が金を出すことではないと思う。
・ 漁業補償は、実質的な漁業に対する受益者が、その操業不能時期等に応じて得られるものであり、実体の無いものには補償されないものと考える。よって漁業振興に全額用いるべきである。
・ 本来の漁業補償以外に所謂迷惑料的な上積分が多い。これをきちんと査定し、漁業に対する損失額のみを組合員個人では漁業振興に使用するように支払うべきと考える。
・ 表を規制すると裏で金銭の授受が発生する。裏取引を規制する方策も必要。
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・ 抜本的改革が必要だと考える。
・ 改革の考え方を議論した上で、あり方を考えるべき。








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