日本財団 図書館


ご遺体は最良の師
 小池 彩華
 解剖学実習は、二年生になって初めての医学部らしい実習であったと感じられました。解剖学実習を行うに当たって、解剖追悼ミサに参加したり、先生から「ご遺体は最良の師」であることや、解剖学実習の大切さ、ありがたさを厳しく教えていただきました。
 私は身近に亡くなった人がいなかったので、実習を行うまではご遺体にどのように接して良いのか分からず、恐怖と不安でいっぱいでした。しかし、実際に実習が始まってご遺体に向かい合うと、私たちの勉強のために献体して下さったご遺体に恐怖を覚えるのは申し訳なく思い、恐怖心よりも献体して下さったこのご好意を無駄にせず、色々学ばせていただかなくてはという責任感の方が大きくなりました。
 解剖学実習は、医師になるために必ず通らなければならない通過点であり、これがこれからの勉強の中で大変重要になってくるのだと思いました。また、解剖学実習は私たちだけでは決して行えず、献体をして下さったご遺体と、そのご家族を始め、様々な方々の協力があってこそ行えるのだと感じました。その実習に参加できる私たちはとても感謝すべきであり、それだけ医師になることは責任が大きいことなのだと思います。
 私のグループのご遺体は女の方だったのですが、この方はどのような気持ちで献体をして下さったのか。どのような学生の勉強となるのか分からないにも拘わらず献体して下さったご遺体に恥じないように、一瞬一瞬を大切にし、毎回の実習に一生懸命取り組んできたつもりです。
 私たちはこのご遺体に亡くなってから出会ったわけですが、献体して下さったご遺体は、解剖学の最良の師として、また初めての患者さんとして、私たちの記憶からは決して消えることはなく、医師になってからもずっと私たちの中に残っていると思います。
 これから解剖学実習を行う後輩も「ご遺体は最良の師」であることを常に心にとめて、一瞬一瞬を大切にし、様々な方々の協力があってこそ実習が行えるのだということを考えつつ、実習に取り組んでほしいと思います。
 また、解剖学実習を終えた私たちもこの実習をこれからの勉強に生かして、様々な視点から人の気持ちが理解できる医師になりたいと思いました。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION