Q5. (提案5.)について伺います;
(提案5.)国民の海に対する知識や理解の向上を図り、海との共生についてその積極的関心を喚起するため、海洋に関する教育・啓発、特に青少年に対する海洋教育の拡充を図るべきである。また、海洋問題に総合的視点で取り組むため、自然科学系と社会科学、人文科学系の相互間を含む各分野の学際的研究と交流を促進するとともに、大学院レベルでの海洋管理に関する総合的な研究、教育システムを整備すべきである。
5−1. 小中高学校教育においてはどのようにすればよいとお考えですか?考えられる措置を列挙してみましたが、必要と思われるものすべてに○印を付してください。
(該当のものに○印。複数可。)
|
全体 |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
H |
i)小・中・高学校のカリキュラムで、もっと海について取り上げて教えるべきである。 |
133 |
38 |
31 |
15 |
12 |
5 |
21 |
11 |
ii)小・中・高学校の教員の海に関する知識向上・理解を図るべきである。 |
107 |
35 |
26 |
11 |
9 |
2 |
18 |
6 |
iii)総合的学習の時間などを利用して、フィールド学習の機会を強化すべきである。 |
119 |
31 |
28 |
13 |
11 |
9 |
18 |
9 |
iv)船長や漁業者など海の関係者を教室に招き、海の現場体験を直接聞くことができる制度を導入すべきである。 |
62 |
22 |
11 |
7 |
4 |
5 |
11 |
2 |
v)内陸・山間部の学校と沿岸の学校との交流をもっと頻繁に行うようにすべきである。 |
55 |
15 |
11 |
6 |
5 |
4 |
11 |
3 |
vi)近隣の港、博物館、海洋研究機関、海洋体験施設などへの社会見学、視察会の機会をもっと持つべきである。 |
98 |
29 |
19 |
10 |
11 |
7 |
15 |
7 |
vii)高校教育の理科にさらに海洋問題の主要分野の基礎(海洋物理、海洋化学、海洋生物等)を、社会に海洋利用の現状と問題点(資源、食糧、環境etc)を盛り込むべきである。 |
110 |
35 |
24 |
8 |
14 |
3 |
19 |
7 |
合計(N) |
684 |
205 |
150 |
70 |
66 |
35 |
113 |
45 |
<分析>
1)小中高学校における、海洋に関する教育の問題には誰もが関心があり、比較的回答しやすい設問であったせいか、複数回答方式で回答が実に684にのぼり、一人当たり約3.8項目選択したことになる。海に対する知識や理解の底辺拡充のための海洋教育に対する要望は、あまり表に出ないが巨大な世論としてあるといえそうである。
2)100以上の支持を集めたものだけでも4項目ある。即ち、i)「小・中・高学校のカリキュラムでもっと海を取り上げる」133(19.4%)、iii)「総合学習の時間を利用してフィールド学習を」119(17.4%)、vii)「高校理科・社会に海洋の基礎知識を」110(16.1%)、ii)「小・中・高学校の教員の海に関する知識向上・理解を図るべき」107(15.6%)である。これにvi)「港、博物館、研究機関の社会見学や視察を」98(14.3%)が続く。
3)いずれも海洋に関する教育にとってかなり基本的な内容であり、このような意見が強く出てきたことは逆に言えば現在の小・中・高学校においては海洋教育があまり行われていないことを浮き彫りにしているとも言えよう。
*設問5-1.について、追加提案事項があればご記入ください。
グループ
A
・ 海洋関連の各種事項は多額の資金が必要となる。この資金を如何に集積するかの制度、コスト・パフォーマンスの考策を検討する制度の研究が望まれる。
・ 海洋科学館、海洋歴史博物館など水族館を含めて総合的施設の設置。(修学旅行コースに入るようなもの。)
・ 海よりも水そのものに関心と理解を持つ教育が大切である。雨の恵み、川・地下水の大切さ、水の利用それらが総合されて海への理解と親しみができる。
・ [1]国立の海洋博物館を早急に設置し、展示内容がインターネットでも検索・閲覧できたり、教員の研修施設等を併設する。[2]指導要領改定時に行政と関係団体が一体となって教科書への海事関連記述内容を申し入れる。[3]教科書に記述が掲載されれば並行して、教材設備基準案を提案し、小・中・高各校に、海の地図(海図や海の基本図)等の各種教材を設備してもらう。[4]行政、関係団体が協力して、小・中・高向けの海事関係の知識を分かり易く解説した副教材を作製し配布する。
・ 海洋分野での実用英語の重要性をもっと考えるべきである。海洋教育の一端を担う水産高校がほとんど教育をしていない。これはミスマッチからくるものである。従って、学生にしても教諭にしても、本当に水産・海洋に興味を持つものを集め、教諭数を増やし、徹底的な教育を展開する必要がある。(船をもつ特徴を生かせる教諭が水産高校に少なすぎる。)
・ 国民に対する周知として、海イコール水産となっている傾向がある。海洋に対する教育は総合的なものである。日本の海洋は水産学が主体である。学部も水産学部ばかり。実際は総合的に海洋学部が大切。
・ 体験航海、乗船実習など海に実際に出る機会を増やす。海への環境をめぐる問題について、自由討論を行う。
・ iii)〜vii)は、i)およびii)の具体的方法のようですので、ディメンションが違うように思われる。
・ 国により、多数の「青少年海洋教育センター」を作り、小、中、高生が学校として、あるいは個人グループとして利用できる様、自治体が運営するシステムを作る。
・ 提案の如く、学際的研究と交流の促進の方策を検討すべきである。
B
・ 物理、化学が重視されすぎて、野外での学習体験が少なくなる傾向が続いている。もっと自然現象に興味が持てるような教育を小・中学生にしなければならない。
・ 遠洋国家でありながら海洋、海運等「海」に関する教育内容の不十分さが、義務教育を受ける生徒に偏った世界観を与えかねない(i)に関連して)。第一義的に上記i)、ii)の充実強化が急務。iii)以降のテーマも重要であるが土台(i)、ii))をしっかりした上での取り組みでなければ効果は期待できないと思われる。
・ 海洋研究者(含OB)を理科の時間に易しく講義させる。
・ 歴史教育において、海洋に関する諸点を教えるべきである。海上自衛隊と児童・生徒との接触を図るべきである。
・ 「海に対する知識や理解」も無論大切であるが、「基礎学力の低下」がもっと心配である。
・ 海洋についての副読本の小・中学校への配付。
・ 上記設問の「海」は「海と海の生物」とし、海の持つ人類生存に重要な生物の生態系を維持する観点をかえる必要がある。(既に、森林が木材資源としての評価から、生態系の一部としての評価になってきているように。)藻場干潟、さんご礁などでの定点観測の実施などによる、環境監視に関する体験学習。
・ 海に容易に接することが出来る海の環境を整備すべきである。(海が美しく希望を持たせる環境の整備)そして多くの経験を小・中・高の間に積ませることが必要。そのためには家庭内における教育も必要。
・ 海に関する授業は高校の地学からできなくなり、ほとんど消滅する状態です。海に関する知識を分かり易く解説した本がないのが現状です。
・ 生徒が学校外に出て、学習、体験することを容易にする措置(保険加入、臨海学校にライフセーバをつける。学習支援プログラムの提供など)を講じる。
・ 小中学校教育の中に以下の観点の授業が含まれると良い。海洋史(船の歴史、海洋探検の歴史、海洋開発の歴史)。地球環境と海洋(海洋と地球温暖化の関係、海水の大循環等)。
また、公教育もさることながら、日常的に海に親しめる配慮が必要。例えば、東京湾の大半の海岸線は企業や自治体の所有で一般市民は立ち入れない。近くに住んでいても海に近づけないため、海に馴染む機会が少ない。また海洋レジャー(ヨットやシーカヤック、ジェットスキーなど)のベースとなる施設も少なく、利用料金も高いため一般的ではない。こうした環境が子供を海から遠ざけている。
C
・ 雪国の学校の体育の授業で、スキーやスケートが取り入れられているように、海辺の学校は休育の授業で海洋性リクレーションを取り入れる。そのために予算的助成措置を講ずる。
・ 小・中・高学校を対象として基本的テキスト(副読本)を国が編集する。
・ 上記i)については、国語(海洋大学等)、理科、社会の教科書に海に関する事項を盛り込む他、海をケースとする映画の上映などを行うべきである。
D
・ 海の研究(特に小・中・高校生のクラブ活動など)に対する表彰制度の充実。海岸、海辺のNGO活動やボランティア活動への助成。
・ 国内に近海的中核研究機関を置く必要がある。現在の研究所をその方向で育てる必要がある。ここが啓蒙活動も行うべきである。
・ NGO等におけるリーダーを育成する。地元の博物館等研究施設を強化し、住民活動の核とする。
・ 海を通じて形式された日本人文化の理解度を高める。海が多様な味を持つ食料生産の場であることを理解させる。
・ 子供向けの副読本を作ること。難しいものでは無いもので。
F
・ 海そのもののイメージアップを図る。(広大、清浄、健康、希望、豊かさ・・・。)5−1について、海のない県や、海のない国・地方(ゴビ砂漠)から来た海の研究者を何名も見ている。彼(彼女)らが何故海の研究者になったかも問われたら如何。
・ 生徒、教員の海に関する知識レベルの向上は必要と思うが、カリキュラムで規定するというより、体験を通して海と親しみ、体で海を知るチャンス、場を準備し、興味のある生徒には、家族と共に参加させるという仕組みが有効と思う。
・ 遠泳やヨット乗船等を通じて、海そのものに触れる機会を増やすこと。
・ 人類の継続的発展のために、海が如何に重要な存在であるかを徹底して教えてほしい。海を保全し、開発し利用するためには科学技術の役割が如何に大きいか、また人文科学と自然科学の協力が如何に大切かを教えることが基本である。
・ 海は常に平穏な時だけではなく、大変危険な場であることを教えるべきである。海を利用する者(レジャーを含む)はマナーを守るべきであり海のマナー教育が必要。
・ 海洋少年団等課外スポーツ活動の振興。見るだけでなく触れたり・体験したり出来る水族館・海の博物館で青少年に海を身近なものに感じさせる。
・ 海の持つ力、素晴らしさと直接感じられる体験教育を行う。
・ 海洋関係のNPO活動に少年・少女ボランティアとして参加し、その活動も学習の単位数として認められるようにする。(活動の場所はフィールドが前提。)
H
・ iv)も良いアイデアだが、”制度を作る”←という考え方はいただけない。
どんどん”やれば良い”←やるか、やらぬか、の問題である。
・ 小・中・高生の親教育が必要である。特に小・中生徒の親子体験学習(フィールドワーク)を楽しく、システム的に出来れば良い。夏休みに臨海学習を義務付ける。臨海集団生活でも良い。
5−2. 大学レベルにおける海洋教育についてはどのようにお考えですか?考えられる措置を列挙してみましたので必要と思われるものすべてに○印を付してください。(○印同上)
|
全体 |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
H |
i)大学教育においては、自然科学系、社会科学、人文科学系の各分野の学際的な研究カリキュラムをもっと充実させるべきである。 |
88 |
25 |
16 |
8 |
11 |
5 |
15 |
8 |
ii)自然科学部門のみならず経済、政策、社会、法律などの社会科学部門との学際的教育、交流をもっと充実させるべきである。 |
87 |
25 |
17 |
7 |
13 |
2 |
14 |
9 |
iii)大学教育において自然科学部門の学生、院生に経済、政策、社会、法律などの社会科学部門の科目履修をもっと促進させるべきである。またその逆も同様である。 |
62 |
21 |
10 |
5 |
7 |
1 |
15 |
3 |
iv)室内教育ばかりでなく、屋外、フィールド教育のウェイトをもっと高くすべきである。 |
74 |
24 |
16 |
1 |
7 |
7 |
14 |
5 |
v)大学は、研究機関、水族館や博物館等の公開型市民社会的教育機能をもっと活用すべきである。 |
39 |
14 |
8 |
2 |
4 |
2 |
6 |
3 |
vi)大学以上の教育に漁業関係者や政府自治体行政担当者、NGO関係者、企業関係者等の知識・経験を活用すべきである。 |
74 |
20 |
17 |
9 |
7 |
3 |
12 |
6 |
合計(N) |
424 |
129 |
84 |
32 |
49 |
20 |
76 |
34 |
<分析>
