3.危機管理について
上述してきたように、国際物流に係る手続のシステム化は高度に接続・連携してきており、今後も「人にとって便利」な仕組みをシステムが提供するよう改善されていく訳ですが、システムの何処かにトラブルが発生した場合はどうするのか。
「情報を発信する側」も「受信する側」もユーザーとして業務が遅延・停止し、その影響は計り知れないものとなる可能性があります。
大規模な災害が発生した場合の対応と復旧の対策
部分的なトラブルにより、代替手段を用いる場合の運用や関係者への周知
これらへの対応策については、「官」の責任において事前に関係者全体(府・省・地方・港湾等の管理者)で取組んでおく必要があります。
● 関係者全体が情報を開示し、共通な情報をもって、窓口毎に異なった対応となることなく、整合性のある対応をとること。
● システム的にはバックアップ的な資源や、一部のシステムダウンが全体に影響をおよぼさないような対策をとること。
● 一部システムのダウンにより手続がマニュアル(書面)となった場合における対応を関係者間で協議しておくこと。
インターネット上での不正処理対策・自社システムにおける準備等
現行のNACCSでも、その利用申請時にウイルス対策ソフトの導入が義務づけられ、他のネットワークへの接続も規制がされています。(ある意味不便で負担ともなっている訳ですが、それ故のメリットもあった訳です。)
インターネットを利用した接続に対しては、本人確認といった認証のほか、この世界で聞かれる「ウイルス被害」「サーバーへの侵入」といった不正行為に対する堅固なシステム構築(共通基盤技術開発)が必須です。
インターネットに限りませんが、専用端末ではない、オープンなネットワークシステム、ここでは行改との情報交換(申請・受理・許可・承認)となりますが、行政側ではない、民間利用者側でのシステム障害も考えられます。(システムで申請している最中に自身・自社のシステムに障害が起きたら?)利用者側の責任として考慮しておく必要がある訳です。「インターネットはブラウザーがあれば」と安易な気持ちは慎むべきといった意味合いも込めて、利用者に対する当該対策の重要性について、システム運用者側からの判りやすい情報照会・アナウンス・Q&Aと言った啓蒙活動も必要かと考えます。
結語として
政府物流施策に添って、まず、国際物流に係る行改手続は、NACCSをハブシステムとした行政側システムのワンストップ化が関係する「官・民」の現場サイドで具現しつつある。というのが平成13年度末の実情といえます。
次に、この行政手続システムのシングルウィンドウ化、インターネットとの接続が表明され、G7での標準化・簡素化といった要素を取り入れたシステムの開発を進める。としている訳ですから、「グランドデザインを描き全体最適化を考えることが重要」という認識で府省官で調整が成されつつ、意向表明した期限に向けたシステムの開発が進んでいくものと考えます。
次に、諸外国においてもその方法がまちまちな行政システムと民間システムとの連携・接続をどのような形で実現していくか、中小港湾物流企業を多く抱える我が国の国際物流分野を視野に入れた全体的なシステムの構想とその構築がなければ、民間における情報処理に対する無駄な投資は改善されず、施策の目標「コストをふくめて国際的に競争力のある水準の物流市場を構築」は達成されないと考え、新総合物流施策大綱にあります「官民間の情報ネットワークの相互接続等に取り組む」に関する行政サイドの具体的なアクションがどのようになっていくか、注目していく必要があると考えます。
最後に、道路、空港、港湾、貨物集荷場といった物流関連の社会資本等・インフラの整備、運用時間・労使問題等への取り組みが手続のシステム化と並行して計画・実施されています。
「官と民」で「物流手続のシステム化と貨物の円滑な輸送」が、複合的に改善されていくことにより始めて物流施策の目的が達成されて行くものと考え、結語にかえさせて頂きます。
(物流関連の社会的なインフラ整備については、あまり触れることが出来ませんでしたが参考物件欄に、関連する施策の一部ですがURLを記載しました。)
以上
(飯田 隆夫)
参考物件