X.オンライン裁判外紛争処理(ODR)に関する勧告案
1.インターネットの普及と消責者紛争の増加
1.1 電子商取引の定義
電子商取引(electronic commerceまたはe-commerce)という用語は広く使用されていますが、その定義は必ずしも確定したものではありません。一般に、電子商取引は、コンピュータネットワーク上で行われる商取引と考えられています。これには、EDI, Website、eメール等が含まれるので、インターネット上の電子商取引よりも広い概念です。インターネットの利用者が急増しているので、電子商取引市場は将来急速に拡大するものと思われます。
1.2 インターネットの言語別利用延べ人口
現在、インターネット利用者は世界全体で約2億人と推定されています。Global Internet Statisticsの統計64(2001年9月現在)によると、世界中のインターネットへのアクセス人口は延べで5億1290人です。言語(母国語)別によると、英語2億2040万人(42.9%)、ヨーロッパ系言語(英語を除く)1億6300万人(31.8%)、アジア系言語1億2950万人(25.3%)となっています。2003年には、インターネット人口は延べ8億3000万人で、言語別に見ると、英語2億7000万人(32.5%)、ヨーロッパ系言語2億9000万人(35.0%)、アジア系言語2億7000万人(32.5%)になると推定されています。日本語は、2001年9月の4730万人(9.2%)から、2003年には、7500万人(9.0%)になると推定されています。この統計の言語は、ヨーロッパ系言語(英語を除く)が22ヶ国語、アジア系言語が7ヶ国語です。
1.3 B2Cの浸透率
電子商取引には、企業間取引(B2B)、企業対消費者(B2C)、個人対個人(C2C)の他に、政府機関や地方自治体と企業(G2B)または個人(G2C)の取引があります。この内、企業間電子商取引が金額的に一番大きく、消費者向けの電子商取引は小売市場全体から見るとまだ僅かに過ぎません。米国商務省は、1999年2月、民間調査会社のオンライン取引の売上高に関する調査結果に大きなばらつきがあるので、オンライン消費に関する公式統計調査を開始すると発表しました。それまでの米国の消費者向け電子商取引額は、民間調査会社の発表した各調査の平均値を使用して、1997年には30億ドル、1998年には90億ドルであったと報告しています。米国商務省の消費者向け電子商取引の統計は1999年10-12月期から発表されており、同期の消費者向け電子商取引の金額は約53億ドルで、全米小売販売総額の約0.6%でした。米国の小売電子商取引は、2000年10-12月期の約89億ドルをピークに、2001年1-3月期は約76億ドル、同年4-6月期は約74億ドルと推移していますが、米国の小売販売総額に占める比率はまだ1%前後に止まっています。65
スウェーデン、オランダおよび英国では、消費者向け電子商取引は米国に近い規模ですが、ヨーロッパ全体では、まだ0.2%程度のようです。この中には、インターネットで価格を調査してから、店頭で購入したものは含まれていません。このようにB2C電子商取引の規模がまだ極めて低いという事実は、前記のように、インターネットの利用者の中で電子商取引を行っている者が極めて限られていることを示しています。米国を除いて、他の地域では、インターネット利用者の10%くらいの者がインターネットで購入し、その金額は極めて小額であるということです。66
66 APEC TEL Project EC Best Practice for SME's in the APEC Region Prepared by AOEMA 31 August 2001.