1)大学レベルの設問にも計424の回答があった。i)「自然・社会・人文科学の各分野の学際的カリキュラムの充実」88(20.8%)、ii)「自然科学と社会科学との学際的教育、交流」87(20.5%)が双璧で、iv)「フィールド教育」とvi)「教育への社会の知識/経験の活用」がそれぞれ74(17.5%)で第ニグループを形成する。
2)これらにiii)「自然科学部門の学生、院生に社会科学部門科目の履修、およびその逆を」62(14.6%)を加えた結果からは、相互に密接な関連を有し、全体として検討される必要のある海洋問題に総合的に取り組むためには、これまでの縦割りの教育では不十分であり、学際的・社会的に開かれた教育、交流が必要であるという強い意見を読み取ることができると思われる。
5−3. 大学院レベルにおける海洋教育についてはどのようにお考えですか?考えられる措置を列挙してみましたので必要と思われるものすべてに○印を付してください。(○印同上)
|
全体 |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
H |
i)大学院レベルでの海洋法条約やアジェンダ21、海洋環境、総合的沿岸域管理、海洋資源管理、陸上起因の海洋汚染の総合的管理などを研究する修士課程以上のコースを設けるべきである。 |
114 |
30 |
25 |
9 |
13 |
5 |
23 |
9 |
ii)大学院に、日本および海外諸国の海洋政策、海洋法制、海洋産業、科学技術政策等を研究する修士課程以上のカリキュラムを編成すべきである。 |
105 |
27 |
20 |
7 |
15 |
3 |
22 |
11 |
iii)大学院レベルでの国際協力カリキュラムを編成すべきである。 |
38 |
18 |
6 |
2 |
|
2 |
7 |
3 |
iv)発展途上国の海洋政策研究に資するようなカリキュラムを創設すべきである。 |
30 |
13 |
3 |
1 |
3 |
1 |
6 |
3 |
v)産業界、行政関係者、試験研究機関などに働きながら受講、研究できるようなカリキュラムを整備すべきである。 |
80 |
21 |
19 |
7 |
9 |
3 |
15 |
6 |
合計(N) |
367 |
109 |
73 |
26 |
40 |
14 |
73 |
32 |
<分析>
1)大学院レベルの設問では、計367の回答があった。考えられる措置の提示という具体の案であるため、回答もしやすかったのは前問等と同様であろう。
2)i)「海洋法条約、アジェンダ21、総合的沿岸域管理等を研究する修士課程以上のコースの設置」が114(31.1%)と最も支持が多かったが、アメリカなどでは既に数十年も前からこうしたコースがあり、外国からの学生も多い。日本からの留学生も少なからずいて、大いなる刺激を受けてきているはずである。海洋国家日本を標榜するうえでは、是非、その実現が望まれる。ii)「海洋政策、法制、産業、科学技術政策等の修士課程以上のカリキュラムを編成」も105(28.6%)と高い支持を受けた。
3)また、v)「産業、行政、研究機関に働きながら受講・研究できる大学院レベルのカリキュラムの整備」も80(21.8%)となっている。
4)1994年に発効した国連海洋法条約や接続可能な開発のための行動計画アジェンダ21の各国による実施が今世紀の大きな課題であることを考えると、海洋国家日本としてこれらの海洋の総合的管理に関する大学院レベルの研究の充実を図ることは喫緊の課題であるが、そのような認識が広まっていることがこの結果からも読み取れる。
*設問5−3.について、追加提案事項あればご記入ください。
グループ
A
・ 学部の学生を干潟に連れて行くと、海岸に始めて出たという学生が多く、驚く。教育のためにはあらゆる手を尽くすべきであるが、背景には理科教育の軽視、その中でも特に地学教育の軽視という国の流れがあるので、問題は容易いことではない。
・ 教育レベルの改革よりも研究者レベルの改革が先行すべき。
・ 大学学部の高次学年において、海洋法、国際法、海洋技術などの基本的部分を学際的に施行する制度を持つことが望ましい。南極或いは、アイスランド等の極地での実習を大学院レベルで持つこと、また今後必要となる深海技術とこれに関連する国際的法制の研究が望まれる。
・ 現在わが国には東海大学に海洋学部があるが、他の大学には学部はない。大学院レベルでも海洋科学はない。欧米諸国、韓国、中国には大学や大学院大学があり、海洋国日本として早急に整備すべきである。平成13年度から東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学コースに海洋科学サブコースを開放し海洋研究所が参画している。理学・農学の境界を外す試みである。将来は社会科学、工学を含めた海洋大学院大学の創設が望まれる。
・ 海洋科学の基礎教育を充実させることが、学問の前提として不可欠ではないか。海洋学や海洋環境に関する英語教育の充実。(発表や議論の能力向上のためのトレーニングを含む。)
・ 先進国事例を学習し、発展途上国の海洋政策研究に寄与できる国際協力としての研究体制。
・ 海洋学部は東海大学にしかない。東海大学海洋学部では、上記のことをすでに実施している。政策的に東海大学海洋学部を充実させることを希望する。
・ 国際的な海洋学の大学院コースを作る。多国籍の学生、キャンパスも多国籍に渡る。JICAなどで、発展途上国の海洋研究の支援をすすめる。
・ i)〜v)について、私達の所では、この全てを展開している。船を持つ水産系大学の教官の刷新が必要である。その柱は次の様なものである。[1]実用英語教育の強化(国際化対応と劣等感の排除)。[2]乗船実習・海洋実習の強化(教官の採用条件の改革)。[3]外国人の採用(英語での授業・乗船実習等の充実)。問題点は農学部水産学科的発想の教官が船を持つ水産系大学教官の大部分である。これでは船は生かされない。
・ 理論だけに偏らず4年間の内1年間は実習船の航海や民間の商船への乗船、海洋調査、海運等海事関連企業での職場実習等のカリキュラムを通して海を身体で体験、訓練する必要がある。(大学、大学院レベルで。)
・ 大学で海洋を基礎学問として扱える研究室、研究所が少ない。水産系、商船系、工学系などの大学のあり方が問われます。日本の教育制度の中では小・中・高・大学を通して、”海洋”は主な学問とは位置付けられていないので、せいぜい一部の現象を選択する制度になっています。社会的にも海洋への関心は極めて低く、学校数育レベルでも社会への啓蒙の必要性があります。
