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解剖学実習を終えて
 藤原 圭亮
 私は、解剖学実習を受講したこの一年間で、非常に多くの知識を得るとともに、知識以上に大切なものを習得したことが、私自身を一医学生として、また一人の人間として成長させてくれたと思います。
 解剖学実習を行っていく中で、私の心の中に非常に大きな藤や変化がありました。解剖学実習を受講する以前に、尊厳死のあり方やクオリティ・オブ・ライフの考え方といった「生と死」に関するテーマの討論を行ったり、「いい人生っていったい何なのか」と考えるきっかけを映画やドキュメンタリー番組を通して喚起されたりして、「生と死」というものに対して自分自身納得のいく考えを持っていたつもりでしたが、解剖学実習を受講し始めた頃は、今まで曾祖父の葬儀という形でしか死というものに接していなかった私には衝撃的であり、「生と死」というものに対する認識の足りなさを痛感しました。これからの学生生活や臨床の現場に立ってからも日々考えていかなければならないものであり、医学に携わっていく者に対する永遠のテーマだと思います。このように、日常おざなりにされている人間として必要な倫理観を改めて意識し反省できたことは、教科書からは学ぶことのできない大切なものであり、私の今後の人生において大きな財産だと思います。
 また、献体された方々に、このような実習を受講させていただいて、感謝・尊敬の念を抱かないわけにはいきません。死というものと真剣に向き合って、闘っていかなければならない状況になった時、不安感で、献体の決断はとても勇気のいることだと思います。「死」に対して確固たる考えを持っていなければできないことであり、私もそういう状況に立った時に決断を下せるくらい確かな自身の考えを構築できるように、これからの学生生活においても臨床の現場に立った時も、今の気持ちを忘れないで頑張っていこうと思います。








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