5. International Submarine Engineering Ltd
5.1 企業概要
International Submarine Engineering社は1974年にバンクーバー郊外のPort Coquitlamに設立され、今日に至っている。1975年からは200を越える潜水機と270を越えるマニピュレーターを製作してきた。これらの大部分は有索無人探査機であるが、その内14機はAUVであり、8機は有人探査機である。
現在では年間30台から40台の油圧駆動、電気駆動方式マニピュレーターを製作しており、これらは海洋に限らず、陸上や宇宙などでも広く用いられている。I.S.E.社のROVは海洋科学調査の分野で多く用いられているが、そのほかにもサルベージ、海洋石油開発、防衛、海底ケーブル通信会社などの分野でも広く採用されている。
工場敷地面積は36,000平方フィートであり、様々な製造設備及び試験のための建物が存在する。我々の訪問時はI.S.E.社の設立者であり、現社長でもあるDr. James R. McFarlane氏に対応して頂き、現在製作中の潜水機やマニピュレーターなどの説明を受けた。
5.2 工場内見学
マニピュレーターは有人・無人潜水機の手であり、計測機器の設置やサンプルの回収など海中作業を行なう場合、任務の達成に深く関わる重要な装置である。このため機器自体の信頼性を確保することは言うまでもなく、オペレータがあたかも作業現場にいるような感覚を持てるような視覚、力覚、触覚などを再現できる操作システムが求められる。このため機械工学的、また人間工学的見地からさまざまな検討がなされて、システムが設計されている。
マニピュレーターの操作装置には様々な形式があるが、図17のマニピュレーターの操作装置は指で各可動関節を操作するタイプである。上腕を使って操作する形式に比べて、操縦者の腕の運動量が低減され、長時間操作を行なう場合の負担を軽減することができる。
図16 マニピュレーター
図17 マニピュレーターの操作装置
SARPAL (Search and Rescue Portable Air Launchable)は航空機から投下されるディーゼルエンジン搭載の救命ボートであり海難事故の被災者を効率的に救助する目的で開発された。メインチューブは膨張式であり、救助時に膨らませて使用する。本救命ボートは航空機からの遠隔操縦が可能であり、海象条件が悪く飛行艇が着水できないような場合でも被災者に接近して、救助することができる。
図18 Search and Rescue Portable Air Launchable
図19はCanadian Hydrographic Serviceの半没水型AUV “DOLPHIN”である。主な観測装置としてマルチビーム・エコサウンダーを装備しており、高速、高精度の海底調査が可能である。主発動機としてディーゼルエンジンを搭載しており、水面を貫通する吸気/排気のためのマストが特徴的である。パイプには抵抗軽減や渦放出による振動を低減するための可動式流線形フェアリングが取り付けられている。
図19 半没水型AUV “DOLPHN”
[主要目]
項目 |
DOLPHIN |
全長 |
7.3m |
幅 |
1.0m |
深さ |
3.5m---5.5m |
重量 |
3,300kg |
速力 |
8m/s |
航続距離 |
600km@6m/s |
電波到達距離 |
18km |
位置計測 |
DGPS |
図20はCanadian NavyのAUV “THESEUS”である。このAUVは氷海域下でのケーブル敷設を主目的に1994年に開発された。船尾のパイプからケーブル送り出して海底下に敷設することができる。また北極海での海洋調査支援を目的とする。 主な観測装置としてマルチビーム・エコサウンダーを装備しており、高速、高精度の海底調査が可能である。
図20 Canadian NavyのAUV “THESEUS”
[主要目]
項目 |
THESEUS |
全長 |
11m |
直径 |
1.28m |
重量 |
8,900kg |
潜行深度 |
500m |
速力 |
2m/s |
航続距離 |
500km以上 |
ケーブル長 |
220km |
図21は有人潜水船Piscesである。訪問時は工場の一角に保管され、外装の整備を行うとのことであった。整備が終了した後はアメリカ国内の博物館に展示予定である。
図21 有人潜水船“Pisces”
[主要目]
項目 |
Pisces |
全長 |
6.0m |
幅 |
3.0m |
高さ |
3.65m |
重量 |
11,000Kg |
潜行深度 |
2,000m |
乗員 |
3名 |
ペイロード |
700Kg(乗員を含む) |