・ 小・中・高・大学全てにおいて、マルチメディア授業を広く取り入れること。そのための国の援助を充実させること。
・ 5−2について専門教育を旨とする、大学および大学院での教育にまで海洋教育を延長させる必然性を見出せない。小・中・高学校での海洋教育の充実を十分に図るべきと考える。
B
・ 大学・大学院にi)のようなコースを設けても就職する受皿が無ければ、学生は受講しないのではないか。それよりも、海洋関係の行政機関や研究機関に勤務する社会人が受講できるような体制を作った方が良いのではないか。(そのような人は米国等へ留学するかもしれないが。)
・ 海浜の景観や散乱ゴミなど、海洋にとって身近で基本的な現状についての感性を育てることが重要である。海洋の教育、学問においては、その基本は、海と海の生物の持つ「Wonder」に感激する事に始まる。単なる知識の習得や研究の高度化ではなく、自然の持つ脅威を極めることである。
・ 直接海に接し、自然界の不思議さが分かる学問が必要。
・ 水産系学部の弱体化が著しい。国民の食料問題として捉え、もっと基礎的な調査、研究強化を図る必要がある。
・ 大学、大学院における海洋関連の講座等が弱すぎる。これを改めるべきである。
・ 海洋管理に関わる大学教育としては既にアメリカに”海洋管理学”に類する講座を持つ大学がある。(ハワイ大学)。これらのカリキュラムを参考にすべきである。また、こうした講座を履修した学生の受け皿(就職先)をNPO、試験研究機関、企業などに確保するための施策も重要である。
・ 海に関する高等教育(大学・大学院)を受けた者が有資格者として活躍できる制度を考えねばならないのではないか。
・ このようなカリキュラムが大切であるが、卒業後にこの知識を生かした活躍の場を作ることが望まれる。そのためにも、海洋管理、開発への大幅な予算配分が必要である。
・ 足りない教育:海洋国といいながら、日本では小学校から大学まで、海に親しむ教育に積極的に取り組んではいないし、森の樹木の種類を変えるだけでも河川の水量が変化し、都市への人口の集中が外洋の環境にさえ影響するというような地球生態系のシステムや総合的な自然観を教えていない。一方、二百カイリ時代の到来によって、自国水域の管理と整備の重要性が認識された結果、1970年代になって、いくつかの先進国では大学院レベルの総合的な海洋政策プログラムが発足した。そのような研究を行う場は現在、米国だけでも6つあるが、何れも沿岸政策(Coastal Management)を研究の柱としており、沿岸の開発利用によって生じる諸問題、即ち法制、土木工学、漁業、人口、環境、レジャー等に関する事柄を総観し、問題を政策に反映できる人を育てることを目的にした。しかるにわが国では、二百カイリ問題が主に漁業政策の面から捉えられた結果、沿岸政策は二の次にされ、政策面の人材の養成に積極的でなかった。このような教育面での遅れが今日の国土の総合的な管理への取り組みの遅れや沿岸域の乱開発につながっているのかも知れないことへの反省も必要である。
C
・ 学部・大学院レベルの海洋に関する標準テキストを関係学会が中心となって作成する。
・ 基本的には、初等、中等教育機関レベルでの教育を充実させることによって、海の重要性、魅力などを理解してもらい、親近感を感じてもらう教育が必要である。
D
・ 国際機関等に研究等のための派遣制度を新設すべき。
・ 「大学、大学院レベルの教育」を考えるにあたっては、就職口を考慮することが不可欠。社会の「受け皿」無しに良い学生は集まらないし、育たないと思います。
5−2、5−3の設問こ対しては、海洋の工学と理学では、相当に答えぶりが異なります。従って、5−3は答えられませんでした。
・ 海洋を教える大学の先生の数が不足しているのではないか?
・ 第一線の研究を行ってきた研究者はある一定年齢に至ったならば、社会への活動として学部教育への参加、解説書、教科書の出版を行うべきである。
・ 従求型の思考をする教官を集めてバインデイングしても総合化にはならないと思う。しっかりした問題認識を有する人々を集める必要がある。
F
・ 海洋に関連する全ての学問分野を含む「海洋学」の体系を創設すべきであろう。海洋をより良く管理するための基本は「海を良く知る」ことであり、海のあらゆる現象の観測についての専門学科の創設が必要ではなかろうか。
・ 「海洋」をJABEEで認知してもらえるよう、大学のカリキュラムを充実させ、技術者の登録、資格認知を通して「海洋関連技術者」の存在を世に広め、同時に技術者レベルを引き上げる。
・ 海洋科学の基礎研究にもっと文部科学省の予算を充てるべきである。わが国は、外国のコピー研究が多く、オリジナリティーを重視した研究の雰囲気を醸成しないと、応用研究も発展しにくい。
・ 海洋産業と将来的に接点のある学生(造船系、土木系、生物資源系)に対し、海洋関連の法体系の教育を義務づける。
・ 国立の海洋大学を作り、海洋関連、国防などの学問的レベルを向上させるべきである。
H
・ 大学、大学院レベルでは研究組織・機関が重要である。海洋生物学研究からバイオ技術への応用がなされているように、医薬産業等との連携を重視した研究、研究機関が望ましい。基礎的な研究とともに、応用、産業利用があってこそ人々の生活向上に意義があり、また経済的にも研究環境が整いやすくなると思われる。
・ 小・中・高・大生に室内教育よりフィールド教育に重視すべきである。室内講義1回3時間とすればフィールドワークは1日5〜6時間必要となる。現場重視は社会全てに今後重要な課題である。
*アンケート全体についてのご意見、コメントをご自由にご記入ください。
グループ
A
・ 日本の海洋管理については、早急に対応する必要性がある。大学の海洋関連分野がこの問題にほとんど対応していないことは非常に深刻な問題である。現在の文部科学省の研究教育の評価のクライテリアのままでは、特に国内問題や、科学と社会の間の問題を研究する体制ができる見込みが無い。(トップ30大学などのクライテリアを追うのであれば、新しい分野が育つ余地がない。特に、大学院生が育たない。)国内問題を扱う研究者や、社会的問題解決に挑む専門家への評価を高めるべきである。海洋関連の国家予算配分もその点から見直すべきである。このようなアンケートが契機となって、国内的にも議論が進み、将来的には沿岸管理法などができることが望ましい。
・ 大変興味深い内容でした。どのような結果になるか楽しみです。1、2点コメントさせていただきます。
代案はないのですが、”management”を「管理」とせずに、「海洋の利用(保全を含めた)の仕方」といった意の言葉を用いられることを希望いたします。「管理」は、規制的イメージが強いように感じます。自分自身でも日々考えていますが、浅学ゆえなかなか妙案が浮かびません。わが国の海洋政策で最も重要で欠けていることは、行政および国民、マスコミ等が海洋に殆ど興味を抱かないということではないでしょうか。興味が無いから一元的法整備もできない、或いは法整備ができていないから興味が無い、と言った卵と鶏の関係になっていそうですが、国民的話題になるような斬新な海洋政策を打ち出して、議論を高める方向へ意図的に持っていかないと、旧海洋開発審議会の議論のように、何十年も同じ内容が繰り返される事態になってしまうのではないでしょうか。既得権や既成概念に捕らわれない、議論を誘発するような、斬新で具体的な提案が盛り込まれた、海洋政策になりますよう期待いたします。
・ 特に教育に関しては、基礎教育の段階で海に親しみ、海を正しく理解する勉強を強化することは大事だと思われるが、大学レベルでは特に無し。尚「海洋開発」と一口に言っても、海に特に新しい「宝物」が落ちているわけではない。海洋の開発、利用の歴史をよく踏まえ「海洋」がどういうものであるかをよく知り、よく理解した上で、海洋を含めたかけがえの無い地球上で人類がどう生きていけるのか、真剣に考えるべき課題と思う。そういう意味から、海洋の生産する生物資源の有効利用は日本だけでなく、21世紀の人類にとっても大きな問題である。海洋法以降、とかく200海里内の海の管理が問題とされるが、海の生物資源を一番多く利用してきており、世界の海の知識も豊富なわが国のこの問題に対する責任は大きいと考えられる。
国益としてというだけでなく世界の海の生物資源を世界の人類のために確保していくという方向での施策を持つ必要があろうかと思う。現状では、FAO等には期待できない。
・ わが国の海洋を巡る問題点についての貴研究会の分析と提言、アンケートの内容は極めて適切であり、全面的に同意します。ただ、現時点での問題は、問題の所在が不明なことではなく、問題の所在(海岸の総合的管理における縦割り行政の問題点、総合的視野の欠如、漁業権、教育など)ははっきりしているにもかかわらず、その解決策が見出せないこと、それを行政改革という流れの中で如何に達成するかという問題ではないでしょうか。行政改革には賛成だが海は別、は通用しないのではないでしょうか。もう一つ気になったのは、統合的視野の必要性を訴えながら、農水省、環境省から(ただのオブザーバーでなく真剣に持ち帰ってくれる)委員に参加してもらえなかったのでしょうか。
・ 1.「沿岸域」の件に対しては、国は勿論のこと地方自治体および市民の意見を充分に反映させる必要がある。特に漁業関係者の考え方を整理しておく必要がある。
2.上記に関連して「漁業補償問題」を合理的に解決していく必要がある。これまでは利用者の権利が主張されてきた傾向が強いが、沿岸域を総合的に管理していく義務について、充分に議論し、制度化してこなかった。この点を充分に考慮した沿岸管理システムを構築していくことが重要である。
3.海洋国家「日本」は沿岸管理システムに関して、今後の方向性を視野に入れた新しいモデルを構築し、世界の規範となるべき制度を確立していくことが大切ではないだろうか。
・ 海洋国家であるという国民意識の向上が何よりも必要であり、漁業・海運・レジャーなどが共生できる政策を専門家が立案できるような組織作りを早急に進める必要がある。
・ 海洋開発審議会が文部科学・学術審議会の分科会ということ、このアンケートの調査により知りました。
沿岸域の環境管理と賢き利用・開発は重要な課題であると思います。行政、学識者という範疇ではなく国民的意識の高揚が大切であると思います。
・ 海に関する関心が低いのが現実である。ぜひ、海洋省を設立させ国民の関心を呼び起こすべきである。日本は海に囲まれているのだから・・・。3−9について、いくつかの法律があるのでは? 現在ないものを検討すべきであり、現行法の実施をきちんとすべきである。
・ 大学レベルの海洋教育分野が省庁別になっていることが問題です。
海洋管理に関する共通した教育分野の上にそれぞれ専門教育を特化すべきだと考えます。
・ 提案の全てに賛成です。どの様な内容とするかはもっともっと議論が必要と存じます。100年の大計を考えてほしいと存じます。海洋基本法の中にしっかりと水産を位置付けたいものです。
・ アメリカ、カナダ、英国、北欧諸国等は海洋に対する国家的取り組みは法体制、組織を見ても明確である。一方東アジアにおいても中国、韓国の近年の国家としての海洋政策の強化は目を見張るものがある。四方を海に囲まれたわが国はこれまで海洋の持つポテンシャルの重要性が叫ばれながら実体が伴ってこない要因は、歴史的、文化的国民性とばかりは言っておれない状況にあります。やはり海に関係する人間が真剣に努力するしかないと思います。
このアンケートを機に各分野が各々持っている力を結集してわが国が一日も早く名実ともに海洋国家として生まれ変わることを期待します。
・ 5−3について、文学科では大学、大学院レベルである過程まではフィールド教育を行っています。
・ 日本における海洋問題が様々なところで余り手付かず状態になっているのは、私たちの海への認識のお粗末さによるものと思われます。どの部分からでも認識を深める努力はできると思います。ある程度まで認識が深まれば、ここで問題になっていることは自然に解決されていくでしょう。従って、「私たちの海への認識を深める」ために効果的な刺激ポイントを見つけ出して刺激することに尽きるような気がしますが、如何でしょう。
・ 本文中に記しましたが、”水”そのものに対する理解を養うことが基本である。川に親しまない者が海に親しむはずがない。海・川・地下水・雨の総合的理解が大切である。
・ 我が国の海洋政策のあり方の検討においては、地球全体を意識した視点、隣接国家を意識した視点、産業振興/創出を意識した視点、国民個人々の生活/安全/健康を意識した視点が必要であり、結果として複眼的で緻密的な考え方を持って、海洋政策を論議し、起案し、実行し、評価するシステムを設けることが最も喫緊な事と考える。
・ 国内問題を扱う研究者や、社会的問題解決に挑む専門家への評価を高めるべきである。海洋関連の国家予算配分もその点から見直すべきである。
・ 海洋に関する研究に対する行政からの支援を強化することに役立てば良いと思います。
・ 海洋の、特に生物環境や生物の状態を、常時継続的に監視していくことが、海の資源や空間を利用する人間の責務の一つと考えている。そうした海洋環境の現状診断やモニタリングの体制の充実が強く望まれる。海洋を適切に管理・保全していくためにも、このような体制の整備と一体のものとして検討を進めることが必要である。すぐに研究成果や経済的利益に繋がらない、このような仕事が軽んじられていることこそ、先ず問題にすべきであろう。4つの提案の中では、環境教育(提案4)が最も切実で実効性が期待できるのではないかと思う。
B
・ 5−1のiv)、v)、vi)については、国の制度として推進すると言うよりも、各地域ごとのNGO、NPOなどの知見を生かし連携して学習の機会が拡大できるような仕組を作って行くべきことと考えます。
・ 海をなるべく自然のまま残し、管理し、そして利用することが大切である。海面を埋め立てて国土開発を行う従来の遣り方を見直すべきである。人口の減少や海洋環境の破壊が進む中で、海を大切にした持続的な発展の道を探すことが望まれる。我々の子孫に残すべき財産はどうあるべきかを考えたい。
・ 今回の調査の対象とされた海洋政策の問題は、長い歴史の積み重ねがある上、自然環境、経済、外航、国防等、様々な角度からの検討が必要なものであるため、解答のために与えられた時間内に追加提案等新たな観点からの意見を提出することは困難であったことをご了承ください。
・ 直接は関係ありませんが、Ship&Ocean News Letter に書かれているいくつもの提言や考え方をどのように政策に用いていくのか。可能性はあるのかどうか。実際の例が無ければ、その内にNews Letterは誰も魅力を感じないものになってしまうでしょう。本アンケートも結果を存分に生かして欲しいものです。
・ 国民への水産利用による食糧確保という視点が弱い傾向があります。
・ 必要性は認めるが、その内容が十分に深まっていない。また、世間にも浸透していない。学会、マスコミ、行政などを通して、もっと論点を深めるべきである。
・ このようなアンケートは、非常に重要なので、海に関係の無い一般の国民にも実施すべきである。この結果は、マスコミにもアピールして国民への関心を深めることが重要と思います。200海里経済水域は、水産資源、地下資源、エネルギー資源、レジャー資源など多くの未利用資源があります。この海域はわが国のものであり、国土の5〜6倍の面積があります。しかし、その潜在資源エネルギー量は未だに定量化されておらず、「海の太閤検地」が必要と考えられます。更に、海洋資源開発は、1930年代の米国のニューディール政策になる可能性を秘めていると言える。
・ このようなアンケートが契機となって、国内的にも議論が進み、将来的には沿岸管理法などができることが望ましい。
・ 地球の7割を占める海洋について、海洋国家を標榜してきたわが国に「海洋管理」の意識が少ないことを憂慮して、極めて良い試みであったと敬意と更なる「海洋基本法」(仮称)等の実現に期待を寄せるものであります。
C
・ 領海、EEZと物理化学的、生態的かつ開発利用面で分け難い関係にある公海について国、国民の権利義務の行使遵守、科学的その他の国際共同行動において日本の果たすべき役割について、理念はもとより政策立案、実施についても重点を置くべきではないか。
行政組織論として、硬直化した縦割りは勿論問題だが、横割りにすれば解決するというものでもない。横割りで硬直化したらこれまた大問題である。国民の強い共感支持を得る指導理念の下、既存法組織の修正、柔軟な適用しか道はないのではないか。そのためには海洋関連省庁間の思い切った交流人事を継続実施し、常に共通認識を持って機能する海洋官僚を育成して行くことが必要であろう。
・ 既得権や既成概念に捕らわれない、議論を誘発するような、斬新で具体的な提案が盛り込まれた、海洋政策になりますよう期待いたします。
・ グローバルな海洋政策が示されていないというのはご指摘の通りである。このため、グローバルな政策の必要性ということを投げかけていくことは意味のあることだと思う。
・ 一方、海洋、沿岸域等について既に色々な形で利用がなされており、グローバルな政策の提示に当たっては、現状の利用形態等との調整も大きな課題となると考えられる。従って、どのような観点からの、どのような必要性からの政策の提示かということを説明し、その説明が関係者の一定の理解が得られることが前提になると考える。
・ 「海洋管理」の強化について、全体として肯定的な回答をさせて頂きました。基本的な考え方は以下の通りです。1.人類にとって、また、海洋国たる我が国にとって、海洋は他に代替し得ない貴重な存在であることが前提。2.「持続可能(Sustainable)な」開発・利用を可能とするような秩序を前提に、一定ルールに基づく利用を行う仕組みの形成が必要。その際、「沿岸域」については、自治体管理に委ねるべき。3.20世紀における「過剰な開発」への反省にたって、貴重な原生自然の保護に係る特別な規則は必要。
・ 海洋を業務のフィールドとする者の一人として、日本財団における研究活動に敬意を表します。既に指摘されているように海洋を対象とする行政は未だ成熟段階にはなく、寧ろ発展段階にあると言えるかもしれません。それ故に一層日本財団の研究成果が待たれるところです。
ところで、本アンケートの前提となっている5項目の提案については、何れも重要な政策課題であり、議論を深めていくことは是非とも必要でしょう。しかしながら、個々のアンケート項目については、理念論だけで具体的な手法を選択しにくいものもあり、十分な回答になっていないかもしれません。その点ご容赦ください。
・ 回答の選択肢には特定の場合しか列挙されていない場合があり、結果として一定の結論に誘導されやすくなっているのが残念に思います。
D
・ 非常に広い見識をお持ちの方による設問だと思われ、自然科学系研究者としては、思考範囲外の部分なんかもありました。良い提案としてまとめて下さい。
・ わが国に包括的な海洋の施策を行う体制や制度が必要であろうということは理解できますが、一方で「海洋」だけのムラを作って「陸」との間に壁ができてしまうことに大きな懸念を感じます。科学的にも、海はその上の大気や海底下の地殻内部、それに陸からの物質の流入や水の循環に対して相互に影響し合っており、今や海を地球の一部として捉えて現象を解明することが不可欠とされています。また、「海洋」はわが国が単独で管理方針を策定する以前に、ここに活動する多くの国々と協力、連携して管理するメカニズムが確立しませんと、結局効果がどれほどのものかは疑問です。このような国際的メカニズムの確立へ向けての努力が望まれます。
・ 組織や法制は大変大切で、こうした検討は重要だと思いますが、日本の将来の動向の中での海洋の位置付けを併せて考えないとまた再び「お題目」だけのリポートになってしまうのではないでしょうか。海に関する教育の充実は大変良い着眼だと思います。
・ 海洋、沿岸の利用に際しては、広く且つ総合的な視点からの新活用の面と保全(環境)面からの取り組み、また、安全保障上の問題など多岐に渡っていることから、システム的に役割または管理を目的に合わせて決めることが必要である。現在のような縦割的な思考を止めて、横断的な思考と総合的な方策が推進できる調整機関が必要。
・ アンケート全体の発想が「陸から見た海洋」のようである。「海洋から見た陸」の発想が必要。例えば我が国の気象の90%以上は海象である。
・ 大切なアンケートでしたが、大変時間を必要としました。アンケート以前の問題が混在しており、回答に苦しみました。問題は海を愛せない世界を作ったところにあります。哲学が不足しているからもっとトップダウンで良いから進めないと大きな変化は求められません。東京での意見ばかりでなく、地方で活動している人も参加させてください。
・ 提案の内に生態系保全や生態系機能評価手法の確立といった視点が欠けている。
・ 参考として、実際に回答してみると結構時間が掛かりました。全部読んで小一時間掛かりました。
E
・ 海洋および沿岸域については、様々な権利が錯綜しており、判りずらい状況になっています。特に海岸については、公的な管理者、利用権限を有する者、その他一般の利用者を含め、相互の調整は複雑化する一方です。このため、より具体的な利用調整の仕組みが求められていると思います。
・ 海洋政策自体が地方自治体まで周知されておらず非常に理解し難い。
F
・ 1.「21世紀におけるわが国海洋政策に関する提案」を読んで実に「我が意を得たり」の思いがしました。
2.各項目毎のアンケートに書きました以外に2、3点意見を書きます。
1)「沿岸域」を重視することに異論はありませんが、「沿岸域」を“海陸を一体の独立した生態系”と認識している点については、少し首を傾げたくなります。陸域と海域の相互に影響し合う区域ではありますが。
2)21世紀の日本にとっては、そのEEZを人類の持続的発展に如何に備えるか、国際的協力のもとに日本がリーディングカンパニーとして具体的行動を取ることが大変重要になります。
3)わが国の海洋政策として5−3ii)のような活動を進めるためにほ、わが国の個別の海洋科学の分野を総合して「海洋学」として体系化し、更に発展させることが望まれます。(教育以上に重要な問題だと思います。)
4)5−3に対する意見として書きましたが、海をより良く知るための努力が十分ではありません。海洋観測の充実についても提言をして頂きたいと思います。
・ 日本財団の提案は、わが国の海洋政策の不在等問題点を的確に捉えたものであり賛成。但しこれを着実に進める手立てが必要と思う。
・ 美しい国土、景観作りに沿岸域(陸・海域を含めて)を統合的に取り上げ、その自然修復や新しいニーズに積極的に取組めるような道を開くようにすべきである。 1)海岸都市の促進として観光・レジャーへの対策 2)景観として、環境から国土交通省まで行政の一元的対応ができるようにすること。 3)海を水産業・漁業だけでなく地球環境としての居住環境作りのモデルをわが国から提示すべきである。
・ 弊社は、海洋開発の専門会社として昭和44年に創立し30年余の実績を積んでまいりました。創立当時は、海洋開発の中でも資源、環境調査の重要性を認識し、300トンの海洋調査船を建造し種々の調査を実施してまいりましたが、世の中の景気低迷により船を手放す結果となりました。しかし、グループ各社のご協力により海洋開発の灯火を消すなとの方針で、現在は環境と水産関連の事業に特化して細々と行っております。昭和40年代に海洋開発ブームがあり、国も産業界もこぞって将来のフロンテアとして海洋関連事業に乗り出していましたが、オイルショック以降は海洋開発の熱も冷め産業としての規模が減少しました。これも、周りを海に囲まれた国でありながら、国の海洋に対する理念、施策が明確でなかったことに起因するところが大きいと考えます。従いまして、今回の日本財団殿の提案は大変ありがたいことであり、海洋開発会社として是非とも推進していただきたい事項であります。今後は、産・官・学・民による検討委員会等を開催し国民的な盛り上がりを作り、海洋基本法を制定することが重要です。その上で、従来の陸からの発想で無い海から見た発想に視点を置いた海洋管理の政策を立て、官・産・学・民による推進体制を構築することが望ましいと考えます。
・ サルベ−ジや海洋工事の分野では水産、漁業の分野と異なり海洋政策面ではなじみが極めて薄く、問題意識が少ない。一方、現場サイドとしては「海洋汚染」等環境劣化の現状は身を持って体験しており、海洋汚染(海水より海底)防止と復元、保全に海洋政策を集中すべく考えます。
・ 従来から、幾度か海洋開発を進展させる波が、訪れたがいつの時代も我国はこの波に乗ることが出来なかったと考える。これは、海洋というフロンティア分野に対して、やはり産官学の共同と、国際的な交流が欠け、一過性の事業になってしまっているからではないだろうか。現在地球フロンティア等で、地球規模の変動解明が実施されている。研究の発展としては、多いに期待する点があるが、長い時代を見据えると、これも最終的には、報告書として纏められ一過性のものになってしまうのではないかという懸念がある。これは、やはり社会に対する還元が無い為ではないだろうか?実際に良い研究、良い検討や調査が行われたとしても、それが実現され、社会から有用であると認められない限り、その発展は無いと考える。フロンティアの研究成果が、毎日のテレビから流れる天気予報のように、海洋予報として流れる。誰もが楽しめる海洋性レジャーを作り上げる。水産資源の保護などの施策結果が、国民と共に実感できるアピールなど、今後の海洋発展には、産官学が一体となり、継続性を考慮した施策の実施が必要になるのではないかと考える。海洋法の策定など、大きな目標を掲げることや、国際的な地位を向上させることも重要と考えるが、国や関係者だけではなく、国民を絡めた形での、継続的に発展出来る施策、システムや仕組み作りの構築を切に望む。
・ 地球環境問題、食糧問題等は1省庁や1国で解決できる問題ではない。問題解明には陸・海・宇宙が一体となった取り組みが必要である。その間題解決のため地球の70%を占め、且つ取り組みが縦割り行政のため遅れている海洋を本来のあるべき姿に戻すには、海洋省的な機関の創設が必要と考える。その下で、国民の支持が得られる国家的海洋プロジュクトを起こし、推進すべきと考える。
・ 1.海洋を理解し、社会生活との連携を統合的に深く理解できる人材を育てる必要がある。
2.海洋に接する機会を日常的な面まで広げて増加する必要がある。
3.海洋における諸産業の育成に力を入れるべきである。
・ わが国は、全方位海域に囲まれているが、まだまだ市民レベルにおける海域に対する問題意識が低いと思われる。そのためには、本アンケートにあるような項目についてもっと提言して行くべきと考えます。
・ 1)かねてより、わが国の海洋政策の不完全さ(不在?)に危機感を持っていた。今回のアンケートは誠に時宜を得た、また内容の充実したものであった。2)最近目にする民間団体の海洋の戦略や提言は、初めに「開発」ありきのもの、なぜ海洋の開発が必要かの哲学、筋がない。開発に関しては、陸上でやれることも山積しているのだから、我田引水的な開発構想は、一般の国民に理解されにくいのではないか。また、相変わらず従来の研究テーマを積み重ねた提言があり、この時代に相応しい、選択と集中という優先順位付けがなされていない。今回のアンケートを通して、国際競争に耐える、100年先を見据えた、海洋戦略を打ち立てて欲しい。
・ 海洋基本法の制度等海洋に関する基本理念の確立は重要。このような調査を通じて関係者の関心を高めることと、世の中に提言を行うことが大切だと思う。一回だけの調査・提言に終えることなく、継続的に行うべきと考えます。
・ かけがえのない国民全体の「うみ」であることを踏まえ、保全・開発・利用を問わず、結局「誰が決定するのか」と「全ての手続きの透明性担保」を如何に合理的に実現化できるかではないだろうか。
・ 海は重力の作用により陸上からの物質が流れ込む所であることからして、海洋環境を考えるともっと広い範囲の規制等も思慮に入れるべきでは。いま一つ、貿易によって日本に持ち込まれる食料品によって日本沿岸は栄養バランスが壊され、逆に輸出国は逆のバランスになることにも配慮されたい。
・ 1.海洋の持った存在意義、人類との関わりが大幅に変化する中で、海洋の位置付けを明確に再定義する必要をこのアンケートを通して改めて感じる。
2.海洋に関する省庁の多さと縦割り行政による政策ロスを感ずる。特に沿岸、港湾で。海を利用する規則を今よりも厳密にする必要(一定の基準によって)を強く感ずる。
3.海洋全般以外にも、海運・水産の実学的な教育のレベルと量の低下が進んでいる。(高校・大学)大学院クラスの海洋全般を極める仕組みも必要だがベースとなる教育の貧困にも光を当てたい。
G
・ 1.海洋の総合的管理とは、もっと広い概念であると思料する。やや発想が小さく、具体的問題に入りすぎている。構想段階から具体的問題に入りすぎると迷路にはまる。2.海洋の「総合管理」と「オーシャン・ガバナンス」は切り離しておかないと、後々混乱が生じる恐れがある。IOIの“ガバナンス”とブラント委員会での“ガバナンス”は意味合いが少し異なる。オーシャン・ガバナンスは海洋管理のための総体ではなかろうか。また、オーシャン・ガバナンスと言う言葉の定義が一般的となっていない段階で使用することは不安がある。
・ 海洋については、環境保護と開発利用という対立図式での捉え方が一般的だったと思われる。「海洋管理」の考えもより深い議論検討が必要と思われる。地球の7割が海洋であることや、わが国は海洋に囲まれていることから、海洋を認識、意識して大切なものであるという考え方を各人が持っていくことが必要である。海洋について考える機会として意義のあるアンケートでした。
・ 海洋政策全般について考える良い機会となりました。行政組織について詳しい知識を有していないため、提案2については適切な回答となっていない恐れがあります。
H
・ 海洋を利用する者或いは、企業は受益者負担を行い、この負担した資金で海洋環境の保全や水産資源の保護、培養を促進することが望ましい。このための海洋管理機構を新設すべきだ。また、水産庁が主体で行っている「全国豊かなる海づくり大会」は水産だけではなく、海事産業全体が参加する「海づくり大会」とすべきである。天皇陛下がご臨席される大会なので全国民、全海事産業のための大会に改めるべきである。
・ 政策大綱の設定は大変複雑で難しい問題であると思います。専門家の方々の色々なご意見があると思いますが、何れにしろ国民が最大の受益者であることが必要であり、また国民の広い理解を得ることが必要かと思います。そこで、国民に理解しやすい理念の一つとして、以下のような点を盛り込むことが出来ないでしょうか。「日本人の全ての資質は日本の自然環境と風土より生じたものであり、それは日本が海に囲まれた島国であると同時に、海からの水と海流による温暖な気候による森の豊かな国であるからである。この点、海洋政策、海洋管理は日本の自然風土を守り、日本人のすばらしい資質を守ることに通じてくるのである。」
・ 地球的にも歴史的にも日本は海洋国家そのものですが、日常生活でそれを意識することが余りにも少ないように思います。海洋への関心を高め、海に親しむ機会を増やすことから取り組むべきだろうと思います。
・ 本アンケートは大変良い企画だと思いますが、今までわが国で何故もっと声高に主張されなかったのでしょう。宇宙政策との比較で、人材・予算・優先順位等問題があるような気がします。また、海洋政策は国家戦略として、国のシンクタンクが調査研究すべきことではないでしょうか。21世紀、わが国は少子高齢化の時代を迎えますが、世界の人口は著増するといわれています。日本が海洋資源の活用、保全でのリーダーシップを取り、世界に貢献すべきではないでしょうか。(新深海発掘研究船は良いとのことです。)